下北沢通信

中西理の下北沢通信

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アングラ演劇から若手まで演劇世界をコラージュ 初観劇が解散公演に 中野坂上デーモンズ 第23回『 十三月の混沌 』@下北沢駅前劇場

中野坂上デーモンズ 第23回『 十三月の混沌 』@下北沢駅前劇場


中野坂上デーモンズ 第23回『 十三月の混沌 』@下北沢駅前劇場を観劇。作・演出の松森モへーは短編演劇作品「私は音楽になりたい」をしあわせ学級崩壊リーディング短編集#2に提供した。この作品にはキュイの綾門優季、ゆうめいの池田亮も戯曲を提供。非常に意欲的かつ刺激的な企画だと注目していたら、この公演を最後にしあわせ学級崩壊が劇団解散を発表。この公演とその後にキュイの公演で松森が自ら演出も手掛けて出演したひとり芝居「あなたたちを凍結させるための呪詛」を見て興味を持ち、それまで未見であった中野坂上デーモンズを観劇しようと考え、下北沢駅前劇場に出掛けたが、公演直前に中野坂上デーモンズもこの公演を限りに劇団としての活動を終えるということを初めて知ったのであった。
 期待の若手として注目していた劇団が相次ぎ解散したことを立て続けに知ったことはかなりのショックであり、劇団解散の理由はそれぞれに異なるとはいえ、こうした決断に至った理由のひとつには2年間続いたコロナ禍の影響があったことは否定できない。一方で中堅以上の規模の劇団がいまだ公演中止が続く中ではあっても、なにもなかったかのように従来通りの演劇活動を再開しつつあるのを考えるとどこかやりきれない思いを感じたのも確かなのである。
 演劇のスタイルということでいえば今回の公演だけのものか劇団固有の特徴かは不明だが、過去の公演の際に「令和のアングラ」というのをキャッチフレーズとしていたようにアングラ演劇の引用が随所に見られた。それだけではなく、過去の演劇作家の作風を引用してサンプリングしたようなスタイル。松森モヘー演じる劇作家が創作に行き詰まって、混沌とした演劇の世界を彷徨い歩くという全体構造のなかに創作された劇世界の中の登場人物がコラージュされたような仕立てになっているのだが、そこに太田省吾の劇世界を思わせるような「駅」の場面やつかこうへいの「熱海殺人事件」を彷彿とさせるチャイコフスキーが鳴り響く場面、唐十郎の劇世界を思わせる台詞回しから、しあわせ学級崩壊を思い出させた激しいEDMに合わせての唱和、ままごと「わが星」を連想させた出演者全員によるラップめいた群唱などポストゼロ年代以降の若手劇団の作品を連想させる場面も挿入されている。
 今回の解散公演の救いは中野坂道デーモンズの解散というのがあくまで劇団としての解散であり、松森モヘー氏自身は演劇活動を継続して、中野坂道デーモンズも松森モヘーの個人プロデュースユニットとしては存続することが同時に明らかになっていることだ。これなら劇団とはいえ、綾門優季が主宰しているキュイなどはもともとそうした個人プロデュースユニットの形態で存在しているわけだし、私も「あなたたちを凍結させるための呪詛」を見て
綾門優季×松森モヘーのコンビに相性のよさを感じただけに劇団としての活動の足かせがなくなった分だけかえってやりやすくなったとも思えるし、
中野坂上デーモンズとは少し味わいの違う作品もこの組み合わせでできるのではないかとの期待はかえって膨らんだのである。
 

作・演出 松森モヘー

2022.12.14 ‐ 12.20

【出演】
金子清
工藤彩加(新宿公社)
小嶋直子
つかてつお
西出結
林廉(劇想からまわりえっちゃん)
まちだまちこ(メロトゲニ)
みしゃむーそ
るい乃あゆ
ミネユキ
矢野杏子
吉成豊

安藤安按
佐藤昼寝
中尾仲良
松森モヘー