下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

東京デスロック「再/生」@KAIKA

SUMMER TOUR YOKOHAMA - KYOTO - FUKUROI

演出:多田淳之介
出演:夏目慎也 佐山和泉 佐藤誠 間野律子 (以上東京デスロック)
   石橋亜希子(青年団) 坂本絢

東京デスロック「再/生」には若干のセリフはあるけれど、ほぼ全編が音楽とそれに合わせて動く俳優たちの身体所作によって構成されている。ただ、その音楽の多くが「歌詞」のあるボーカル曲となると、曲想だけではなく、そこで歌われている意味内容も作品の意味合いに関係してこざるえなくて、スタイル自体は最近よくある、「演劇なのかダンスなのかよくわからない舞台」の一種ということもでき、作品自体は抽象化され、普遍的な要素も持つものだが、今回の場合は「再/生」すなわち「再び生きる」ということをモチーフにしたポスト3・11の「再生への思い」がストレートに伝わってきた。
  冒頭部分に女性が出てきて、「幸福じゃなかった、今は幸福である」などと語る場面はチェルフィッチュの「わたしたちは無傷な別人である」を一瞬思わせたのだが、そんな印象は舞台の進行とともに吹き飛んでしまう。その後はセリフがほとんどなくて、途中でまた短く「焼肉」の会話が出てくるけれど、セリフ(戯曲)の代わりに音楽とそれに付随した一連の身体所作だけで進行する。
 出演しているのは全員俳優でダンサーではないので、動き自体が別段面白いというわけではない。それでも舞台を飽きないで見続けるのは、役者たちが演じている総体が観客に想起させる「意味」の世界があるからだ。