イデビアン・クルー 『バウンス』@世田谷パブリックシアター

イデビアン・クルー 『バウンス』@世田谷パブリックシアターを観劇。紹介サイトにイデビアン・クルーの3年ぶりの新作とあり、そういえば井手茂太が活動の軸足を演劇作品のダンスシーンの振り付けなどに移していることもあり、カンパニーとしての活動はしばらくなかったのだなと思ったのだが、自分のブログの方を調べてみるとそれどころの話ではなく、前に観劇したイデビアン・クルー『シカク』@にしすがも創造舎の上演が2016年だから8年も前のことだというのが分かり、驚いた。
イデビアン・クルー(井手茂太)といえば珍しいキノコ舞踊団(伊藤千枝)、レニ・バッソ(北村明子)、Batik(黒田育代)などと並んで、日本を代表するコンテンポラリーダンスのカンパニーのひとつと言っていいが、こうしたカンパニーのうち珍しいキノコ舞踊団、レニバッソが活動を休止、コンテンポラリーダンスというジャンルそのものに停滞感が漂いはじめてから、かなりの時間がたつ中で、イデビアンが活動を再開したのは注目しなければならない出来事というべきだろう。
世田谷パブリックシアターというコンテンポラリーダンスの会場としては規模の大きな劇場での公演ということで、井手がここでどんな作品を作ってくるのかについて注目したのだが、作風自体はいわゆる「井手節」とでもいうべきぐにゃぐにゃとして少しおかしみのあるムーブメントが随所に出てきて、往時と変わりないいかにもイデビアンらしい作品だった。
井手のダンスについては10数年前に大阪で開催したレクチャーで次のように解説したことがあった。
井手の振付の特徴というのはその動きにおいて演劇的な仕草性をサンプリングして取り入れ、自由につなぐような形で展開させていること。さらに多くの場合、そうした動きは群舞として展開していくわけですが、その場合もバレエのコールド・バレエのように単純なユニゾンということは少なくて、二人から数人の小グループによる異なる動きのダンスが舞台上で同時進行していくような構成が多用されます。
もうひとつの特徴はフォーサイスはそれを「脱中心的」などと称したわけなのですが、多くの作品について個別のダンサーがソロで踊る場面はありますが、バレエのように主役がいて、群舞がいるというような構造はとらないことです。(中略)コンテンポラリーダンスでも勅使河川三郎+KARASとか黒田育世+BATIKのように大抵のカンパニーでは振付家も兼ねる主催者がソロダンサーとして屹立していて、そのダンサーのソロ部分に対して残りのメンバーが群舞を踊るというソロ/群舞の対比構造があって、作品が進行していくなかで、フォーサイスやローザスのようにそうした特定の中心がない構造をとっている。
実はこうした説明は今回の 『バウンス』にもそのまま当てはまる。井手茂太健在を感じて、頼もしく感じたのである。ダンサーでは斉藤美音子、依田朋子らカンパニー旗揚げ以来のメンバーが今回の作品でも中心的な役割を果たしていたのが見られて嬉しかった。
【振付・演出】井手茂太
【出演】
斉藤美音子 宮下今日子 依田朋子 福島彩子 吉野菜々子
松之木天辺 原田悠 奥山ばらば 城俊彦 井手茂太