下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

笑いの演劇の旗手 群像会話劇にも秀作 劇作家・小説家の宮沢章夫氏が死去

笑いの演劇の旗手 群像会話劇にも秀作 劇作家・小説家の宮沢章夫氏が死去

笑いの演劇の旗手で群像会話劇にも優れた作品を残した劇作家・小説家の宮沢章夫氏が65歳の若さで亡くなった。今年は映画監督の青山真治氏、私小説作家の西村賢太氏ら優れた才能が若くしてこの世を去ることが続いたが、私にとっては演劇作家としても「東京大学『80年代地下文化論』講義」など日本のサブカルチャーの優れた解説者としても心服し深い影響を受けていた。突然の訃報に深い衝撃を受けた。
1980年代にラジカル・ガジベリビンバ・システム竹中直人シティボーイズいとうせいこうらが参加)を率いてシュール、ナンセンスという当時はあまりなかった先鋭的な笑いの舞台を創作、日本演劇の世界にひとつの時代を築いた。その時代については以前どこかの雑誌にケラと合わせて短い評論のようなものを書いたことがあるので、それを参照にしてほしい。下記の文章では触れていないが、ラジカルな笑いの追求者としては分野は異なるが、西のダウンタウン、東のラジカル・ガジベリンバ・システム(宮沢章夫)が東西の双璧だったと言ってもよかったと思う。
simokitazawa.hatenablog.com
ブログの過去ログを検索してみると個人的には2018年9月に早稲田小劇場どらま館で「14歳の国」を見たのが最後の観劇となった。
simokitazawa.hatenablog.com
個人的に親しいという関係ではなかったが、以前は劇場ロビーなどでお会いすると短く会話を交わすことがあったが、コロナ禍以降は宮沢だけでなく、演劇関係者と情報交換をする機会も激減して、再入院していたことも知らず突然の訃報に深く驚かされ、大きな衝撃を受けたのだ。近年の演劇上演では新訳によるベケット「ゴド―を待ちながら」のリーディング上演、青年団の俳優らとの共同作業による遊園地再生事業団こまばアゴラ劇場「子どもたちは未来のように笑う」@こまばアゴラ劇場(2016年)も上演。特に後者は青年団若手俳優とよい関係を作り、優れた舞台成果を残しつつあったから、その時以来プロジェクトが中断したままコロナ禍に入り、それきりとなってしまったのが惜しまれる。
simokitazawa.hatenablog.com
simokitazawa.hatenablog.com
京都造形芸術大学の教授として教鞭をとり、後進の育成を手掛けたのも関西にとって大きなことだった。同時期には松田正隆氏も同大学で教鞭をとり、太田省吾氏の招聘により同大学に招かれた両氏は当時の教え子たちに大きな影響を与えたのではないか。
私個人について考えると「東京大学『80年代地下文化論』講義」など日本のサブカルチャー分析にも個人的に大きな影響を受けた。

特に興味深かったのは桑原茂一が運営するピテカントロプス・エレクトス(ピテカン)を核とする東京のクラブカルチャーの同時代的回想だ。私は当時関西にいたがそこでは同じクラブカルチャーと言ってもダムタイプやドラッグクィーンのパーティーを核としたまったく毛色の違うクラブカルチャーが存在していたのだということが分かってきたからだ。そして、これはそのことはその後のサブカルやアートの流れに大きく影響を与えていると思われる。