2017年2月15日(水)〜22日(水)
東京都 こまばアゴラ劇場振付・音楽:KENTARO!!
出演:横山彰乃、高橋萌登、KENTARO!!
横山彰乃、高橋萌登、KENTARO!!の3人によるグループ作品。東京ELECTROCK STAIRSを引っ張ってきたKENTARO!!はもちろん実力者だが、横山彰乃、高橋萌登も自らの振付作品で横浜ダンスコレクション(高橋)、トヨタコレオグラフィーアワード(横山)でファイナリストに残るほかダンサーとしての個性も磨きがかかっている。新作「いつかモンゴリと眠る」はそうした集団としての強みが存分に生かされた作品であった。
KENTARO!!はストリート系のロックダンスの出身ということもあり、以前から群舞の創作には長けていた。そのため、これまでの東京ELECTROCK STAIRSはKENTARO!!のソロとメンバーによるグループダンス(その多くがユニゾン)によって組み立てられていることが多かった。最近では他のメンバーによるソロやデュオなど構成パターンも増えてきたが、今回は自分も含めて出演人数を3人に絞り込んだことで、それぞれの個性の違いが有機的に絡み合うことで多様な持ち味を発揮できる作品に仕上がったのではないか。
背が高く手足も長い。スラッとした体型でシャープに動くときわめてスタイリッシュに見える横山彰乃。対照的に背が小さく小動物系のとぼけたキャラが魅力だが、それでいていざ動き始めると切れ味のある高橋萌登。この2人の凸凹コンビぶりがなにかにつけてそれぞれの個性の違いが著しいことが作品の中で効いている。KENTARO!!のソロ、横山彰乃、高橋萌登の2人によるデュオ、あるいはこのどちらかによるソロに途中からKENTARO!!が加わり、ユニゾン的になったり掛け合いになったりする。あるいは3人のユニゾンでの群舞。こうした様々な組み合わせが次々と展開していく。
さらにもうひとつの売り物はKENTARO!!による音楽であろう。ダンス作品に使用する楽曲はすべてKENTARO!!が自ら創作しているのが東京ELECTROCK STAIRSの特色だが、KENTARO!!による少しとぼけたところがあるが、せつなさもあるボーカル曲からメロディアスなピアノ曲、ビートの効いたダンスナンバーとその曲想も以前と比べ多彩さが増している。音楽の変化がそれぞれ前述のパフォーマーの個性の違いの組み合わせによる舞台上の空気感の変化ともあいまって、より飽きさない構成となっていたのではないかと思う。
2016年のダンスベストアクト(http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20170102)で東京ELECTROCK STAIRSメンバーの横山彰乃が自らのカンパニーであるlal bonshesの旗揚げ公演として今回と同じこまばアゴラ劇場で上演した「ペッピライカの雪がすみ」は振付家としての将来性を感じさせるきわめて素晴らしい作品でこちらもやはり上位で取り上げた東京ELECTROCK STAIRSの本公演である「前と後ろと誰かとえん」@吉祥寺シアターよりも上位の2位においたが、KENTARO!!による今回の新作は今年のベストアクトでの順位はともかくとして、昨年上演されベストアクトに取り上げた2本よりもそれらの公演により得た経験値なども生かしながら一層の進歩を見せてきたように思われた。