下北沢通信

中西理の下北沢通信

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「吉原治良賞記念アート・プロジェクト2008」大賞にcontact Gonzo*2

 大阪府が主催している「吉原治良賞記念アート・プロジェクト2008」大賞にcontact Gonzoが選ばれたようだ。昨年12月28日付で関連ホームページで告知があったようなのでここにその内容を転載しておく。

吉原治良賞記念アート・プロジェクト2008」は、これまでの[studio]での活動をもとに作成された、5組のアーティストからの「計画書」により、2007年11月末に行われた厳正な「第二次選考」の末、2008年度に最終的な発表を行うアーティストにcontact Gonzoが選ばれました。

吉原治良賞記念アート・プロジェクト2008」大賞(最終プロジェクトアーティスト):

contact Gonzo

最終プロジェクト名:

「shelters ─project MINIMA MORALIA site 001」(仮題)

この最終プロジェクトは、同じく選考されたアート・コーディネーター1名とともに、2008年度の1年間をかけて、多様な展開を図っていきます。
「アート・コーディネーター第2次選考」の結果ならびに最終プロジェクトの詳細などは、確定しだい当ホームページなどで随時発表いたします。「第2次選考」の結果ならびに詳細は、確定しだい当ホームページなどで発表いた します。

contact Gonzoについては一昨年の10月に初めてこのサイトでも取り上げて以降*1折に触れて取り上げてはきた*2のだが、パフォーマンスとしても昨年PAMOアワードを受賞。今年には受賞公演が予定されているのに加えて、今度は現代美術の企画である「吉原治良賞記念アート・プロジェクト」でもこの分野ですでにそれなりの実績のあるパラモデルなどを差し置いて最終プロジェクトアーティストに選ばれた。これはこの企画が「具体美術協会」の創設者である吉原治良を記念する賞であり、アートの一環として村上三郎の「紙破り」などのパフォーマンスなども行われた「具体」を顕彰する企画としてはcontact Gonzoはうってつけだったと思わなくもないから、そのせいかなと思うけれども、そうだとしてもこれはちょっとした快挙だとは思う。



ちなみにこれが「吉原治良賞記念アート・プロジェクト」で行われたcontact Gonzoの一例である。上が大阪府現代美術センターでの展覧会でのもの、下はstudioでの収録である。contact Gonzoは今のところ美術の分野とコンテンポラリーダンスの2つのフィールドで活動を展開しているのだが、なんともいえない「ぬえ」的なところがその特徴であり、面白さであるという風にいえるかもしれない。そこのところが同様に美術とダンスの境界線上をターゲットにしていてもKATHYとは違うところだ。KATHYの場合、コンセプトは現代美術的、しかし最終的なアウトプットとしてのパフォーマンスはまあダンスの方から見たら、ちゃんとしたダンスなのだし、ちゃんとエンターテインメントとしての要素も持って製作されている。それゆえ、どちらのフィールドにおいてもすわりがよいし、受け入れられやすい。
 しかし、contact Gonzoはどうもまるで逆。現代美術のフィールドから見たら、「行為性」ということになるのだとは思うが、まず身体的なものがありきだということが強くて、KATHYなんかと比べると表現の枠組みが分かりにくい点があるように思われた。一方、ダンスの方から見ると例えば昨年末に見た「HARAJUKU PERFORMANCE +(PLUS)」では良くも悪くも完全アウエー状態で、ひとつだけ明らかに浮いてるような感じがあったのだが、美術ギャラリーなどや野外での「行為性」としてのパフォーマンスとそこで時間をたまたま共有した人という形ではなく、明確に「見る/見られる」関係が固定化した観客の前で上演する時にどのように受け取られるのだろうかという問題がある。ネット上の感想などを見てみるといとうせいこう氏がブログで絶賛している*3など意外と好評なのが意外(失礼)でもあるが、これはキュレーターの桜井圭介氏が用意したこの企画の枠組みが、プロデューサーではなくキュレーターと名乗っていることからして、現代美術などの枠組みと近いコンテンポラリーダンスの周縁を意識したものであるからということもおそらくある。その意味ではこれまでのcontact Gonzoのやり方だけでは成立しないのではないかと思われるPAMOアワードの受賞公演をどのように行うのかには注目なのである。