下北沢通信

劇団しようよ「あゆみ」@こまばアゴラ劇場

出演

門脇俊輔(ニットキャップシアター/ベビー・ピー)  金田一央紀(Hauptbahnhof)
土肥嬌也  高橋紘介  楳山蓮  御厨亮(GERO)  森直毅(劇団マルカイテ)
大原渉平  吉見拓哉(以上 劇団しようよ)
柴幸男(ままごと)
スタッフ

舞台監督:北方こだち(GEKKEN staffroom)
照明:吉田一弥(GEKKEN staffroom)
音響:森永キョロ(GEKKEN staffroom)
演出補佐:小杉茉央(劇団マルカイテ)
演出助手:渚ひろむ
宣伝美術:大原渉平
制作:植村純子  徳泉翔平  前田侑架
制作協力:飯塚なな子

 ポストゼロ年代演劇を代表する劇作家である柴幸男(ままごと)の岸田戯曲賞受賞作品「わが星」と並ぶ代表作が「あゆみ」である。初演以来、何度もほぼ同一のキャスト・演出で再演を繰り返してきた「わが星」とは異なり、こちらは毎回キャストを代え、その度に演出も変更して上演されており、畑澤聖悟率いる弘前中央高校が「弘前のあゆみ」として高校演劇コンクールで上演し、全国大会で上位に入るなど他団体による上演も珍しくない。
ままごと「あゆみ」2010年ダイジェスト

 もともと、「あゆみ」は全員高校生ぐらいの年齢の若い女優によるキャストで「あゆみ」という名前のひとりの女性が生まれてから死ぬまでの一生という長い時間を演じるという趣向の作品。ゼロ年代の演劇が平田オリザ以来のリアル志向の演劇であるのに対し、「あゆみ」は何人もの女優たちが次々とひとりの「あゆみ」を演じ継いでいくというのが演出上の特色で、1人の俳優が1人の人物を演じればそれはほぼその演じてみせた人がその人のイメージにならざるをえないわけだが、ここでは複数の人物が同じ人物を演じることで見る側の中に形成される仮想のイメージとしての「あゆみ」を観客それぞれの想像力を喚起することで生み出されていく。極端に言えばそこには観客の数だけのそれぞれの「あゆみ」が生まれるわけだが、そこが「あゆみ」という作品の魅力であった。
 とはいえ、男優だけによる上演というのは初めて。最初は奇異な印象も受けたのだが、ここまでのことを前提として考えれば実は「あゆみ」という戯曲に対してはあゆみを演じるのが全員若い女性であろうが、20歳代から30歳代の男優であろうが、演じることによって「あゆみ」のイメージを喚起させるという構造自体には何の違いもない。むしろ、女性が「あゆみ」を演じればどうしてもある程度は演じられる役のイメージは演じる俳優の見掛けや立ち居振る舞いに引っ張られるようになるが、男優が演じる場合はそういうことの度合いは少なくなるので、見る側が受け取るあるいは構築するイメージはより自由ななものになるとさえ言えるかもしれない。