下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ダンス×バンドのセッションによる 稀に見る傑作ダンス作品 lal banshees『幽憬』(振付・演出横山彰乃)@ シアタートラム

lal banshees『幽憬』(振付・演出横山彰乃)@ シアタートラム


ダンサー・振付家の横山彰乃の活動には主としてソロで行ってきた音楽系のアーティストとの即興要素の強いセッションと自ら率いるダンスカンパニー「lal banshees」の巧緻に構築された群舞作品があったが、今回のlal banshees『幽憬』はこれまでのそうした活動をすべて融合させた。これまでの活動からは1ランクも2ランクもレベルの高い傑作といっていいと思う。
作品の冒頭で舞台の上手下手の両サイドに黒い台があり、下手側の台上にバンドのSuiseiNoboAzが陣取り、演奏をスタートするとそれに呼応するように上手の台からダンサーが降りてきて、音に合わせるように踊り始める。前半部はSuiseiNoboAzの生み出すインストメンタルの演奏に横山彰乃がこれまでつちかってきた様々の動きの群舞を音ハメ的に連動させていく、個々の動きの強度はあるものの単純にソリッドでスタイリッシュな作品と思われていたのが、SuiseiNoboAzの演奏がライブバンドとしての激しさを増していく後半は音楽の高揚にシンクロするようにダンサーの動きも加速し震えオーバードライブしていく。ここ数年間に見た中では文句なしにトップ級のダンス作品といえる。
 不明なことに今回初めてその存在を叱咤のだが、まずSuiseiNoboAzというバンドが素晴らしい。このバンドに声を掛けて一緒に作品を作ることにした横山彰乃の慧眼は大いに評価すべきだと思う。これまでも音楽家とのセッションが多かった横山だが、おそらくこれだけ本格的なバンドとの共演は初めてなのではないかと思い動画サイトでこのバンドについて調べてみると彼らの最新アルバム「GHOST IN THE MACHINE DRUM」のリード曲である同名曲のMVで横山が踊っており、これがどのような事情で実現したのかは分からないが、ここでの出会いから今回の舞台が始まったのだとすればそれはアルタード・ステーツの内橋和久と維新派の松本雄吉の出会いによるヂャンヂャンオペラの誕生に比することが出来るかもしれない出会いと言えるのかもしれない。

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【日程】 2022/12/22(木) ~ 2022/12/25(日)
【会場】 シアタートラム
【振付・演出】横山彰乃
【音楽・出演】SuiseiNoboAz
【出演】中川賢 小山まさし 中川絢音 斎木穂乃香 中條玲 coyote 横山彰乃


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