下北沢通信

中西理の下北沢通信

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中屋敷法仁が看板男優の玉置玲央に書き下ろしたひとり芝居を若手女優が二人で上演 演劇集団円「プラスワン企画」@吉祥寺シアター

演劇集団円「プラスワン企画」@吉祥寺シアター

演劇集団円所属の若手俳優による短編3作品を上演。このうち、若手の女優ふたり(古賀ありさ、上野恵佳)による「いまさらキスシーン」が面白かった。もともとは柿喰う客、中屋敷法仁が看板男優の玉置玲央に書き下ろしたひとり芝居。原作では男優である玉置が短いスカートのセーラー服姿で女子高生を演じるというミスマッチな面白さがあった。というより、玉置のようにこの作品を演じるということはいわば「力技」のようなところがあって、彼にしかできないだろうと思わせるところがあったが、今回はそれを女優二人が交互にハイテンポで入れ替わるように演じる演出で演じて、玉置版とはまた趣の違う面白さを感じさせた。
中屋敷法仁と演劇集団円中屋敷シェイクスピア作品「ペリクリーズ」の演出を担当するなど縁がないわけではないのではあるが、この「いまさらキスシーン」は下記の映像*1を見ていただければ分かるようにいくら演劇集団円が新劇の劇団としては守備範囲が広いといってもリアリズムの演技を規範とする新劇の劇団の上演レパートリーからは大きく逸脱していて、到底上演可能なものとは思えないところだが、アニメや漫画を連想させるようなデフォルメは含みながら、彼女らの演技可能なスタイルへとうまく軟着陸させたと感心させられた。
 演出はパンフなどには特にクレジットはないので、終演後にロビーで聞いてみたところ出演者である彼女ら自身が手掛けたようだが、古賀ありさは上記の「ペリクリーズ」に出演しており、中屋敷と接点もあることからこれを手掛けたのかもしれない。最近の高校演劇で女子高生が演じている演技体と少し類似を感じるところもあって、高校演劇の出身なのかもと感じて、聞いてみたがそうではないようで、これはむしろほかの中屋敷作品で女優が演じている際の演技などをもとに彼女ら自身が着地したスタイルなのかもしれない。この舞台を見ていてほかの中屋敷作品を見てみたいとも思ったし、そうではない別の最近の若手作家(特に女性作家)の脚本を彼女らが演じたらどうなるだろうかとも思わされる上演だった。

<いまさらキスシーン> 作:中屋敷法仁 出演:古賀ありさ 上野恵佳
<モノローグ作品集「ハザマ」より> 作:渋谷悠 出演:庄司ゆう希
<コント「暗転」> 作:田光葵 出演:石井英明 近松孝丞 平田舞