下北沢通信

中西理の下北沢通信

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フランス03のダンス2本

 東京に行きフランス03のダンス2本(「ラ・フォンテーヌのおはなし」マギー・マラン「拍手は食べられない」)を観劇。
 ドミニク・エルヴュ、ムラッド・メルズゥキ、ドミニク・ルボー『ラ・フォンテーヌのおはなし〜ダンスで楽しむおとぎ話』(製作/ラ・プティット・ファブリック)をシアタートラムで見る。
「カラスとキツネ」 振付:ドミニク・エルヴュ
「都会のネズミと田舎のネズミ」 振付:ドミニク・ルボー
「樫の木と葦」 振付:ムラッド・メルズゥキ
 誰もがよく知る、ラ・フォンテーヌの「寓話」からフランスで活躍中の3人の振付家が1話ずつを選び、バラエティーに富んだ作品に振り付けるというプログラム。最初の「カラスとキツネ」が映像も交えて子供番組風に展開するほかは原作の説明をされればそれもそうかなと分かる程度。ダンサーのレベルは
けっこう高く、こういう子供向けのプログラムとしては会場の子供たちも熱心に見ていて飽きている様子もなかったし、なかなか良質。ただ、コンテンポラリーダンス=アートとして鑑賞に堪えうるものかと言うと振付自体は現代風なものだということもあり微妙なところもある。最後の「樫の木と葦」は明らかにイポップ(HIP HOP)のテクニックが使われているが、そのほかの作品にも部分的にストリートダンス系の動きが取り入れられていて、フランスでは最近の流行を超えてここまでそういう振付が一般的になっているのかなと思わされた。
 一方、マギー・マラン「拍手は食べられない」は舞台の空間が短冊状の細長いものを周囲に囲んで舞台空間を区切っているやりかたがローザス「レイン」を思い起こさせながら、ダンスにローザスほどに魅力が感じられないのがちょっとつらいところ。ダンスというより、社会的なメッセージをパフォーマーの関係性だけで見せるものに終始していまい、その割に動きにも関係の提示にもはっとさせるようなアイデアに欠けている印象。フランスのコンテンポラリーダンスは最近不調との話は複数の筋から聞いているのだけれど、デュクフレの新作は面白かったけれど、あれは日本側の参加者の刺激があってのことでもあるし、フランス・ヌーベルダンス界ではもはや大家といってもいいマランの新作がこの程度ならばフランス不調との先の評判はあながち嘘でもないかもしれないとの感を強くした。