下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

高谷史郎(ダムタイプ)「ST/LL」@新国立劇場

高谷史郎(ダムタイプ)「ST/LL」@新国立劇場

洗練された美の極みを見て聴く至福

【総合ディレクション】高谷史郎
【音楽】坂本龍一、原 摩利彦、南琢也
【照明】吉本有輝子
【メディア・オーサリング】古舘 健
【テキスト】アルフレッド・バーンバウム
【舞台監督】大鹿展明
【舞台技術】尾﨑 聡
【映像技術】濱 哲史
【映像・プログラミングアシスタント】白木 良
【出演】鶴田真由、薮内美佐子、平井優子、オリヴィエ・バルザリーニ


Takatani - ST/LL
ダムタイプは日本におけるメディアアートの先駆的存在であり、活動の全盛期から20年近い歳月がたったいまでもその作品群はその魅力を失ってはいない。その代表作であった「S/N」で亡くなった古橋悌二とともにその創作の中核を担ったのが映像作家の高谷史郎と音楽家の山中透。2月末に近い週末にこの2人が東西でほぼ同時にダムタイプを彷彿とさせるマルチメディアパフォーマンスを上演した。このうち、高谷史郎の総合ディレクションにより、新国立劇場で上演されたのが「ST/LL」である。ダムタイプが事実上の活動休止状態になって以降も高谷はいくつかの舞台作品を制作、上演してきたがこの作品にはパフォーマーダムタイプメンバーであった藪内美佐子、平井優子を迎え、音楽にはダムタイプメンバーの原摩利彦、ダムタイプをサポートメンバーとして支えてきたsoftpadの南琢也を迎え、ダムタイプを彷彿とさせる要素の強い舞台作品となった。さらに一連の「LIFE」シリーズなどこのところ継続的にコラボレーターとして高谷史郎とかかわってきている坂本龍一も参加している。
音楽についてはクレジットされている3人のアーティストの誰がどの部分を担当しているのかははっきりは分からない。ただ、この作品の基調色となっている静かな曲調の音楽を坂本龍一が担当したことは最近坂本が高谷と共同作業で制作したインスタレーションに提供した楽曲との類縁性を考えると間違いがなさそうだ。
ダムタイプは同じマルチメディアパフォーマンスと称されたジャンルとはいえ、作品の上演時期によって作品の傾向が変容しているのも特徴。それはほぼすべての作品が参加メンバーによる共同制作とはしていたものの、中心を担うメンバーの違いによりその方向性が変化しているからだ。
 時期別に大別すると古橋悌二、山中透の音楽を中心にライブ性を重視した「PH」「S/N」までの時期が前期。古橋が亡くなり、山中透が退いたそれ以降(後期ダムタイプ)の中心を担ったのが高谷史郎と池田亮司。ここでは池田のソリッドな音楽と高谷のシャープな映像がダムタイプの作品の美学的な規範を担った。
 ダムタイプの集団としての活動が休止になって以降、高谷は個人での活動を活発にしていくが、そこで頻繁に組むことになったアーティストが坂本龍一だ。高谷+坂本のコンビは「LIFE」のオペラとインスタレーション、2016年に初演されたこの「ST/LL」、そしてこの日も新国立劇場の隣のICCで展示されていたインスタレーション坂本龍一 with 高谷史郎|設置音楽2 IS YOUR TIME』@初台 NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]も2人を中心とした作品だ。一連の作品群はクレジットこそ、坂本龍一名義になっていたり、高谷史郎名義になっていたりするが、ダムタイプ2期が「高谷史郎×池田亮司」とするのであれば、これらは事実上、「高谷史郎×坂本龍一」による「ダムタイプ3期」と言ってもいいような作品かもしれない。その特徴は坂本龍一の音楽の静謐な美しさをビジュアライゼーションするかのように洗練された美的な世界で舞台芸術ではあるが、パフォーマーの置かれ方もきわめてオブジェ的でまるでパフォーマンスの形態をとったインスタレーションというような特質を持っているように思われた。