下北沢通信

中西理の下北沢通信

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白昼夢『麒麟大天覧』@上野ストアハウス

白昼夢『麒麟大天覧』@上野ストアハウス

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2019.11.27-12.1

脚本・音楽・映像/米山昴
演出/石坂雷雨
出演/鶴田理紗 石井エリカ 海田眞佑 篠原正明 新藤秀将 中三川雄介 宮崎卓真

人間宣言」を機に変わっていく天皇の姿をきっかけに 宮内庁の一室に集められた何人かの職員たち。皇統の神秘性を守ろうと彼らには奇想天外なミッションが与えられた。世界から広く人知を超えた神秘の存在である妖怪を招き、この日本で妖怪たちによる巨大なスポーツ大会妖怪オリンピック「キリンピック」を開こうというのである。そのために発足された委員会のメンバーらは日本中の妖怪の住まう土地に出かけ、「キリンピック」への参加を働きかける、というのが白昼夢「麒麟大天覧」の筋立てである。

白昼夢「麒麟大天覧」@花まる学習会王子小劇場観劇。登場キャラの名前を見て京極夏彦と「帝都物語」の影を感じる。昭和を背景にした妖怪たちによるオリンピックを平成の次の時代に開催される2020年東京五輪に重ね合わそうというアイデアも興味深いがやや盛り込みすぎたかもしれない。異色な作品であることは間違いがない。
白昼夢は日大芸術学部OBによる劇団だが、最近日芸出身者が多い青年団系とはそのスタイルに於いて一線を画するところがありそう。主宰兼演出の石坂雷雨は2年ほど少年王者舘に在籍していたそうで俳優をフォーメーショナルに使う動きなどにはそうした影響もないではない。ただ、天野天街の作品あるいは少年王者舘にそれほど似ているわけではない。
複数の俳優による集団演技は最近はあまりないが、80年代にはあったスタイル。結局のところ、例えば夢の遊眠社がそうであったように、あるいは惑星ピスタチオがそうだったようにいかに自分らならではの独自の身体表現様式を確立していけるかだろう。それには集団としての試行錯誤を含む訓練が必要だし、時間がかかるが何かしら面白いものが出てくるか注目していきたい。

前回公演の際、上記のように書いた。随所にダンス的な集団演技・所作をからめたスタイルは2年前に比べると進歩していた。題材的にも2020年東京五輪に対する皮肉めいた脚本は2年前と比べてよりアクチャリティーを感じざるを得ないのは現政権がつかさどるここ最近の現実が虚構を超えてあまりにひどすぎるからだろう。特に五輪の利権にたかる連中の姿はこの舞台に登場する最悪の妖怪(平将門の怨霊)よりも醜悪に思われてならない。この舞台は単なるファンタジーではなく、そうした現実へのアイロニーがあると思った。
 俳優では鶴田理紗が主役の男(麒麟)役を好演した。この舞台はほとんど彼女のための舞台といってもいいほどで、男装しての立ち姿に凛としたところがあり魅力的。特に物語の後半自らの使命を自覚してからの演技には前回にはここまでは感じなかった重みと気迫が加わっていたのではないだろうか。
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