下北沢通信

中西理の下北沢通信

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アンサンブル・ゾネ版 (演出・構成・振付:岡登志子、京都芸術センター)『Song of Innocence 無垢なるうた』 大野一雄、大野慶人原作「睡蓮」@配信

『Song of Innocence 無垢なるうた』 大野一雄大野慶人原作「睡蓮」(演出・構成・振付:岡登志子、京都芸術センター)アンサンブル・ゾネ版@配信

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 アンサンブル・ゾネは関西を代表するダンスカンパニーといっていいだろう。以前は東京での公演も定期的に手掛けていたが、この作品は東京公演はなく、昨年神戸アートビレッジセンターで初演。京都芸術センターでの再演を配信で見ることができた。もちろん、舞台芸術は生で観劇できるにこしたことはないが、関西までの遠征は難しいうえにコロナ禍の状況ではもちろん不可能。それだけに先日やはり配信で見た北村成美にしても遠隔地の作品が配信で見ることができるのはありがたい。
 主宰の岡登志子が独フォルフガング大学の出身であることもあって東京の舞踊批評家の一部にアンサンブル・ゾネの作品のことをノイエタンツあるいはドイツ表現主義舞踊の流れをくむと評する人がいるようだが、初期の作品はともかく現在のアンサンブル・ゾネをそう評することで説明したような気になるのはどうなのかと思っている。ただ、90年代以降東京でコンテンポラリーダンスと称されてきたダンスとは趣きが少し違うのも確かで、しかもその作風は現在も変化し続けているから、どういう風に説明するのが正しいのかはいまだに当惑している部分もある。
 『Song of Innocence 無垢なるうた』 は 大野一雄大野慶人原作「睡蓮」とクレジットされている。元の作品はもちろん舞踏作品といっていいと思われるが、ところどころに原作からのイメージを借用していわばオマージュした部分はあるようだ。以前の岡作品といえば静謐で無駄な動きのディティールをすべてそぎ落としたようなところがあった。そのために見るには相当の集中力が必要でダンスを見ることに慣れた観客でないと入り込むのが難しいようなところがあった。ところが、この舞台ではところどころにダンサーのキュートさを生かした振付やコミカルな場面もあって、配信でも見やすい作品となっていた。
 ダンサーには福岡まな実のように舞踏のカンパニーに所属経験のあるダンサーもいるが、大野一雄大野慶人原作といっても舞踏の方法論を作品に持ち込むということはなく、同じ緩やかな動きをするにしても明らかにやり方が違う。そのため、群舞などではあまりにも普通の群舞となってしまって、もう少しこの作品なりのアクセントをつけたらもう少し面白くなるのにと思ったりもするが、それぞれのダンサーのソロ部分はその人ならではの個性が発揮されていて面白い。
 堤悠輔(貞松・浜田バレエ団)と出演者がクレジットされていて、男性出演者でこの人だけがこれまでアンサンブル・ゾネ作品では見たことがない人なので、動きに注目してみると多少のぎごちなさを感じるものの非常に動きを抑えながらゆっくりと動く場面などは本当にバレエダンサーと思ったりもするのだが、途中で一カ所だけフェッテかなにかバレエの所作をやらせる場面があり、そこはやっぱりバレエの人なんだと分かるようにしてある。
 このカンパニーの作品は20年以上見続けているが以前だと垣尾亘など特別な人を除いてそれぞれのダンサーの固有の動きはすべてそぎ落として岡のメソッドによる動きだけに落とし込んでいくようなところがあったが、この作品などを見ると例えば小鳥のひなのような動きをする女性ダンサーの所作など個性に合わせての役柄の振り分けが目立つようになっているが、そういうところから新たな魅力が生まれている。
 ただ、作品全体の核は岡登志子自身と垣尾亘がそれぞれ踊るソロの部分*1
 「睡蓮」を原作とクレジットしたのはこの二人の役割が大野一雄大野慶人をイメージしているからだろう。ただ、原作の舞踏作品を見ていないので、白い衣装の垣尾と黒い衣装の岡のどちらがどちらを表しているのかはよく分からない。というよりはより正確な表現を心がければどちらの演技にも大野一雄の振舞いを感じさせるところがあるからだ。そして、舞踏のメソッドをいっさい使わずにそれを感じさせるのは相当なことだと思った。

アンサンブル・ゾネ ダンス公演
大野一雄大野慶人原作「睡蓮」アンサンブル・ゾネ版
『Song of Innocence 無垢なるうた』
2020年2月神戸アートビレッジセンターKAVCホール初演

アンサンブル・ゾネ ダンス公演
Song of Innocence 無垢なるうた
大野一雄大野慶人原作『睡蓮』アンサンブル・ゾネ版

一瞬の中の一瞬
それは永遠に続く
いのちとのつながり
月の光が照らす空に届くほどに
うたう
無垢なるうた 
「睡蓮」の面影と共に

舞踏家 大野一雄氏、大野慶人氏原作『睡蓮』に感応し創作した岡登志子振付作品。
踊りとは何か、踊りの持つ力を追求し、時代を超えた身体表現の可能性を問いかける。

日時
2021年
1月22日(金)19:30開演
1月23日(土)17:00開演
1月24日(日)14:00開演
上演時間:約60分  
受付開始は開演の1時間前、開場は開演の20分前

会場
京都芸術センター 講堂

料金
一般:3,000円
学生:2,000円(当日受付で学生証をご提示ください)

※完全予約制 ※全席自由席 (公演当日受付順に入場整理番号を発行します) 
※キャッシュレス決済にご協力お願いいたします。
※本公演は通常より客席数を減らして開催します。
※当日券は残席がある場合のみ当日受付にて販売します。(当日券:3,500円)
感染症拡大予防対策について -
新型コロナウイルス感染拡大防止ガイドラインに則し、細心の注意を払い感染防止の取り組みをおこないます。
何卒ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

チケット購入・公演の詳細は
https://songofinnocence.jimdofree.com

演出・構成・振付:岡登志子
美術:梶なゝ子
照明:岩村原太
出演:垣尾優 福岡まな実 堤悠輔(貞松・浜田バレエ団) 糸瀬公二 桑野聖子 文山絵真 松村有実 岡登志子
舞台監督:大田和司
音響:西川文章
宣伝美術:大田高充
制作:アンサンブル・ゾネ

主催:アンサンブル・ゾネ
共催:京都芸術センター Co-program 2020 カテゴリーD「KACセレクション」採択企画
協力:大野一雄舞踏研究所 NPO法人ダンスアーカイヴ構想
特別協力:ゲーテ・インスティトゥート大阪・京都
助成:芸術文化振興基金

Ensemble Sonne Dance Performance “Song of Innocence”
Ensemble Sonne's version of Ohno Kazuo and Ohno Yoshito's original work, Water Lilies.
KOBE ART VILLAGE CENTER (2F KAVC HALL)


2021/01/22-24<垣尾優 出演情報>Ensemble Sonne ダンス公演 Song of Innocence 無垢なるうた

*1:二人で登場する場面もあるが、それぞれの動きが響き合いながらも単純にシンクロしているわけではないので、ここではあえてソロと表現した。