砂連尾理+寺田みさこ「loves me,or loves me not」(シアタートラム)を観劇。
伊丹での公演も悪い出来ではなかったのだが、今回は特に後半部分が格段の進歩。粗削りだが勢いは感じるというような舞台が多い、日本のコンテンポラリーダンスのなかでまるで、彫刻に鑿を一刀づつ入れながら、造形を完成していくような辛抱強い作業が続けられるのが砂連尾理+寺田みさこのデュオの世界ではあるのだが、ようやく最後の一のみを入れ終わり、ここで完成した姿を見ることができた。そう思わせるほど、完成度の高さを感じさせる舞台であった。
「ダンスデュオといえば大抵の場合はコンタクト(接触)やユニゾンの連続で二人のダンサーの関係性を見せていくのが定番だが、(中略)舞台上に離れて互いに別のことをやっている。それなのに作品に散漫な印象がなく、舞台全体としてこのユニットならではの微妙な調和を保ち続けているところがこのデュオならではの特徴。これは簡単に見えて至難の業でそれぞれの個性を生かしながらも、動きのディティールに徹底的にこだわり、自分たちだけの動きを突き詰めていく作業を通じて、ほかのダンスにはないオリジナリティーの刻印を獲得したからこそできるものなのである」と前作「男時女時」のレビューに書いたのだが、今回の「loves me,or loves me not」はそうした方向性をさらに極限近くまで突き詰めていったところで、生まれてきた舞台ではないかと思った。
この作品では冒頭の部分で寺田みさこが両方の足の指に挟んで踊るバービー人形をはじめ、装置として床にL字状に敷き詰められた赤い砂のように見えるもの(ゴムを細かく砕いてチップ状にしたものらしい)などいくつかの「モノ」が舞台上に登場して、重要な役割を果たす。(続く)