下北沢通信

中西理の下北沢通信

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チェルフィッチュ × Otagiri × 丹下紘希『アウトラップ(いかにも音楽的な語りのなかにもキラリと饒舌なシナリオ)』@配信

チェルフィッチュ × Otagiri × 丹下紘希『アウトラップ(いかにも音楽的な語りのなかにもキラリと饒舌なシナリオ)』@配信

2014年に東京都現代美術館で行われたラッパーOtagiriとチェルフィッチュ岡田利規の共同作品「ポストラップ」の続編的な作品。だがその時見た作品とはかなり趣きが違う。「ポストラップ」はあくまでOtagiriのラップに対して岡田がその言葉との関連により身体所作を振り付けていくというものであった。ラップ自体は普通にラップとして聴き取ることができるフロウに乗せたものだったと記憶している。
今回は「アウトラップ」と表題に付けたように楽曲、リリックともに確かに詩的に韻を踏んだ語りにはなっているから、ラップという風に言い切れば最近はラップの領域もかなり広がっていて、こういう前衛詩の朗読パフォーマンスにも聴こえるものもラップに含まれるのであればこれもラップだといえなくもないのではあるが、そうであっても聴いていての印象では「なんだろう。これは」と思ってしまうことも確かなのだ。
そして、さらにこの作品を以前見た作品と異なるものとしているのはこれが映像作品であるということだ。映像作家としてこの作品には丹下紘希が参加しているのだが、最近岡田は映像演劇のシリーズやKAATで企画したKAATプロデュース(岡田利規×内橋和久)「『未練の幽霊と怪物』の上演の幽霊」などコロナ禍の現況を踏まえて、映像や演劇を多角的に組み合わせ新たな表現領域への取り組みが目立っているが、この「アウトラップ」も映像配信を前提とした作品でそうした試みの一環といってもいいかもしれない。

振り付けられたラッパーの身体がアウトプットする鮮烈なイメージ。
リリック&トラックが画面の外へと溢れ出す驚愕の18分。

Otagiriと岡田利規の出会いは2014年。当時SOCCERBOYとして活動していたOtagiriに岡田が振り付けた「ポストラップ」は、ステレオタイプなラッパーの身ぶりを鮮やかに刷新してみせた。本作では、Otagiriの楽曲・リリックをもとに岡田がサブテキストやイメージ図を執筆し、そこから身体の動きを振り付け。言葉から膨らませたイメージによって身体を振り付けるチェルフィッチュの方法論によってOtagiriのパフォーマンスは更なる未知の領域へと深化を遂げる。
チェルフィッチュ初の映像作品ともなる本作では、映像ディレクションMr.ChildrenなどのMVや、社会問題と向き合い作品を手がけてきた映像作家・丹下紘希を迎え、未知の音楽体験を映像作品としてリアライズ。ほぼ無音の中で収録され息づかいも生々しいOtagiriのパフォーマンスにオーバーラップするのはPUNPEEなどのトラックを手がけるDJ MAYAKUによるスペシャルトラック。パフォーマンスに合わせて新たに制作されたトラックは、Otagiriの脳内で鳴る想像上の音楽が映像を通してオーディエンスに共有されるかのように響く。リリックから生まれた豊穣なイメージがOtagiriのパフォーマンスと丹下の映像を通してラップの「外」へと溢れ出す、短編映画のような唯一無二の音楽/映像体験。

予告編


特典付き・期間限定配信 
配信期間:2020年12月23日(水)18:00〜2021年1月31日(日)23:55好評につき延長決定! 
<延長配信期間〜2月14日(日)23:55>
Vimeoオンデマンドでの販売に先駆け、特典付きの期間限定配信視聴券を販売します。
『アウトラップ』本編映像に加え、本編映像と共により深く体験いただける、贅沢な特典となっております。
特典は2月14日までの限定公開となりますので、お見逃しなく!

詳細
価格:¥1,000(税込)
販売期間:2020年12月23日(水)18:00〜2021年2月14日(日)23:55
視聴方法:peatixにて視聴券を購入
チケット購入・イベントページ:https://outrap.peatix.com

特典
1. Otagiri ニューアルバムのディスカウントコード
『アウトラップ』使用楽曲を収録した、Otagiriのニューアルバム『The Radiant』(2021年2月11日発売予定)予約購入で、¥1,934→¥967の50%オフになるディスカウントコード
プレビュー・購入:https://otagiri.bandcamp.com

2. インタビュー映像
岡田利規・Otagiriへのインタビュー映像(聞き手:丹下紘希
6年の時を経て再会した二人は『アウトラップ』へどう挑んだのか、それぞれの思いが語られている。

3.クリエーション映像
ある日のクリエーション記録からの抜粋
演出家・岡田利規はラッパー・Otagiriにどのように振り付けをしたのか。想像によって振り付ける、その実際の創作プロセスを公開。

4.サブテキスト
振付を創るために、Otagiriの詞に対して岡田利規がテキストやイメージを書いたもの
リリック・戯曲、そのどれでもない『アウトラップ』独自のサブテキスト。

※本編は販売期間終了後もご覧いただけます。(特典は1月31日までの限定販売)
※本編は公開終了後Vimeoオンデマンドにて配信予定です。(¥1,000・特典なし)

クレジット
出演:Otagiri
振付:岡田利規
映像:丹下紘希
撮影監督:安田光
音楽:DJ MAYAKU
テクニカル・コーディネート/音響:黒澤佳朗
ガファー:仲宗根理、大城幹
撮影助手:上原孝心
ロゴデザイン:牧寿次郎
広報ライティング:山﨑健太
プロデューサー:黄木多美子
プロジェクトマネージャー:佐藤瞳
プロジェクトマネージャーアシスタント:遠藤七海

企画制作:株式会社precog
ディレクター:中村茜
シニア・プロデューサー:平岡久美
チーフ・アドミニストレーター:森田結香
広報:金森香、北堀あすみ、田井中未来

主催・製作:一般社団法人チェルフィッチュ
協力:G-shelter、株式会社アンドフィルムスタジオ沖縄営業所、有限会社シー・エム・シー
助成:芸術文化振興基金助成事業