麻耶雄嵩「神様ゲーム」(講談社)を読了。
今年の初めぐらいから読みたいと思って探していたのだが、なかなか書店でみつからなくて、そのままになっていた麻耶雄嵩「神様ゲーム」を梅田の紀伊国屋書店で見つけ、さっそく購入。読んでみた。どうも、この本評判が賛否両論入り乱れていて、どういうことよと思っていたのだが、こういうことだったのね(笑い)。
賛否両論というか、否の方には子供向けの読み物としては不適切ということが一方にあるわけだけれど、これは少年推理ものの枠組みを確信犯として利用しているだけで、全然そんなものじゃないでしょう。ただ、そういう枠組みをうまく利用して、こんな物語をでっち上げた麻耶雄嵩はやはり才人だと思う。この作品内で描かれたのは小学生たちの世界ではあるんだけれど、もちろん、それは形式的に範をとったと思われる江戸川乱歩の少年探偵シリーズのような純朴なものではなくて、ゴールディングの「蝿の王」がヴェルヌの「十五少年漂流記」と違うぐらいに両者の間には違いがある。もっとも、主人公の少年たちが探ろうとしている連続猫惨殺事件が他人事じゃないほど、最近の現実の事件が陰惨さを深めていることを考えれば舞城王太郎や阿部和重じゃないけれど、そういう陰惨な現実を反映したこういう作品が出てくるのは必然ともいえるかもしれない。
もっとも、この「神様ゲーム」はいかに現実の一部を反映していようと、そういうことはあくまでモチーフとして利用しただけで、あくまでミステリ小説である。ただ、そこに「神様」という通常のミステリとは相容れない存在を入り込ませて、いわゆる本格ミステリの構造を確信犯として破綻させてみせたところが、麻耶雄嵩の麻耶雄嵩たるべきところであろう。