下北沢通信

中西理の下北沢通信

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黒田育世新作公演「きちんと立ってまっすぐ歩きたいと思っている」@MUSICASA

振付・出演:黒田育世
ピアノ・音楽:鈴木優人
出演:関なみこ
原曲:松本じろ
〈スタッフ〉
舞台監督:原口佳子
照明:森島都絵(インプレッション)
衣裳:荻野緑
墨絵:丸山十志郎
宣伝美術:太田博久
記録映像:関 瑠惟
記録写真:関 暁
制作:ハイウッド  瀧本麻璃英
主催:BATIK
助成:芸術文化振興基金

 ダンサー・振付家の黒田育世がダンス経験のない10歳の女の子(関なみこ)と二人で踊るデュオ作品である。子供も出演して踊る作品ではあるのだが、いわゆる劇場での創作作品によくあるような「子供のための創作」ではなくて、どうそうなのかは説明が難しいがその対極のような作品。共演者がBATIKのほとんどのダンサーがそうであるようなダンス経験者(特にバレエ)ではないために黒田の作品のボキャブラリーによくあるバレエ的な技法はほとんど使われていない。しかし、関は新体操を3年ぐらい習っていてかなりの柔軟性はあるため、黒田とユニゾンで動くデュオなどではそういう関の得意な動きなどもうまく利用しながら、本格的なダンス作品に仕立て上げた。
 黒田育世のダンスの特徴についてはアイドルグループのももクロについての論考「パフォーマンスとしてのももいろクローバーZ*1でも取り上げ「彼女の踊りは激しい回転を続けたり、倒れてまたすぐ立ち上がったり、身体に大きな負荷のかかる動きを持続していくことで、しだいに身体制御能力に長けたバレエ出身のダンサーを身体能力の限界、制御できない状態に追い込んでいく。そこから生きた肉体の持つ『切実さ』のようなものが浮かび上がってくる」と評して、ももクロの全力パフォーマンスとの共通点を論じたのだが、今回は子供と一緒に踊るデュオ作品ということもあり、そうした激しい動きはほとんど見られない。
音楽もピアニストの鈴木優人がクレジットされていたことから、ピアノ演奏に合わせて出演者二人が踊るのかと思いきや、ほとんどの場面では松本じろによる鼻歌が流れてこれに合わせて踊るか、無音のシーンも多い。