1月のお薦め芝居(2020年)by中西理
(復刻版、えんげきのぺーじでおなじみの「お薦め芝居」を復刻)
阪神大震災から25年 高校演劇伝説の作品甦る
今月(2020年1月)のイチオシお薦め芝居はいるかHotel『破稿 銀河鉄道の夜』★★★★(15~17日、神戸アートビレッジセンター)。「破稿 銀河鉄道の夜」は今から25年前1月17日に起きた阪神大震災の翌年に神戸高校により高校演劇コンクール近畿大会で上演され、圧倒的な評価を得て全国大会でも上演され、高い評価を受けた作品。それから幾星霜の年月が経過した現在でも高校演劇におけるレジェンド的な作品として高校生らの手で上演され続けている。今回はあの震災から25年を機に神戸の地で当時のことは知らない若いキャスト(ABCの3プログラム)をオーディションで選び上演する。
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ロロ『四角い2つの窓』★★★★(1月30日~2月16日、こまばアゴラ劇場)にも注目したい。。
海岸沿いに透明な壁が建てられた。その壁を通して眺める海は、いくつもの過去が折り重なってみえるらしい。たくさんの人たちが壁のもとに集まってくる。目の見えない綱渡り師、透明人間の恋人を探す女性、窓ガラス清掃をする元役者、スノードームをつくる観光客、ミノタウロスとくだんのあいだに生まれた未来のみえないこども。「私、フチになりたいんだ。麦わら帽子のフチとか、ルパンが盗む絵画の額縁とか、コップのフチ子とか、あと、絶望のフチとか」今夜、透明な壁で物語が上演される。
ロロ版ファンタジーなのか、ロロ版SFなのか。あらすじからはボブ・ショウのSF作品 「去りにし日々、今ひとたびの幻」に出てくる光が、そこを通過するの時間がかかるガラス「スローガラス」のような設定を想起したが、ジャック・フィニー「ゲイルズバーグの春を愛す」のようなファンタジーなのかもしれない。いずれにせよ楽しみな新作だ。
死刑員制度という架空の制度が導入された世界を舞台にした問題作2本立て渡辺源四郎商店『どんとゆけ』『だけど涙が出ちゃう』★★★★(23~26日、こまばアゴラ劇場)も見逃せないだろう。
震災ということであれば「どんとゆけ」は 実は2011年に「あしたはどっちだ」という同じテーマの連作として上演されている。そして、その年の演劇ベストアクトでは次のように書いた。
2011年演劇ベストアクト
3・11がもしなかったら渡辺源四郎商店の2本立て公演「どんとゆけ」、「あしたはどっちだ」(いずれもザ・スズナリ)はもっと大々的な注目を集めて今年のベスト1の最有力候補だったかもしれない。それというのはこれは死刑制度という大きな問題に正面から取り組むために被害者家族が死刑囚を自ら処刑するという「死刑員制度」という架空の制度が導入された世界を舞台にした異色作であるとともにテレビドラマ化もされた「モリのアサガオ」でも知られる漫画家・郷田マモラ*1とのコラボレーションにより、畑澤原案の物語を舞台と漫画をほぼ同時期に発表して競作するという話題性にもこと欠かない舞台でもあったからだ。
その意味では被災者がもし気を悪くしたら申し訳ないが、この作品も“被災作品”だと思っている。今回は畑澤聖悟作「どんとゆけ」と組み合わせて、劇団所属の工藤千夏作・演出の新作「だけど涙が出ちゃう」との2本立てでの上演となった。
ダンスでは岩渕貞太×額田大志『吉祥寺ダンスLAB』★★★★(吉祥寺シアター)が注目株。劇作・音楽・演出担う額田大志が身体と向き合うダンスの第一人者ともいえる岩渕貞太とダンス作品を共同制作。どんなものが出来上がるのか本当に楽しみなコラボレーションである。
昨年は「グリークス」「水の駅」と充実の成果を上げた演出家、杉原邦生の今年最初の公演が杉原邦生『少女仮面』★★★(シアタートラム)。1969年初演、唐十郎が鈴木忠志の早稲田小劇場に書き下ろした伝説の戯曲『少女仮面』に杉原邦生と若村麻由美が時代を超えて新たに挑む。歌舞伎やギリシア悲劇の現代化に取り組んできた杉原が唐十郎の世界をどのように料理するのだろうか?
根本宗子にはいま注目の劇作家・演出家。毎月ののように精力的に演劇を上演しているがれKAATでの別冊「根本宗子」 第8号 『Whose playing that “ballerina”? そのバレリーナの公演はあの子のものじゃないのです。(English ver.)』★★★(KAAT)に注目したい。過去に上演した作品を英語版で再演する。
岡崎芸術座『ニオウノウミにて』★★★(横浜STSPOT)にも注目したい。琵琶湖で釣りをして、様々な立場の人の話を聞いて、生態系保存と治水の関係を考え、外来魚駆除大会へも行き、ブラックバスを食べ、湖岸を一周した。複雑に絡むそれぞれのトピックは立場のちがいを際立たせて、対立するか無視し合うかしか先はない、みたいな感じがして、こわかった。いまの世の中の縮図を見た気がしてしまった。琵琶湖はいつまでも見ていたいほどうつくしくて、漁師たちの住む沖島も湖岸から見た竹生島も、神秘的な雰囲気に満ちていた。能の「竹生島」をこの作品の参考にすることに決めた。生き物に内も外もあるのだろうか、人間にそれを決める権利などあるのだろうか。こわい、けれどもうつくしい琵琶湖のことを想像しながら、キャストやスタッフたちと話し合いつつ、創作する。
先月取り上げた東京都現代美術館で開催中の展覧会『ダムタイプ|アクション+リフレクション』★★★★は1月も継続中。1990年代に世界を席巻したマルチメディアパフォーマンスグループ、ダムタイプの大規模な回顧展で必見の展覧会である。12月は多忙のために出かけることができず。1月はぜひ行きたい。
ポンピドゥー・センター・メッス分館での個展(2018年)の作品群に新作を加えてバージョンアップ。古橋悌二生前のパフォーマンス《Pleasure Life》に基づく《Playback》、初演時の舞台装置の再現《pH》、「人間の条件」展(1994)と同年の舞台《S/N》による作品《LOVE/SEX/DEATH/MONEY/LIFE》や、古橋没後の3つのパフォーマンスを再構成した《MEMORANDUM OR VOYAGE》(2014) に加え、古橋悌二《LOVERS》(1994/2001、second edition、国立国際美術館所蔵)を展示し(2020 年1 月19 日まで)、卓越したサウンドデザインによる空間体験を提供する。
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お薦め芝居。とりあえずブログで展開中であるが、もし掲載可能なメディアがあればぜひ連絡をお願いしたい。
演劇・ダンスについても書いてほしいという媒体(雑誌、ネットマガジンなど)も鋭意募集中。相談はメール(simokita123@gmail.com)でお願い。ブログに書いたレビューなどを情報宣伝につかいたいという劇団があればそれも大歓迎。メール下さい。パンフの文章の依頼などもスケジュールが合えば引き受けます。新規劇団発掘にも力を入れています。招待メールなどいただければ積極的に観劇検討します。
中西