下北沢通信

中西理の下北沢通信

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京都コンテンポラリーダンス・ラボ13 コーチングプロジェクト「ZOETROPE/ソウルメイト」@京都芸術センター

京都コンテンポラリーダンス・ラボ13 コーチングプロジェクト「ZOETROPE/ソウルメイト」(京都芸術センター)を観劇。

じゅんじゅん 演出・振付 『ZOETROPE』

振付アシスタント・出演:森川弘和
出演:アミジロウ 市川まや 太田浩輔 木村麻耶 中田裕美子 久井麻世 別府ちひろ 

アニメのことをよく動く絵、と言うが、絵は動いてなんかいないのだ。見る人が錯覚するのだ。僕らはいったい何を見ているのだろう。果たして世界はホントに動いているのか?静止画の連続だとしたら。その静止画をそっとすり替えてみよう。ほら、普段よく「あれ、今ここにおいたのに」とか「ボールペンと思ったら赤鉛筆だった」とかあるでしょ?
あれ、誰かが絵をすり替えてるんだよ。

相原マユコ 演出・振付 『ソウルメイト』

出演:今田葉子( j.a.m.Dance Theatre ) 太田翔子 高室久志 夏目美和子(schatzkammer) 日置 あつし(うさぎ印) 

皮一枚のその下に
ふつふつと沸いた 
フツフツと沸いた

灰汁にまみれて
気を失ってしまうまでの ほんの

一瞬。

今回のコーチングプロジェクトは「水と油」(活動休止)のじゅんじゅん(高橋淳)の演出・振付のよる作品「ZOETROPE」とj.a.m.Dance Theatreの相原マユコによる「ソウルメイト」の2本立てである。京都芸術センターによる若手ダンサー・振付家の育成事業が「コーチング」ではあるのだけれど、今回のメンバーにはじゅんじゅん組でいえば振付アシスタントも兼ね出演もしている元モノクローム・サーカスの森川弘和、大阪の女性ダンサー、市川まや、相原組はj.a.m.Dance Theatre のメンバーである今田葉子に加えて、夏目美和子(schatzkammer)の名前も名を連ねているから、ワークショップ的な若手育成公演とプロデュース公演のどちらともいえるようなものとなっている。
 少なくとも今旬であるような若手振付家を起用して、WSちょこっとやってこんなの作りましたという発表会レベルのものではないちゃんとした作品を作らせているところが、最近ありがちな安易なWS公演とは一線を画するところであり、評価に値すると思う。
 じゅんじゅんの「ZOETROPE」はどうしても先日、水と油のメンバーのおのでらん(小野寺修二)による「空白に落ちた男」を見てきたばかりだったので、じゅんじゅんはどうだろうと思って比べてしまうのだが、両者の比較はオーディションによる若手メンバーによる今回の公演よりは伊藤キム、森川弘和らが顔をそろえ、本人も出演するじゅんじゅんSCIENCEの本公演を待つべきであろう。
 今回まず思ったのはダンサー、俳優など背景もいろいろで必ずしも全員が全員、身体制御の技術にたけているともいえないメンバーに対して、妥協のない高い要求をつきつけ、「本当に容赦がない人だな。この人は」ということだ(笑い)。表題の「ZOETROPE」というのは上のチラシの右側に載っている写真がそうなのだが、映画の発明以前からある連続する絵を動かす装置*1のことである。円形の輪の部分を回転させてやると、円筒の内側に描かれている絵がスリットを通して動いて見えるのだが、なめらかに動くわけじゃなくて、いわばパラパラ漫画のようにカクカクと動くのが動きの特徴といえる。
 この作品はそれと同じように例えばバレエのように滑らかに動きわけじゃなくて、一緒に動いているパフォーマーが突然どちらか片方だけが静止して、もう一方がその近くで動き続ける、というような動きと静止が交互にやっているようなシークエンスが連続していく。