アップデイトダンスNo.105「変身」原作 カフカ (演出. 照明:勅使川原三郎)@荻窪アパラタス
アップデイトダンスNo.105「変身」原作 カフカ (演出. 照明:勅使川原三郎)@荻窪アパラタスを観劇。勅使川原三郎は出演、振り付けだけではなく、照明デザインなど舞台の空間構成も自らの手で手掛ける。
卓越したダンサー、振付家であることはもちろんだが、近年はこの地下にある小空間である荻窪アパラタスで制作した作品をもって欧州ツアーにおいて、オペラハウス規模を含む大劇場空間も含む様々な大きさの劇場での公演をひとつの作品でこなすことができるのは暗闇のなかに照明の光によって浮かび上がらせることで、自在の舞台空間を創出できるその実力によるところが大きいのではないか。
そんなわけで光と闇の魔術師とでも名付けたくなる勅使川原だが、この「変身」では一転して「闇の呪術師」とでも評したくなるようにカフカの「変身」を原作に闇の中でうごめく正体不明のものというようなイメージを提示してみたように感じた。
カフカの「変身」は「ある朝、目を覚ますと私は虫になっていた」という不条理な状況を描き出しているが、勅使川原の舞台はけっして勅使川原三郎や佐東利穂子が例えばスティーブン・バーコフ演出版でバーコフ自身がやったよう(日本では宮本亜門も演じた)にその虫になった男を形態模写的に演じてみせたりするわけではない。あるいは小野寺修二演出版「変身」のように妹ら家族の反応により、観客の目には普通に見えているものの中に「異形」を想起させるような演劇的なマジックの手法もとらない。
小説「変身」の筋立てとは直接のかかわりは持たないが、時折暗闇のなかに照らし出されるほのかな照明の光がそこにいてうごめいている恐ろしいが正体の分からないなにかを垣間見せ続けるが、その姿が露わになることはない。実際、実をいうと観客にとってはなかなか集中力を保ち続けるには困難がともなう作品であり、作品の途中で軽い睡魔に襲われる瞬間も何度かはあったということも白状しなければならないだろう。ただ、そうした白日夢に近しいような観劇体験はどこかカフカの「変身」が持つ、不気味さやわけの分からなさとどこか通底する部分があったのかもしれないとも感じた。言葉でクリアに説明できないもどかしさはあるが、これもダンスの表現領域のひとつと考えるべきなのかもしれない。
「変身」
ある朝、目を覚ますと私は虫になっていた、孤独と倦怠
の日々は強烈な限界によって明解になった、虫になって
以来、虫=自分、固い限界に生きる事が開放で、壁や固
い身体の内側に広がるどん詰まりの開放 勅使川原三郎
- 公演概要-
ogikubo 、アーティスティックコラボレーター:佐東利穂子
出演:勅使川原三郎、佐東利穂子
日程 2024年9月14日(土)ー9月23日(月)
9 月14日(土) 19:30開演
9 月15日(日) 16:00開演
9 月16日(月/祝) 16:00開演
9 月17日(火) 19:30開演
9 月18日(水) 休 演 日
9 月19日(木) 休 演 日
9 月20日(金) 19:30開演
9 月21日(土) 19:30開演
9 月22日(日) 16:00開演
9 月23日(月/祝) 16:00開演全8回公演
開演30分前より受付開始、客席開場は20分前
全席自由席