下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ダムタイプ×身体 コンタクト基礎に新たなダンス表現 Monochrome circus『HAIGAFURU ーAsh is falling』@横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール

Monochrome circus『HAIGAFURU ーAsh is falling』@横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール

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Monochrome circus『HAIGAFURU ーAsh is falling』は「灰が降る – Ash is falling」の表題で、2012年にヘルシンキにあるZODIAK (Center for New Dance in Helsinki)で初演。日本・フィンランド交換滞在製作プログラムの一環として坂本公成が滞在中に、フィンランド人ダンサーに振りつける形で制作*1し、フィンランドと日本の4都市で公演、その後NYではショートバージョンの公演を果たしている。
標題の「HAIGAFURU」は三好達治の詩「灰が降る」からとられており、もともと東日本大震災福島第一原発の事故を受けて制作した作品だが。今回は日本人ダンサー5人(合田有紀、野村香子、遠藤リョウノスケ、岡野亜紀子、小倉笑)によるバージョン。照明の藤本隆行、音楽の山中透とともに「S/N」などダムタイプ作品を手掛けたメンバーも参加している。
コンセプトワークには藤本隆行も参加していると思われ、音響照明や空間構成にはダムタイプの影響も色濃く感じられるが、今回の上演では日本人ダンサーの身体により目がいった。ダンサーはMonochrome circusの元メンバー(合田有紀、野村香子)や彼らの基でコンタクト・インプロヴィゼーションの技法を学んだものたちであり、ダンスとしてはコンタクトを基礎としているはずだが、この作品ではダンサーの動きのほとんどが単独でのもので、この技法の特徴である他のダンサーとの触れ合いはない。Monochrome circusはこれまで人間の身体の代わりに「モノ」を対象としたコンタクト技法を積み上げて、独自の身体技法を蓄積してきたが、この作品ではコンタクトの対象はフロアそのものとなっていて、ほとんどの時間でグラウンディングの態勢のまま作品が進行していく。
そのために技法そのものはまったく異なるのだが、結果的には空中に斜めに足を出して静止する場面などは親交も深かった舞踏家、室伏鴻の作品*2を彷彿とさせるところもあり、まったく異なる身体メソッドを使いながら、似たような形態に落とし込まれているのを興味深く感じた。

出演者・スタッフ
出演:合田有紀、野村香子、遠藤リョウノスケ、岡野亜紀子、小倉 笑
振付・演出:坂本公成

演出助手:森 裕子

照明デザイン:
藤本隆行(Kinsei R&D)
作曲:山中 透
舞台監督:尾﨑 聡
音響:稲荷森 健
宣伝美術:南 琢也

企画・制作:

一般社団法人ダンスアンド エンヴアイロメント

制作協力:

一般社団法人ハイウッド

機材協力:

カラーキネティクス・ジャパン株式会社

2012年より幾度となく再演された名作
関西気鋭のダンサー5名を布陣し
黙示録的な世界観を重層的に展開する

2021年12月
30日(木) 14:00/18:00
31日(金) 14:00

横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール

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