Performing Arts Project『LOCUS』@テルプシコール
Performing Arts Project『LOCUS』(振付・演出・出演:宮脇有紀)@テルプシコールを観劇。宮脇有紀とアルゼンチン出身の女性ダンサーMaría de los Ángeles Paisによるデュオ作品。最近は招待で見ることができている勅使川原三郎以外のダンス作品を見る機会がすっかりなくなっており*1、ひさしぶりに見ることができたダンス・パフォーマンス作品*2であったが、最後の10分ほどの宮脇のソロ部分が素晴らしく、ダンスならではの舞台作品の魅力を存分に味わうことができた。
テレプシコールの舞台にはいわゆるモービルアートのようにも見える舞台美術(空間デザイン:山科達生)が吊り下げられており、上手側には骨のようにも見える小さなオブジェが積み重なれたように無造作に置かれている。
最初は舞台手前に宮脇が舞台背後のコンクリート打ちっ放しの壁際にはMaría がおり、いずれもあまり大きな動きはしなくて、ほぼとどまった状態で足の指先などを動かすようなパフォーマンスがしばらく続いた。会場が舞踏系のパフォーマーがよく使うテルプシコールであったこともあって、舞台美術の方向性なども鑑みて「これは舞踏系のダンスに時折ある身体をオブジェアートのように扱うほとんど動かない作品ではないか」と若干の警戒感を覚えたのだが、そうしたフェーズはしばらく続きはしたもののパフォーマーが互いに立ち上がり、今度はゆっくりと足を交互に踏み出しながら少しずつ進んでいくような動きに変化する。この段階での動きはまだまだミニマムなものではあるもの、足の踏み出し方ひとつをとっても足の指を広げるようにして、それぞれの指を表情をつけながら動かすような宮脇とバレエかモダンダンスかははっきりとは分からないけれど、西洋的なダンステクニックで訓練されたことをうかがわせるようなMaríaとでは身体の動きが紡ぎだすディティールに大きな違いが見て取れて、中盤近くではこうした身体所作の対比の構造に面白さを感じた。
ただ、その時点では宮脇という人がどういう種類のダンサー(パフォーマー)なのかはよく分からなかった。だが、同じように動いてもどちらかというと滑らかな動きに終始するようなMaríaと比べてみるとき、宮脇の時折カクカクとするような動きにある種の手癖のようなものを感じるようになってきて、「いったいこれはなんなんだろう」と若干の違和感を感じるようになった。
実はこうした違和感は「ソロ部分が素晴らしく、ダンスならではの舞台作品の魅力を存分に味わうことができた」と書いたラストの部分まで続いていく。だが、作品を見終わってかなりの時間がたつ現時点においてもそれがどのような原理に基づくものなのかははっきりとは分からなくて、ダンス批評としては無力感さえ感じている。ひとつだけ言えそうななのはこれは舞踏、モダンダンス、バレエなど既存のテクニックとは一線を画したものであり、ダンス作品を三十年以上を見てきているのだが、これに似たものはあまり見たことがないと思うほど独自性を感じたことだ*3。
ラストの宮脇のソロダンスが素晴らしかったのは単純に動きの独自性だけでない。その際の醸し出された強い表情や目力にも凄み感じさせられた。いまだに言葉で的確に描写しきれないもどかしさはあるのだが、「今見る価値があるパフォーマーのひとり」であることは間違いがなさそうだ*4。
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9/20(金)pm7:00開演
9/21(土)pm2:00/pm6:00開演
9/22(日)pm1:00/pm5:00開演
料金:¥3,500
[セット券(水性+テルプシコール)]:
¥4,000
振付・演出・出演:宮脇有紀 María de los Ángeles Pais
音・作曲:松本真結子
空間デザイン:山科達生
照明:早川誠司
ロゴ・フライヤーデザイン:鈴木健太
宣伝ヴィジュアル:山科達生
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団
アーツカウンシル東京[スタートアップ助成]
主催:Yuki Miyawaki ArtConnect