下北沢通信

中西理の下北沢通信

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音楽座「SUNDAY」@草月ホール

音楽座「SUNDAY」@草月ホール



音楽座「SUNDAY」@草月ホールを観劇。アガサ・クリスティーのノンミステリー作品『春にして君を離れ』を原作としたオリジナルミュージカルである。
クリスティー作品をミュージカルにするとして、例えばヒッチコックの映画「情婦」で有名な「検察側の証人」であるとか、これも原作のみならず舞台化された作品が有名な「そして誰もいなくなった」ではなく、一見地味にも見えるこの「春にして君を離れ」を選んだのはなぜなのだろう。少し意外に思いながら舞台を見始めたが、見ていて分かってきたのはこれはそれまで生きてきて、自分の独善的な価値観に疑問を抱いたことのなかった主人公がある出来事をきっかけに「自分は本当はどう生きるべきだったか」を考え直すといういわば「自己の魂の再生」の物語。実はこういう趣の作品は音楽座が得意とする筋立てでもあり、過去に見たいくつかの音楽座作品を思い起こすかのような感覚にとらわれたのはそういうところからで、そういう意味ではいかにも音楽座らしい作品だと感じ、この作品が俎上に上がった最初のきっかけがなんであったのかは分からないが、原作と劇の作り手が出会うべきして出会ったとも思ったのである。

原作:アガサ・クリスティー『春にして君を離れ』
Agatha Christie writing as Mary Westmacott
ABSENT IN THE SPRING
adapted for the stage by
Taro Aikawa & Wormhole Project

脚本・演出:相川タロー・ワームホールプロジェクト
出演:高野菜々、藤重政孝
振付:ワームホールプロジェクト
文化芸術パートナー:町田市
共催:(公財)広島市文化財団 アステールプラザ(広島公演)
協力:一般財団法人草月会・草月文化事業株式会社(東京公演)
株式会社キャンディープロモーション(広島公演)

製作著作・主催:ヒューマンデザイン