下北沢通信

中西理の下北沢通信

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『アガサ・クリスティー ミス・マープル  ポケットにライ麦を 』@AXNミステリー

アガサ・クリスティー ミス・マープル ポケットにライ麦を 』@AXNミステリー

CSのAXNミステリーチャンネルによるアガサ・クリスティーミス・マープルシリーズ一挙放映。コロナ感染対策で外に出られないこともあり、そして京都大学推理小説研究会時代に書いたクリスティー論を最近40年ぶりに公開*1したこともあり、クリスティーのドラマをまとめて見てみようと思った。
 ミス・マープルのテレビドラマといえばBBCが制作したジョーン・ヒクソン版の知名度が高いが、こちらは独立系のITVの制作である。シリーズ途中でマープル役がジェラルディン・マキューアンからジュリア・マッケンジーに交代しているがこの「ポケットにライ麦を」はジュリア・マッケンジーがマープル役を演じている。
 実は「ポケットにライ麦を」は英語の勉強のためとも思って、初読を原書版で読んだ記憶があり、そのせいもあってか「24羽の黒ツグミ」というマザー・グースの童謡に基づいた「見立て殺人」だという記憶ぐらいしか印象がなかったが、同じく童謡の「見立て殺人」である「そして誰もいなくなった」に比べてしまうと、インパクトは薄く、見劣りしてしまうことは否めない。実はこのテレビシリーズは「無実はさいなむ」「ゼロ時間へ」などシリーズ外のクリスティー作品を探偵役をミス・マープルに差し替えたりしているものもあるのだが、この「ポケットにライ麦を」は原作に忠実である。全部で12本あるミス・マープルもののオリジナル長編のうち「魔術の殺人 - They Do It with Mirrors」とこの「ポケットにライ麦を - A Pocket Full of Rye」が第4シーズンとなったのはプロットなどに他の傑作群と比べてやや弱さを制作陣が感じたせいかもしれないと見ていて考えた。
 原作を読み返してみないと確かなことは分からないのだが、少なくともこのドラマでは「ポケットにライ麦を」の歌が何度も繰り返されるような強調した作中演出はなく*2、そういうこともそう感じるひとつの理由といえるかもしれない。英国のミステリドラマは金田一耕助シリーズなどに代表されるような過剰といえるような演出はほとんどなくて、リアリズムに徹するようなものが多く、それは効果的なことも多いのだけれど、探偵役がポワロならば本人のキャラクターが突飛で芝居心に満ちているから、演出的には派手でなくとも、十分に魅力的になるのだが、ミス・マープルにはそういう大向うを狙うようなところはないので、下手をすると流れて終わるというようにもなりがちだ。もっとも、それは作品次第ということにもなるのだろう。


2009年9月6日(英国)

マシュー・マクファディン(ニール警部)
ヘレン・バクセンデイル(英語版)(メアリー・ダブ)
ルーシー・コウ(英語版)(パトリシア・フォーテスキュー)
プルネラ・スケイルズ(英語版)(ミセス・マッケンジー
ルパート・グレイブス(ランス・フォーテスキュー)
ラルフ・リトル(英語版)(ピックフォード巡査部長)
ウェンディ・リチャード(クランプ夫人)
ベン・マイルズ(英語版)(パーシバル・フォーテスキュー)
リズ・ホワイト(英語版)(ジェニファー・フォーテスキュー)
アンナ・マデリー(英語版)(アデル・フォーテスキュー)
ジョセフ・ビーティー(英語版)(ビビアン・デュボワ)
ケネス・クラナム(レックス・フォーテスキュー)
ハティ・モラハン(英語版)(エレイン・フォーテスキュー)
ローラ・ハドック(ミス・グロヴナー)
ケン・キャンベル(英語版)(クランプ)
エドワード・チューダー=ポール(英語版)(バーンズドーフ教授)
ポール・ブルック(英語版)(ビリングスリー)
クリス・ラーキン(英語版)(ジェラルド・ライト)
レイチェル・アトキンス(サナトリウムのシスター)
ローズ・ヘイニー(グラディス・マーティン)
ティア・コリングス(ティリー)

ジェラルディン・マキューアン版・ジュリア・マッケンジー
2004年、ジョーン・ヒクソン版に次ぐ2度目のTVドラマシリーズ『アガサ・クリスティー ミス・マープル』が、独立系のITV
*3において製作された。マープル役にはジェラルディン・マクイーワン(英語版)を起用。日本では2006年12月にNHK-BS2にて放送され、ミス・マープルの吹き替えは岸田今日子が担当した。2008年6月に放送された第2シーズンではマープルの吹き替えは草笛光子に交替した。シーズン4以降、マープル役がジュリア・マッケンジーに交代、日本語吹替えも藤田弓子に変更された。LaLa TVでシーズン1が放映。第2シーズン以降は『親指のうずき』(トミーとタペンスシリーズ)、『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』、『ゼロ時間へ』、『殺人は容易だ』、『蒼ざめた馬』など別シリーズやノンシリーズ作品の事件をミス・マープルが解決する設定に脚色し、製作している。なお、時代設定は1950年代で統一されているが、イラク戦争後の世相を反映し、第二次世界大戦の痕跡が強調されている。

アガサ・クリスティー ミス・マープル - Wikipedia

1930年:牧師館の殺人 - The Murder at the Vicarage
1942年:書斎の死体 - The Body in the Library
1943年:動く指 - The Moving Finger
1950年:予告殺人 - A Murder is Announced
1952年:魔術の殺人 - They Do It with Mirrors
1953年:ポケットにライ麦を - A Pocket Full of Rye
1957年:パディントン発4時50分 - 4.50 from Paddington
1962年:鏡は横にひび割れて - The Mirror Crack'd from Side to Side
1964年:カリブ海の秘密 - A Caribbean Mystery
1965年:バートラム・ホテルにて - At Bertram's Hotel
1971年:復讐の女神 - Nemesis
1976年:スリーピング・マーダー - Sleeping Murder

*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:ヒクソン版では冒頭で挿入曲として歌が流れた

*3:ja.wikipedia.org