下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

少女都市「光の祭典」@こまばアゴラ劇場

少女都市「光の祭典」@こまばアゴラ劇場

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作・演出:葭本未織

喪失と、復活。‬
‪『光の祭典』は、この夏はじめて東京でお披露目をする葭本未織の代表作です。 ‪私は2才の誕生日に阪神・淡路大震災を被災しました。神戸にはルミナリエという慰霊のお祭りがあり、その終点の東遊園地には「希望の灯り」というけして消えない灯火が揺らめき続けています。 ‪その光がわたしに演劇を創らせ続けています。‬
‪生きてゆくことは喪失と復活の繰り返しです。傷付いた人が再び歩き出せるよう、この演劇を創ります。‬

少女都市(しょうじょとし)
劇作家・葭本未織の主宰する兵庫と東京の2都市で活動する劇団
2016年旗揚げ
2018年アイホール「次世代応援企画 break a leg」 選出
2019年杉並演劇祭優秀賞受賞

出演

青海アキ(8/22(木)19:30の回と8/24(土)18:00の回には出演しません)
加藤広祐
清瀬やえこ
桑野晃輔
齋藤朱海
谷風作
玉垣光彦
中野亜美
宮川まき
葭本未織(8/22(木)19:30の回と8/24(土)18:00の回のみ出演します)

スタッフ

舞台監督:村雲龍一(俳優座
照明プラン:國吉博文
照明オペレーション:磯崎みずほ
音響:秋田雄治
音響オペレーター:佐藤優
舞台美術:乘峯雅寛
劇団制作:谷風作
制作:市村彩子
制作協力:ゴーチ・ブラザーズ
宣伝美術:デザイン太陽と雲
協力:劇団東京ヴォードヴィルショー劇団ひまわり、劇団藤一色、CRG、砂岡事務所、レティクル東京座 (50音順)

 若いが力のある作家だと思う。ただ、正直言って私にとっては苦手なタイプの作品と感じた。芸術(この場合は映画だが)の才能を巡る嫉妬や羨望などの泥々した感情とその渦中での恋愛感情が重なりあって全体としてアマルガムのようになっている。若さの熱量は感じられるが、そのストレートさも苦手感につながったかもしれない。
 大学の映画サークルを描いた作品としてはケラリーノ・サンドロヴィッチの連作「ライフ・アフター・パンクロック」「カメラ≠万年筆」があったがあそこで交わされた映画論や実際に撮られていた映画はある程度、説得力があったが、この作品に出てくる映画は具体性に欠く印象が強い。どういう映画を撮ろうとしているのかの具象的なイメージが今一つ焦点を結ばないのだ。劇中でロベール・ブレッソンの著作である「シネマトグラフ覚書」の名前が何度も登場するが、権威付けに登場するだけでこの著書はどのようなことを論じている著作で彼らの撮影していた映画とどのようにかかわるのかがはっきりしないし、普通だったら映画部の理屈っぽいメンバーが生意気に映画論を戦わせたりもするものだが、彼らの会話にそういうものもない。もちろん、私らが学生時代だった時代と異なり、最近の学生たちは対立を避けることを重視して議論などはしないのかもしれないのだが、他の行動から判断する限りはそういう人たちではなさそう。
 俳優それぞれには主役の清瀬やえこをはじめ熱演で力量も感じた。ただ、こういうラインで物語を展開するならばやはり設定のディテールをもう少し詰めていかないとリアリティーがないし、ラストの説得力もいまひとつと感じてしまう。
 さらにこの作品の根本的な疑問は神戸の震災と復興のシンボルとしてのルミナリエ*1のエピソードと映画をめぐる物語の連関性が弱いことにある。ルミナリエが話全体の主題と重なりあってこないように感じられるのだ。若い作家の作劇によくあることだが、神戸のルミナリエに対する個人の思いが強すぎるのではないか。神戸から離れた東京の観客にはこの上演だけではほとんどルミナリエが実際にどういうものなのかのイメージは伝わらないのではないかと思わざるをえない。

シネマトグラフ覚書―映画監督のノート

シネマトグラフ覚書―映画監督のノート

*1:妻が結婚前に神戸に住んでいたため、何度も行ったことはある。