下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

マレビトの会 / Marebito フェスティバル/トーキョー17『福島を上演する』@池袋シアターグリーンBASETHETER

マレビトの会 / Marebito フェスティバル/トーキョー17『福島を上演する』@池袋シアターグリーンBASETHETER

過ぎ去っていく数々の「出来事」から、福島の「いま」を垣間見る

複数の作家が福島に取材し書いた戯曲を、いかに現在の「出来事」として劇場に立ち上げるのか。ごくシンプルな空間で、俳優の身体のみを使い、各エピソードにつき一度きりの上演に挑戦したマレビトの会『福島を上演する』が、昨年に引き続き、フェスティバル/トーキョーに登場する。前身となった『長崎を上演する』(2013−16) と同様、歴史に回収されるのではない、日常の時間に潜むドラマを採集、舞台化する本プロジェクト。2年目となる今回は、これまで福島市内に限定していた取材範囲を県内全域まで拡大、場所や時間、登場人物はもちろん、戯曲のスタイルまでさまざまに異なる戯曲の連続上演を通じ、より多面的な福島の姿を浮かび上がらせる。全12回にわたる公演に登場するエピソードの一つひとつは、とらえどころのない、過ぎ去っていく時間の断片にも思えるだろう。だが、眼前に現れては消えるその風景の連続には、福島の「いま」が、確かに映し込まれているはずだ。

チラシはこちらから。

◇本作品は1公演につき、複数の書き手(アイダミツル、神谷圭介、草野なつか、島崇、高橋知由、松田正隆、三宅一平、山田咲)による複数の戯曲で構成されています。
◇12公演全体で1つの作品というコンセプトのもと、各回、上演される戯曲・構成が異なります。
◇日本語上演
◇『福島を上演する』は『長崎を上演する』(13〜16)から続く長期プロジェクトです。上演戯曲・構成および関連インタビュー等、ご観劇の参考にご覧ください。(『長崎を上演する』アーカイブ

○上演戯曲
10月7日(土)16:00
国宝白水阿弥陀堂(山田 咲)
パークウィンズ(草野なつか)

10月7日(土)19:30
握手会にて(島 崇)
石炭・化石館 ほるる(松田正隆
老人の話(三宅一平)

10月8日(日)14:00
ヒミツホテル(アイダミツル)
国道6号線(草野なつか)

10月8日(日)17:30
エブリデイ・エブリナイト(松田正隆
遺骨収集(三宅一平)

10月9日(月祝)14:00
衛星、船着場、または新しい軌跡(高橋知由)
回転寿司にて(神谷圭介
こずえと茂吉(三宅一平)

10月9日(月祝)17:30
トミー理髪店(アイダミツル)
涙の木(三宅一平)
アクアマリンふくしまサンゴ礁の海」にて(松田正隆
スポーツショップ(神谷圭介

10月12日(木)19:30
上演と陰謀(松田正隆
革命(神谷圭介

10月13日(金)19:30
あなたはわたしの劇場(松田正隆
富岡川 子安橋より(島 崇)

10月14日(土)16:00
イオンシネマのベンチにて(松田正隆
メタスタ(アイダミツル)

10月14日(土)19:30
帰れない2n人(高橋知由)
磐越東線、いわき行き(松田正隆

10月15日(日)14:00
番外編 大阪の福島にて(島 崇)
点字図書館にて(神谷圭介
塩屋埼灯台(山田 咲)

10月15日(日)17:30
パン屋の跡地にて(高橋知由)
守山さんの受難(草野なつか)
北白河宮家和子さま、道の駅「よつくら港」来訪のこと(松田正隆

演目順は変更になる場合があります。

○日時:
10/7(土) 16:00 / 19:30
10/8(日) 14:00 / 17:30★(英語字幕あり)
10/9(月・祝) 14:00 / 17:30
10/10(火) 休演日
10/11(水) 休演日
10/12(木) 19:30
10/13(金) 19:30 ★
10/14(土) 16:00 / 19:30★
10/15(日) 14:00 / 17:30

受付開始は開演60分前、開場は15分前。
上演時間:約60〜80分(演目ごとに異なります)

10/8(日)17:30の回のみ、英語字幕が入ります。あらかじめご了承ください。

本公演は演出の都合上、開演時間を過ぎてからのご入場ができない場合がございます。お早めのご来場をお願いいたします。

★=終演後、ポスト・パフォーマンストークあり
10/8(日)17:30|松田正隆×マレビトの会プロジェクトメンバー
10/13(金)19:30|松田正隆×伊藤キム(フィジカルシアターカンパニーGERO主宰・振付家・ダンサー)
【NEWトーク決定!!】
10/14(土)19:30|松田正隆×諏訪敦彦(映画監督)

○会場:シアターグリーン BASE THEATER(豊島区南池袋2-20-4) アクセス:
JR他「池袋駅」地下通路39番出口より徒歩2分、東口より徒歩6分
東京メトロ有楽町線東池袋駅」より徒歩5分
都電荒川線雑司ヶ谷駅」より徒歩7分

○チケット(整理番号付き自由席) 8月27日(日)~発売
取り扱い:F/Tチケットセンター
一般前売り   ¥3,000(当日 +¥500)
先行割引* ¥2,100
5演目セット** ¥2,400
3演目セット** ¥2,600
1日セット券*** ¥5,000(10/7、8、9、14、15のみ)
学生      ¥2,000 ※当日券共通。当日受付で要学生証提示。
高校生以下   ¥1,000 ※当日券共通。当日受付で要学生証または年齢確認可能な証明書の提示。

先行割引*=8月23日(水)~26日(土)の期間中、お得な早割券を発売します。枚数限定。
5演目セット券・3演目セット券**=F/T17の他の演目と組み合わせてご購入いただけるチケットです。『福島を上演する』は12公演中1公演のみ選択可能です。
1日セット券***=同日16:00の回と19:30の回(7日、14日)、14:00の回と17:30の回のセット券(8日、9日、15日)となります。F/Tチケットセンターで前売のみ取り扱い。

「握手会にて」は福島のローカルアイドルの握手会付きライブイベントでの出来事のスケッチである。テキストはどうやら実在の地域アイドルの取材をもとに書き下ろしたようだが、「はにわっこ」というはにわとアイドルの融合をテーマにしたアイドルというのが笑える。3人グループのアイドルのようなのだが、そのうちの1人がしおりんというのはどこかのアイドルを連想せざるをえなかったが、それが元キャバ嬢でもうかるからとアイドルに勧誘されたがやっていくのがカスカスでやめようとしているという設定ではちょっと笑いにくい。
 マレビトの会の場合、発話の調子を意図的に平板にして演じる俳優あるいは役柄の感情が見えにくいほど抑制されたものになっているのだが、その演技でライブのコールまで集団演技でやると本当にやる気のない人たちにも見えて思わず笑ってしまった。

東京デスロック「ハッピーな日々」@横浜STSPOT

東京デスロック「ハッピーな日々」@横浜STSPOT

作:サミュエル・ベケット 翻訳:長島 確
演出:多田淳之介
出演:佐山和泉 夏目慎也

腰まで土に埋まった女性、後半ではその身体は完全に埋まり首から上だけが見えている。それにもかまわず「ハッピーな日になりそう」と喋り続ける女性。
彼女の置かれた状況と観客の置かれている状況を重ね、私たちの日々のハッピー、そして幸せの行く末を描く。

ー新作。サミュエル・ベケットによる名作不条理劇『Happy Days』を長島確氏による新訳にて上演。
*演出の都合上、一部観劇状態を指定させていただく場合があります。


サミュエル・ベケットの「Happy Days」は横浜ランドマークタワーピーター・ブルック演出による上演を観劇した記憶がある*1のだが、日本人演出家の日本人キャストによる上演を見るのは初めてである。
多田淳之介の演出は俳優の演技という面では東京デスロックの中ではオーソドックスなもので俳優もよくそれに応えて好演したのではないかと思った。ベケットの場合は著作権の管理が厳格でテキストの一部を改変したり、カットしたりすることができないみたいで、最近の上演ではこまばアゴラ劇場での飴屋法水演出の「を待ちながら」(作:山下澄人)がベケットを参照項としていることは表題から明らかなのにもかかわらずベケットとは無関係なオリジナルの別作品の体裁になっているがそれはこのためもあるかもしれない。
 一方、多田版「Happy Days」(「ハッピーな日々」)はこの上演をきっかけに長島確が翻訳した新訳をテクストとしてはいるが、多田演出は多田がシェイクスピアチェーホフに対して行ったようにテキスト自体には手をつけるということはしていない。
 普段は「再生」を典型として音楽を多用するタイプの演出家である多田だが、原戯曲が劇中音楽を許していないために、今回は芝居の始まる前に曲(曲名は忘れたが富士山についての曲)を流す以外はそれもいっさい使わずに原作の指定を順守している*2
 そのため、演出家としての解釈は「ハッピーな日々」で俳優の衣装も含めた舞台美術に託された。目立つのは舞台の背景に大きく描かれた富士山の絵。これと舞台上を埋め尽くした黒いポリ袋で舞台装置。これらは3・11後の日本の姿を強く象徴するようなものとなっている。
 登場人物2人のうち1人が「腰まで土に埋まった女性」というのが原戯曲の指定*3だが、今回は女は舞台を埋め尽くすように積み重ねられた黒いポリ袋に女性(佐山和泉)は腰まで埋まっている。服装としては椎名林檎のようなと多田は名前を挙げていた。アフタートークに登場した山崎健太はきゃりーぱみゅぱみゅの名前を挙げた。いずれにせよいかにも現代日本的な奇抜なファッション。それに対し、男は前半は黒いポリ袋の山の向こう側にいるため、裸体に近い上半身の一部だけが見える程度なのだが、後半に山を乗り越えて登場する男は星条旗のあしらわれた上着とシルクハットでこれは明らかにアメリカの象徴なのだ。
 こうなってくると、人間存在の普遍的なあり方のメタファー的表現とれそうなベケットの「Happy Days」は「ハッピーだわ」などと能天気な戯言を繰り返していると気がついた時には原発の汚泥なのか産業廃棄物なのかは分からないが、黒いポリ袋の山の中に埋まってしまっていて、手の施しようがない状態。「それが今の日本の現状なのだ」と言いたげにも見えてくる。

登場人物
ウィニー:主人公。なぜか焼け野原のど真ん中で、腰まですっぽりと地中に埋まった女性。第2幕ではとうとう喉元まで埋没する
ウィリー:ウィニーの夫。


第1幕
抜けるような青空の下、なぜか腰まで地中に埋まった女性が1人。

彼女…ウィニーは目覚ましの音で目を覚まし、歯を磨いてお祈りを唱えて…と、こんな状況下で「日常的な動作」を繰り広げていく。

丘の向こうには彼女の夫、ウィリー。禿げ上がった後頭部を見せるこの男はほとんど声を発せず、また振り返る事もなくただ淡々と新聞を読んだりする。

ウィニーはただひたすらしゃべりつづける。己の狂気から逃れるために…。
第2幕
ウィニーはとうとう喉元まで地中に埋まってしまった。第1幕で彼女の「生活」を支えていた日用品の数々も、手が出ない以上使うことが出来ず、ウィニーはひたすらしゃべりつづける。

やがて、丘の向こうから、こんな状況には不釣合いなほどきっちりと正装をしたウィリーが登場。彼に名前を呼んでもらい、ウィニーは呟く。

*1:http://physicaltheatre.jp/jp/files/paper04.pdf

*2:最後に「メリーウィドウ」が流れるが、これは戯曲の指定通りという。

*3:横浜ランドマークタワーピーター・ブルック演出の上演もウィニーを演じる女優(ナターシャ・パリー)は腰まで土に埋まっていた。

『経済成長なき幸福国家論ー下り坂ニッポンの生き方』毎日新聞出版刊@平田オリザ・藻谷浩介 刊行記念スペシャルトーク

『経済成長なき幸福国家論ー下り坂ニッポンの生き方』毎日新聞出版刊@平田オリザ・藻谷浩介 刊行記念スペシャトーク

登壇:平田オリザ・藻谷浩介


低成長ニッポンの「国家論」と、下山の時代を生きるための「幸福論」を、平田オリザ、藻谷浩介両氏が徹底的に語り尽くした対談本の刊行を記念し、スペシャトークを開催。

経済成長は人口増加がもたらすもの。イノベーションが経済成長に役立つことはありえないという筆者らの論点はすべて納得するということはしかねるものの、一定程度以上の説得力を感じた。
 ただ、この日のトークはほとんどすでにこの著書に出ている論点を巡ってのもので、著書を読む前にトークを聞いたので面白かったが、後で著書を読んでみると著書にすでに書いていたことばかりじゃないのと思ってしまったことも確かだ。
ただ、この著書の編集者でもある司会者の進行には不満が残った。このタイミングで平田オリザに聞くことがあるとしたらまず何より「自らもその発足の一翼を担った民主党(民進党)の分裂をどう思うか」ということだったはず。そして平田自らその話を始めた途端に「質問の時間もあるから」とそれを遮った司会ぶりは何なのだろう。
主催者は毎日新聞だから「政局のことは話させるな」とかの指図はありそうにないのだが、そういう勘繰りがしたくなる発言の遮り方だった。
さらに質問時間になってからは立て続けに福島関連の質問ばかりがされて、何となく政局のような話を突っ込みにくい雰囲気のままトークショーは終わった。トーク自体は面白かっただけになぜあそこで平田の発言を遮りながら、質問の時間に遮った発言を再開するように促さなかったのか、釈然としなかったのだ。それにしてもこのタイミングでトークの客が政局の話をまったく質問しないのにもびっくりした。ここに聴きにきている人々は普通は政治意識が高そうなのものだが、そういう人たちが立憲民主党にも希望の党にもここまで何の興味もないということが今の現実なのかもなとも思った。そうはなって欲しくないけれどこれなら衆院選自民党の圧勝かもしれないと思ってさえしまったのである。

ダンス×アート 源流を探る「ダムタイプと音楽 山中透編」セミネールin東京(再掲)

ダンス×アート 源流を探る「ダムタイプと音楽 山中透編」セミネールin東京


今月16日に開催します。開催日が迫ってきました。早めに予約お願いします。

コーディネーター・中西理(演劇舞踊評論)

ゲスト 山中透
(冒頭20分ミニライブ予定)

日時

2017年10月16日(月)
p.m.7:30~

料金

予約 ¥2000 当日 ¥2500
(+1drinkオーダー)


10.16 MON 19:30
オープンはスタートの30分前になります。
[予約優先]  狭いスペースなので、出来るだけ予約をお願い致します。当日飛び込みも満席でなければ可能ですが、+500円となります。なお、満席の場合お断りすることもあります。



セミネールin東京「ダンス×アート 源流を探る」第1弾として「ダムタイプと音楽 山中透編」を開催します。プロジェクターによる舞台映像を見ながらダムタイプの音楽担当だった山中透氏が自らダムタイプ作品の舞台裏を語ります。2010年・2011年の2回にわたり大阪心斎橋で行い非常に好評であったレクチャーの東京版をリニューアルして開催致します。どうぞご参加ください。


_エイズで亡くなった古橋悌二氏の盟友として1980~90年代にダムタイプの音楽監督を務め、代表作といえる「S/N」「PH」などに楽曲を提供した山中透氏。彼をゲストに迎え、プロジェクターによる舞台映像を見ながらダムタイプ作品の舞台裏を語ってもらう予定です。残された映像を見るとクールでハイセンスな未来派パフォーマンスと見えたダムタイプですが、舞台裏ではショー・マスト・ゴーオンさながらのもうひとつの熱い闘いも進行したそうです。当時最先端のニューヨークのクラブカルチャーに触発されて、ライブ演奏していたのに舞台を見た人からはあまりそれが正当には評価されなかったという悩みもかかえていたそうです。今だから明かせる秘話が続々、こうご期待。山中氏からはダムタイプ退団後の仕事の紹介(オンケンセンとのコラボなど)もしていだける予定です。
 
 2008年から2013年まで東心斎橋のBAR&ギャラリーで開催。レクチャー(解説)と大画面のDVD映像で演劇やダンスを楽しんでもらおうという連続レクチャーがセミネールでした。2013年4月に東京に移住して以来中断していましたが、ダムタイプの音楽監督を担当していた山中透さんの協力を得て復活させることにしました。

 コンテンポラリーダンスというジャンルが一般化してから30年近い歳月がたちましたが、舞台芸術の世界に新しい風を吹かせたコンテンポラリーダンスも最近は当初の勢いを失いどこか閉塞感がただようような状況があることも確かなのです。そこで一度原点に返って、新鮮な驚きで私たちを驚かせたコンテンポラリーダンスとはいったい何なのかというのをもう一度原点に返ってじっくりと考えてみたいと思います。
 セミネールではこれまで私が講師を務めてきましたがこの新シリーズでは、私自身も生徒の1人として毎回、テーマを決めたうえでゲストを呼び話を聞いたり、レクチャーしてもらうことを通じて、「コンテンポラリーダンスとは何か」について一緒に考えていくことにしたいと思います。

【予約・お問い合わせ】
●メールsimokita123@gmail.com (中西)まで お名前 人数 お客様のE-MAIL お客様のTEL お客様の住所をご記入のうえ、 上記アドレスまでお申し込み下さい。ツイッター(@simokitazawa)での予約も受け付けます。
●(電話での予約・問い合わせ)090-1020-8504 中西まで。

東京デスロック「再生」@横浜STSPOT

東京デスロック「再生」@横浜STSPOT

作・演出:多田淳之介
出演:夏目慎也 間野律子 伊東歌織 李そじん 原田つむぎ 松�啗義邦 海津 忠(青年団

30分の物語×3回、演劇上演の常識を覆した問題作。繰り返す物語、繰り返す身体により、繰り返せない時間、繰り返せない生命を描く。
2011年には『再/生』として完全再構成されたが、今回は初演バージョンを元に2017年版としてリメイク。
生きること、そして死ぬこと、その中で紡がれる幸せを描く。

ー2006年初演。2011年『再/生』ツアーにて現地同時上演作品として、多田淳之介+フランケンズ版(横浜)、KAIKA 劇団 会華*開可版(京都)、渡辺源四郎商店版(青森)を国内上演、第12言語演劇スタジオとの共作で日韓版をソウルにて上演。2015年には快快(FAIFAI)が岩井秀人氏(ハイバイ)演出にて上演。

 東京デスロックは「ARE YOU HAPPY ???〜幸せ占う3本立て〜」と題して2006年に上演した「3人いる!」「再生」の再演とベケット「幸せの日々」の新訳版上演の3本立て公演を行った。2010年代になり台頭してきた現代演劇の新しい流れをポストゼロ年代演劇と名付けているが、平田オリザらの築いた現代口語演劇の流れ(ゼロ年代演劇)を切断し、新たな流れを作りだしたのがチェルフィッチュ岡田利規)「三月の5日間」(2004年)、そして前者ほどセンセーショナルなものではなかったがこうした流れをより確実にしたのが東京デスロック(多田淳之介)「3人いる!」「再生」だったのではないかと考えている。
「再生」は表題通りに同じストーリーが舞台上で3回繰り返される。この「再生」ではかろうじて物語の設定として、初演当時話題になっていたネットによる集団自殺という題材があって、いろんなところから集まってきた人々が大量の薬物を摂取し、鍋を食べて、踊り狂った挙句に次々と倒れていってしまう。ところがこの舞台で重要なのはそういう表面上の筋立てだけではなく、かなり激しい動きをともなうそれが3度繰り返させることで、それが繰り返されるうちに俳優の身体そのものが疲弊してきて、それを舞台上で生のものとして見せることで、舞台上での「死」と「疲弊」が二重写しになってくるという仕掛けがある。
simokitazawa.hatenablog.com
d.hatena.ne.jp

六本木アートナイト2017 黒田育世・北村明子

六本木アートナイト2017

アニッシュ・カプーア/磯崎新ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ 2017 in 東京ミッドタウン

黒田育世「IKUYO KURODA/BATIK in ART NIGHT」
街なかパフォーマンス


9/30(土)23:00〜23:30

六本木ヒルズアリーナ

無料

国内外で精力的に活動し、高い評価を得ている振付家・ダンサーの黒田育世。多様化するコンテンポラリーダンスの表現の中で、敢えてバレエのテクニックを基礎に「踊ること」にこだわった活動を行っている彼女が、自身の主宰するダンスカンパニーBATIKと共にアートナイトに初参戦。 六本木ヒルズアリーナで、他では観ることのできないスペシャルなパフォーマンスを行います。


北村明子・兼古昭彦「跑(だく)ーCross Transit からのスピンアウト企画!ー」
街なかパフォーマンス©兼古昭彦

10/1(日)0:00〜0:20

六本木ヒルズアリーナ

無料

「記憶」「廃墟」「身体」をキーワードに、その土地その土地の歴史的な流れと“いま”を往来するフィールドワークの旅から生まれた国際共同制作ダンス企画Cross Transit からのスピンアウト作品。形に残らない身体表現や音がいかに記憶と関われるのか、アジアの多様な文化を混ぜ合わせ、佐渡でのレジデンスを経て、未来のアジアの身体イメージを深めます。
ダンサー:清家悠圭・川合ロン・西山友貴・加賀田フェレナ・北村明子 ビジュアル制作:兼古昭彦 音楽:横山裕章(agehasprings)

<SCOOL パフォーマンス・シリーズ2017 Vol.4>梅田哲也「COMPOSITE: VARIATIONS(の素) / SCOOL / 5人」

<SCOOL パフォーマンス・シリーズ2017 Vol.4>梅田哲也「COMPOSITE: VARIATIONS(の素) / SCOOL / 5人」

出演

梅田哲也
捩子ぴじん
船川翔司
會田洋平
mmm

日程

9/28(木)開場19:30/開演20:00
9/29(金)開場19:30/開演20:00

料金

予約 2500円
(+1ドリンクオーダー)
*当日券は+500円


9.28 THU 20:00
9.29 FRI 20:00



4月に京都のライブハウス「外」で上演された「COMPOSITE: VARIATIONS(の元) / 外 / 4人」のアイデアを下敷きに、5月におこなわれたベルギーのブリュッセルにおける公演「COMPOSITE: VARIATIONS」/参加者40名の半屋外パフォーマンス を脳内でバラバラに解体、その40人分の声と会場のスケールを無理矢理、ぎゅ、と濃縮してから、SCOOLで還元してみようとする音楽。共演は5月の本編にも参加したダンサーの捩子ぴじん、先祖が海賊の船川翔司に加えて、東京からcore of bellsの會田洋平とmmm。

美術家、梅田哲也のオブジェ的なアートと出演者によるボイスパフォーマンスの組み合わせ。オブジェではアートパフォーマンスとしてのコンセプトがあるようなのだが、この日のパフォーマンスを見ているだけではどういうことなのかというのはよく分からない。途中で「さすせそ」などとよく意味の分からない言葉を捩子ぴじんが口ずさんでいるのだけれど、「し(死)」を抜かしているのではないかとの指摘がネット上にあり、「そうなのかも」と思ったけれどそれが正しい解釈なのかどうかも判然とはしない。
 最後にゆで玉子(?)を床に立て続けようとしているのには何か象徴的な意味がありそうなのだが、はっきりと分からないのはもどかしい感じがある。

有安杏果「色えんぴつ」のMV公開

有安杏果「色えんぴつ」のMV公開

有安杏果がソロコン「ココロノセンリツvol.1」で披露した新曲「色えんぴつ」のMVが公開された。すでにこのサイトで報じた通りに曲中アニメ映像の作家が外山光男。新アルバムのMVとしても採用される。


珈琲の晩 [DVD]

珈琲の晩 [DVD]

映画『散歩する侵略者』@横浜ブルク13

映画『散歩する侵略者』@横浜ブルク13

監督:黒沢清
出演:長澤まさみ松田龍平長谷川博己前田敦子高杉真宙恒松祐里満島真之介東出昌大小泉今日子ほか
原作:前川知大散歩する侵略者
配給:松竹 日活
©2017『散歩する侵略者』製作委員会

 イキウメの前川知大の代表作「散歩する侵略者」を原作に黒沢清が映画化した侵略SF映画である。侵略SFと書いたが、原案となっている舞台版「散歩する侵略者*1
はもう少し作品の輪郭について意図的にあいまいさを残した舞台で、以前観劇した時に鴻上尚史の「トランス」と似ていると書いたのは「トランス」において何が精神疾患の人物の妄想で、何が真実なのかが二転三転するように、舞台版「散歩する侵略者」でも「概念を奪う侵略者=宇宙人」が本当に実在するのか、登場人物らによる想像上の存在にすぎないかが、曖昧な描き方になっていて多様な解釈が可能なものだった。
 黒沢版では原案のこういう微妙な部分はほとんどなくなっていて、その分アクションやスプラッタ風味が増えてストレートに宇宙人侵略SFとして見られるようになっている。途中で奇妙な精神疾患が多発し、それを引き起こすウィルスの存在が疑われ、大勢の人々がおかしくなってパニックになる描写もあり、それが広域に起こるということと3体(3人)の宇宙人がいわば先遣隊として地球に送られて、情報収集の課程で「概念を奪う」という行為を行うことで、場合によっては相手の精神を廃人に近い状態へと毀損してしまうということの間には後者が原因で前者が起こることについて論理的には説明できないことが数多く残るなど整合性に疑問が残る部分も少なくない。
とはいえ、恒松祐里演じる若い女性に寄生(?)した宇宙人が自分たちに敵対する人間を次々と冷酷に虐殺していくことなどの描写において映画版では宇宙人の存在自体はもはや疑いようがない。