下北沢通信

中西理の下北沢通信

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Monochrome Circus 「アンサンブルプレイ」@京都アトリエ劇研

1:Endless
演出:坂本公成 
出演・振付:坂本公成森裕子 音楽:山中透

2:グランドホテル -Dance in Building-
演出・振付・出演:合田有紀 野村香子
舞台美術:山本アキヒサ 音楽:ミウラ1号
出演:池端美紀、石田安俊(ロスホコス)、板倉佳奈美、げいまきまき、佐野淳代、諏訪いつみ(満月動物園)、関珠希、癲木明子、豊原響子、則本桃子、Yumi、美輝明希、山野博生、渡部智、レギンス・マリー

京都に本拠を置くMonochrome Circusは日本を代表するコンテンポラリーダンスカンパニーといっていいだろう。Monochrome Circusの特色は20年ぐらい前から国内外で行っていた出前パフォーマンス「収穫祭」や瀬戸内国際芸術祭2010で上演した「直島劇場」などのコミュニティーアートやサイトスペシフィックアートの色彩の強い作品と精緻に構築された劇場向けの作品の両方を2本柱として活動を続けてきた。
最近はダンスカンパニーが劇場以外での活動をすること自体は別段珍しくはない。ただ、そうした活動の多くは芸術による社会貢献活動の流れからアウトリーチとして紹介される。事実、「収穫祭」プロジェクトもアウトリーチと紹介されることが、多かった。しかし両者は全く別物だ。
なぜならMonochrome circusの場合、そうした行為は「芸術家が社会貢献をする」ことではなく、外部のさまざまな協力者やコラボレーターと出会い、何かのプロジェクトを立ち上げていく、「プロセスそのものが作品である」という考え方があるからだ。
活動も京都に限らず日本各地や海外までも視野に入れたもので、特にフランスでは複数の国立ダンスセンターとの共同制作を含んでいる。ダンスフェスティバルに招聘参加しての海外公演をする例は他にもあるが、東京の有力カンパニーでもここまでの実績はない。演劇まで範囲を広げても青年団、SPAC、など限られた事例しかない。それでも、東京での知名度がそれほど高くないのは規模が大きなホールでの公演など、条件のよい東京公演がほとんど行われてないからだ。フェスティバルトーキョーは海外からダンスカンパニーを呼んだり、自前での公演ができる東京のアーティストに公演をやらせるなら、Monochrome Circusに公演の機会を提供してほしいと思う。
 今回の公演は2本立てだが、1本目の「Endless」が坂本公成森裕子のデュオによる劇場向け作品の再演。元ダムタイプの山中透が音楽を提供。もともとはプロセミアムタイプの客席配置を前提として創作され、初演された作品であったが、今回は相撲の土俵のように円形のアクティングエリアを二重の円形の客席が取り囲むような配置で再構成した。
Monochrome Circusはダンサーのソロ、デュオによるレパートリー作品を複数持っていてもそういうものの1本。「カーン国立振付センター」主催の「Festival Danse D’ailleurs」が初演。初演ではどうしたのか不明だが、円形の舞台作りにした今回は坂本と森が正面にグラウンディングで向きあい、上下を入れ換えながら、反時計回りに回転していった。山中透のノイズ系の音楽のはじまりとともにすでに作品はスタートしているが、
ほとんど暗闇の中で最初は何も見えない。時間の経過とともにおぼろげに何かがうごめく姿が垣間見え、次第に照明が明るくなってくると先に書いたような動きを2人がしていたことが初めて分かる。しかし、2人のうち男性の坂本の方は照明が明るくなった後もずっと目を閉じ続けていて、最後に床に仰向けになったままで、手足を伸ばして森をリフトしてもその目は開くことはない。復興しても心は暗闇に閉ざされているという隠喩であろうか。
 震災後、坂本は三好達治の詩「灰が降る」を引用しながら反原発への強いメッセージ性を感じさせる「HAIGAFURU / Ash is falling」を創作しているが、この「Endless」もポスト3.11の日本を象徴させる作品ではある。ただ、こちらの方は抽象度が高く、「HAIGAFURU」にこめたような具体的なメッセージ性はない。デュオ作品としては過去に製作された作品と比べれば動きの種類、数も限られていて、少し物足りない印象を受けてしまうのも確かなのだが、シンプルに震災後の心情を提示したらこうなったということなのだろう。
 とはいえ、今回の公演の目玉が次の「グランドホテル -Dance in Building-」の方にあったのは間違いないだろう。円形の客席設定だった「Endless」に対してこちらは一度退出した後、もう一度劇場に入ると椅子がすべて取り払われており、オールスタンディング状態。というかより正確に言えば出演者がすでに劇場内で観客と一緒に立ってスタンバイしており、アクティングエリアは分かれていないので、一見区別が分からなくなっている。