下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

『坂崎幸之助のももいろフォーク村NEXT第92夜 “完全版” オトナのももいろフォーク村』@フジテレビNEXT

坂崎幸之助のももいろフォーク村NEXT第92夜 “完全版” オトナのももいろフォーク村』@フジテレビNEXT

M01:Re:Story (ももクロももクロ)
M02:あんた飛ばしすぎ!! (ももクロももクロ)
M03:天国のでたらめ (ももクロももクロ)
M04:GODSPEED (ももクロももクロ)
M05:Sweet Wanderer (ももクロももクロ)
M06:ハナノユメ (夏菜子/チャットモンチー)
M07:自転車にのって (れに/高田渡)
M08:わがままジュリエット (しおりん/BOØWY)
M09:レモンティー (あーりん&いづみ/シーナ&ロケッツ)
M10:人生の扉 (いづみ&あんにゅ/竹内まりあ)
M11:少年時代 (あーりん&あんにゅ/井上陽水)
M12:出発の歌 (小室等ももクロ/及川恒平)
M13:雨が空から降れば (小室等&あーりん/小室等)*1
M14:あげます (小室等&れに/小室等)
M15:夏二人で (小室等&しおりん/小室等)
M16:死んだ男の残したものは (小室等谷川俊太郎)
M17:1月の雨を忘れない (村長&れに&しおり/THE ALFEE)
M18:空のカーテン (ももクロももクロ)
M19:笑一笑 (ももクロ&あんにゅ&高橋久美子ももクロ)

M20:愛よこんにちは (小室等&村長/小室等)
M21:昼下がりの夢 (小室等&村長/林寛子)
(22時より未公開パート)
M12:出発の歌 (小室等ももクロ/及川恒平)

 副題が「オトナのももいろフォーク村」というからどんなことをやるんだろうと思ったりしたが、フォーク界の重鎮(珍獣ではない)小室等を招いてのフォーク村原点回帰だったのではないかと思う。そして、ここから先はあくまで私の勝手な思い込みであるのだけれど、以前にも書いた第100夜での吉田拓郎御大降臨に向けてのカウントダウン*2*3ではないかというのが私の見方である。
 とはいえ、私のような古老は問題ないが、古いフォークソングばかり歌わせると「こんな知らない歌ばっかり、ももクロに歌わせて」と文句が出かねないから*4、そうした若いももクロファンへのサービスとして前半の昨年の新曲5曲通しや元チャットモンチー高橋久美子の出演やトリビュートなどもあったのではないかと思った。
新曲5曲通しや後半の「空のカーテン」「 笑一笑」にも同じことがいえるのだが、ももクロ楽曲を披露するということに関していえば演奏のアレンジなど関わらず。最近のももクロは本当に安定しているし、パフォーマンスも素晴らしい。
カバー曲ではチャットモンチーのデビュー曲「ハナノユメ」を百田夏菜子が歌ったのだが、これが本当によかった。ただ、よかったというのなら夏菜子の場合よくあることともいえるが、この曲が特別だったのはファルセット、セミファルセット、ミックスボイスと千変万化の細かい歌唱の技術を複雑に組み合わせたような歌唱技術が必要なのに技術的破綻をほとんど感じさせることなくこれを歌いこなしていたことだ。熱唱タイプの歌であれば彼女の持って生まれた声の魅力で歌いこなしてみせていたが、杏果などに比べると繊細な歌唱技術には欠ける印象が強かったためこれは「うまくなっている」と驚かされた。

チャットモンチー - OPENING / ハナノユメ - Budokan [HD]

氷室京介 わがままジュリエット -字幕付き MCあり

シーナ&ロケッツ レモンティー
 驚かされたのはシーナ&ロケッツをカバーしたあーりん&いづみの「レモンティー」だ。原曲はシーナ&ロケッツだからどう考えてもロック曲だったのであろうが、あーりんはこれをまるでロック調を交えたアイドル曲かのように歌ってみせる。あーりんのソロコンでどこのアイドルの曲だろうと思って聞いていた曲が布袋曲であったのに驚かされたことがあったが、この曲などはあーりんが歌うとHKTの「メロンジュース」のようなアイドル曲にしか聞こえない。あーりん恐れるべしなのである。
 とはいえ、そういう味付けでは歌いきれないような曲にあたるとまだまだ苦戦しているのも事実。井上陽水の「少年時代」と小室等の「雨が空から降れば」*5は細かい部分のコントロールなどでまだやや歌いこなせてない感が残った。もっとも、かなり歌えてはいるのでこの2曲への思い入れが強く、それで要求水準がついつい高くなってしまうというのはある。

雨が空から降れば(六文銭・及川恒平・四角佳子・小室等)

 玉井詩織はギターの腕が相当上がっていてこの日の演目では小室等とギター演奏、歌双方のデュオを手掛けた「夏二人で」は出色の出来栄えであった。詩織はほかのメンバーに比べると歌への感情移入があまり感じられないという弱点があるのだが、楽器(特にギター)を引きながらだとそれに引っ張られるように感情が入ってくる時があり、この曲などもそうだった。カバー曲では弾き語りが今後は武器になるかもしれない。
 谷川俊太郎作詞の「あげます」もれにちゃんらしい魅力が発揮された楽曲だった。
 それでもこの日の白眉は小室等の「死んだ男の残したものは」だったと思う。ベトナム戦争反戦歌でもあり、プロテストソングを本領とする原点といえそうな歌で、フォーク村ということで数年間続けてきたももクロにこういうご時勢であるからこそ、今この時点で「フォークソングというのが何なのか」を伝えたかったというのが「オトナのももいろフォーク村」の狙いだったのではないか。歌を聴き入るももクロメンバーの真剣な表情に打たれるものがあった。

*1:「雨が空から降れば」の作詞は劇作家の別役実。演劇集団66が上演した「スパイものがたり」の劇中音楽であり、私も青山円形劇場での再演で六文銭の演奏するバージョンを見たことがある。

*2:それとなく、井上陽水の「少年時代」をあーりんに歌わせながら、小室等からフォーライフレコードの話を引き出しているのが怪しい(笑)。

*3:泉谷しげるは昨年4月に出演www.oricon.co.jp

*4:私などはフォーク村という番組なのだからそれのどこが悪いと思うが

*5:entertainmentstation.jp