工藤俊作プロデュース プロジェクトKUTO-10「和解」@こまばアゴラ劇場
工藤俊作プロデュース プロジェクトKUTO-10「和解」@こまばアゴラ劇場を観劇。この公演は劇団●太陽族に所属していた俳優、工藤俊作によるプロデュース公演*1で小原延之の新作を文学座の松本祐子(文学座)が演出するという異色の座組みとなっている。
そとばこまち元座長の小原延之は関西ではかなり知られた存在ではあるが、作品が東京で上演される機会が限られていることもあり、東京でも知名度はまだ低い。ただ、その作品は池田小学校での連続児童殺傷事件を下敷きにしたそとばこまち「丈夫な教室 ―彼女はいかにしてハサミ男からランドセルを奪い返すことができるか―」、AI・HALLハイスクールプロデュース「鉄橋の上のエチュード」が尼崎JR脱線事故を主題としていたように実際に起こった事故・事件を基にして作品を創作することが多い。そういう意味で言えば「和解」は阪神大震災を下敷きにしているといえるだろう。
ただ、現実に起こった歴史的事件としての阪神大震災を描くということではなく、震災を機にある一家族に起こった軋轢とそこからの和解を描きだしている。
「和解」の物語とここでは書いたけれど、その対象が阪神大震災(と思われる地震)で潰れた屋根に挟まれて亡くなった長男とその時には実家から出て失踪状態にあったため不在だった父親と残された家族(母・長女・次男・次女)との間にわだかまりを巡り展開される。
前回の地震と同じような規模の大きな地震が実家のある地域(詳しくは書かれていないが、阪神間近郊?)を襲った日に実家の近所で倒れている男が見つかり、これが長年行方不明だった父親だったというところからこの物語は始まる。父親は大学で考古学の研究をしていたが、運び込まれた病院に付き添っていた女性がいたことから、この女性をどのように扱うかということを巡って、実家にいる姉妹弟の間に微妙な立場の違いから思わぬ隙間風が生じるという顚末で前半部分が進行していく。
作:小原延之 演出:松本祐子(文学座)
今の自分は振りかえってはじめて気づく過去の結果だ。あの時に別の道を選んでいれば、違う「今」があったかも知れない。どうしようもない現状を突き付けられ困惑する一家族。錯綜する個々の思いと罪悪感を抱えながら、彼らは選ばなかった過去から「もうひとつの我が家」を夢想する。工藤俊作プロデュース プロジェクトKUTO-10
1989年、劇団●太陽族に所属していた役者工藤俊作が、劇団本公演の合間に自らのプロデュースで作品づくりを始めたことがきっかけで結成された集団。俳優として演劇における視野を広げ、互いに精進することを目的に、毎回、作・演出・出演・スタッフのメンバーを変えながら、新鮮な演劇体験を観客に提供している。年に一度の活動を定期的に続け、近年ではコメディ調の作品と社会派作品を隔年で上演する趣向を取り入れて戦略的に展開している。出演
工藤俊作、久保田浩(遊気舎)、奇異保、中道裕子、浅野彰一、福重友(南河内万歳一座)、大江雅子、寒川晃(南河内万歳一座)、趙清香、趙沙良スタッフ
舞台監督:伊達真悟
舞台美術:池田ともゆき
照明プラン:池辺茜
照明オペレーター :上田耕司
音響:大西博樹
チラシイラスト:ミノティカ(土谷稔)
宣伝美術:粟根まこと
映像編集:サカイヒロト(WI’RE)
制作:岡本康子(TRASH²)
*1:現在は退団