下北沢通信

中西理の下北沢通信

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マレビトの会「血の婚礼」書き直し

  「血の婚礼」のあらすじは以下のようなものだ。婚礼の日に花嫁がかつての恋人と逃げ出す。花嫁を連れ去った男は花婿の父親と兄を殺した一族の人間だった。やがて逃げ道もなく、後戻りもできない二人の先には、運命の死が待ち受ける……。
 絵に描いたような悲劇といってもいいが、「登場人物たちの行動の根拠に得体の知れない土着性があり、そこに惹きつけられた」と松田は語る。さらに「その得体の知れなさは、遠く離れた日本に住む私にも理解でき、ある意味とても共感できる」ともいう。「私の生まれ育った集落には、その土地に染みついてとれない血縁によって人間の運命が定められているということを今でも信じている人々がたくさんいるからかもしれない」とこれまで彼が繰り返し描き出してきた長崎の島における閉ざされた共同体の濃密な血縁が引き起こす悲劇という主題と共鳴しあう要素を見出したことが「血の婚礼」を選んだ理由だった。また前衛的演出をほどこしても、戯曲の持つ力が雲散霧消はしないシンプルで力強いテキストが演出家として必要であり「『血の婚礼』にはそれがあった」とも松田は強調した。