下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

珍しいキノコ舞踊団「20分後の自分と。」@3331 Arts Chiyoda屋上

振付・構成・演出:伊藤千枝
演出補:小山洋子
振付協力:珍しいキノコ舞踊団
出演:山田郷美 篠崎芽美 茶木真由美 梶原未由 白石明世 山下三味子 伊藤千枝
友情出演:小浜正寛(ボクデス) フォークシンガー小象
舞台監督:黒田隆行 加計涼子(ball inc.)

照明:関口裕二(balance,inc.DESIGN)照明操作:菅橋友紀

音響:前野公英(SONICA)美術:モリオ

スタイリスト:早川すみれ衣裳協力:

宣伝イラスト:藤本康生宣伝デザイン:小山睦浩(mograph)

WEBデザイン:田苗見知理 根本真二(chiliacta)制作:大桶真 八田朋子

助成:文化芸術振興費補助金(芸術創造活動特別推進事業)
協力:
会場協力:3331 Arts Chiyoda
主催:珍しいキノコ舞踊団 合同会社キノコノキ。

 珍しいキノコ舞踊団の20周年記念公演である。興味深いのは少し調べていたらちょうどほぼ10年前の2000年11月に今から振り返ってみるとこの集団の大きな転換期となった「フリル(ミニ)」*1が上演されていたことだ。

この舞台ではコンテンポラリーダンスとして踊りますよという感じを極力押さえて、等身大の若い女性が集まって、仲良くじゃれ合っているようなところから音楽に乗って身体を動かしているうちごく自然にダンスが生まれてくるというような構成を取っている。そして、踊っている彼女らが楽しそうなので自然と見ているこちらも楽しくなってくる。既成のダンスを宙づりにするようなメタダンス的なアプローチというのはこの公演の前に見たダンスセレクションでニブロールがやっていたり、キノコも過去にそういうことを何度もやってきたのだが、この作品ではそういうところを通り過ぎて「踊りって楽しいんだよ」というのをあえて理屈抜きにぬけぬけと演じてしまっている。

以上が当時「フリル(ミニ)」について書いた私の感想だが、これは今回の「20分後の自分と。」にもそのまま当てはまるようなところがあり、その意味では現在の珍しいキノコ舞踊団のスタイルの事実上の出発点のようなところがあった。そんな風にわざわざ書いたのは調べてみて、ついこの間のような気分ではあるのだが、「フリル(ミニ)」から10年の時間が経過しているということに改めて気づかされたからだ。そして、一方で珍しいキノコ舞踊団にはその前に10年間のキャリア、があって日本版ローザスなどと呼ばれていた時期もあったな、ということもちょうどこの前日にローザスローザスダンスローザス」の再演を観劇とたこともあって思い出したからだ。
 日本のコンテンポラリーダンスのはじまりをどこに置くかについて舞踊評論家の乗越たかお氏は勅使川原三郎が「風の尖端」でバニョレ国際振付コンクールを受賞した1986年説をとっていたが、私は1993年説をとる。それはこの年にウニタモミイチ氏らが企画したパフォーミックスというダンス企画が渋谷シードホールでありここにNest、H・アール・カオス、そして珍しいキノコ舞踊団といった舞踏系ではなく、モダンダンスからも一線を画したまったく新しいタイプのコンテンポラリーダンスカンパニーが出現しそれを起点に東京を中心に爆発的なブームが引き起こされたという印象があるからだ。
 私がはじめて珍しいキノコ舞踊団を見たのはそのパフォーミックスの一環として上演された1993年10月の「これを頼りにしないで下さい」という作品であった。そして、それらも含めた日本のカンパニーの作品というのは80年代末から90年代初頭にかけて相次ぎ来日していたウィリアム・フォーサイスピナ・バウシュローザスといった海外カンパニーの大きな影響を受けてはじまったということもあって、なかでも「ローザスダンスローザス」などに代表されるローザスの作品の影響は大きかったと考えられたからだ。