演劇集団円「ヴェニスの商人」@吉祥寺シアター
劇場 吉祥寺シアター
出演 金田明夫、石田登星、佐々木睦、上杉陽一、渡辺穣、瑞木健太郎、玉置祐也、原田大輔、石原由宇、吉田久美、清田智彦、平野潤也、深見由真、清水透湖、友岡靖雅、大谷優衣
脚本 ウィリアム・シェイクスピア
演出 小川浩平
大昔に関西の若手劇団による上演で観劇した「ヴェニスの商人」は若くて可愛いポーシャが縦横無尽に大活躍するラブコメディーだったのだが、今回のはまったく色合いの異なる上演。
シェイクスピアがどういうつもりで書いたのかはよく分からないのだが、現代の基準で見たらこれはホモソーシャル的な仲間集団であるアントーニオ、バッサーニオらによる酷いアウトサイダー(ユダヤ人)いじめである。弁護士を装ったポーシャは愚弄的な裁判において詐欺的な詭弁を弄し、このいじめに加担しているという風にしかみえない。
不当な運命を耐えしのぶ、崇高なシャイロックの悲劇との解釈もあるようだが、今回の上演はそういうようなのでもないようだ。娘をアントーニオらの友人に奪われて逆上したシャイロックがヴェニスの契約法をたてにアントーニオを窮地に陥れることに一度は成功するが、ポーシャの詭弁によって逆に自縄自縛に陥れられ、本人の意志に反して無理やりキリスト教への改宗を強要され、完全に自らのアイデンティティーも否定されたうえにユダヤ人だからこそ可能だった金貸し(金融業)という生きるすべも取り上げられ、財産も没収されてしまう。
この結末は本当に不愉快きわまりないわけで、いくら当時一般大衆がユダヤ人のことを毛嫌いしていたとは言っても、これをハッピーエンドとはやはり考えることはできない。あるいはそう受け取っていたとすると当時の観客はどんなだったのだろう。
- 作者: シェイクスピア
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