下北沢通信

中西理の下北沢通信

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矢内原美邦×山中透×高橋啓祐「源氏物語」@クリエイティブセンター大阪ホワイトチェンバー

矢内原美邦×山中透×高橋啓祐「源氏物語」@クリエイティブセンター大阪 「ASIA.ai - Dance in Asia 2018 -」@クリエイティブセンター大阪 (ブラックチェンバー&ホワイトチェンバー)

大阪市住之江区北加賀屋4丁目1番55号 名村造船旧大阪工場跡


off-Nibroll Presents「ASIA.ai -Dance in Asia -」第三弾!
今回は会場を大阪に移し、シンガポール、台湾、インドネシア、マレーシアから
日本のこれからを担う若い振付家も交えて開催します!
また、シンガポール国際芸術祭のディレクターでもあり、世界的にも著名な演出家オン・ケンセンと、
ニブロール矢内原美邦の共同作品『源氏物語』を関西を中心に活動するパフォーマーとともに上演します!


【日時】
2018年2月23日(fri) 19:00 24日(sat) 15:00 25日(sun) 15:00


【参加作品】

源氏物語矢内原美邦
   演出・振付:矢内原 美邦
   映像:高橋 啓祐  
音楽:山中 透  
照明:筆谷 亮也
   出演:生島 璃空、いはら みく、衛藤 桃子、重実 紗果
、炭谷 文葉、瀬戸 沙門、山辻 晴奈


会場:ホワイトチェンバー
主催:Nibroll
助成:おおさか創造千島財団、大阪市芸術活動振興事業助成金

  
『Dance in Asia 2018』

第3弾となる今回はインドネシア、マレーシア、台湾からアーティストを迎え、ニブロール高橋啓祐、スカンクがそれぞれ共同制作を行います。また、日本のこれからを担う若手振付家の作品も参加!

メラティ・スルヨダルモ(インドネシア)+ スカンク/SKANK
Melati Suryodarmo (Indonesia)

JS・ウォン(マレーシア)+ 高橋 啓祐
WONG JYH SHYONG (Malaysia)

世紀當代舞團(台北
Century Contemporary Dance Company (Taipei)

下村 唯 + 仁井 大志(日本)
Yu Shimomura + Masayuki Nii (Japan)

藤原 美加(日本)
Mika Fujiwara (Japan)

清水 彩加 + 竹内 桃子 + 青木 駿平 (日本)
Ayaka Shimizu + Momoko Takeuchi + Syunpei Aoki (Japan)


会場:ブラックチェンバー
舞台監督:サコ  照明:筆谷亮也、吉津果美
主催:off-Nibroll
制作:秋津ねを、竹内桃子
助成:おおさか創造千島財団、芸術文化振興基金
Special Thanks : ねをぱぁく、匿名劇団、ダンスカンパニーKIKIKIKIKIKI

この公演で主題として「源氏物語
*1を選んだのはもともと矢内原美邦と共同で作品を製作するはずだったオン・ケン・センの要望だったのではなかったか。作品は春夏秋冬と日本における四季をモチーフにしており、季節ごとにそれをイメージした楽曲を元ダムタイプの音楽監督を務めた山中透が提供。それに合わせて高橋啓祐(ニブロール)が映像を製作。パフォーマーが発する言語テクストとムーブメントなどの演出を矢内原美邦が担当した。
 矢内原はこれまでシェイクスピアチェーホフの現代演劇化に取り組んだことはあるが、日本の古典である「源氏物語」というのはいささか重荷だったのかもしれない。「源氏物語」には光源氏が住んでいる六条院という邸宅に春夏秋冬の「四季の庭」があり、そこに紫の上・明石の姫君(春)、花散里・夕霧(夏)、梅壺の中宮(秋)、明石の君(冬)の4人の姫君がそれぞれ暮らしている*2。今回の矢内原版「源氏物語」が四季をモチーフとしているのはこのことに基づいてはいるものの、「源氏物語」と今回の舞台には使用されている言語テキストなどを勘案してみても「四季」というモチーフを超えた強いつながりは汲み取ることはできなかった。この作品を「源氏物語」と題して上演することにはかなりの無理があるといわざるえないのではないか。
 場面ごとにも完成度にばらつきも目立った。最後のシーンに当たる「冬」のシーンは棘のような白い枝が伸びていってあたり一面を覆い尽くしていくことで冬のイメージを展開した高橋啓祐の映像、山中透の透明感のある音楽、映像、音楽が作り出した場と調和を見せるパフォーマーらのダンス的ムーブメント(矢内原美邦演出・振付)。これらがすべて融合してこれまでのニブロールや矢内原とは異なるオリジナリティーの高い、舞台空間が展開され、ここには大いに見るべき部分があった。
 ただ、一方でこの「冬」の場面と「春」「夏」「秋」との場面のビジュアルの精度の違いは舞台をみていて如実に感じられた。
 ニブロールは演劇からダンスまで様々なバージョンが作られた「ノート」が典型だが、これまでの作品においても再制作を繰り返すことで、作品の完成度を高めてきた経験がある。今回の作品については「当面その予定はない」ということだったが、山中氏とのコラボには大きな魅力を感じた。「源氏物語」という主題は放棄した方がいいのかもしれないが、「冬」のシーンを中核に再製作した作品を見てみたいと思った。
 

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*1:
「ASIA.ai - Dance in Asia 2018 」in osaka

*2:細かいことを言えば入内により去った後に別の姫が住むなど物語の進行にともない、それぞれの邸宅(庭)の住人に異動はある