下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

地点「シベリアへ!シベリアへ!シベリアへ!」@KAAT

地点「シベリアへ!シベリアへ!シベリアへ!」@KAAT

出演:安部聡子 小河原康二 石田大 窪田史恵 小林洋平 田中祐気
テキスト:アントン・チェーホフ
演出:三浦基
ドラマトゥルク:高田映介
監修:中村唯史

チェーホフ流刑地だったサハリン島までの旅に出たのは1890年のこと。未開の土地だったシベリアを横断してのこの旅は、当時はまだ命の危険が伴うもので、突然の決心に友人や家族たちは最初チェーホフ流の冗談と思ったとか。しかし、作家の決意は固く、4月から12月までの長旅が断行されました。このサハリン行きは、文学的にはなんの成果も伴わなかったという指摘がある一方で、作家・チェーホフの「重要な転機」であるという指摘もあります。どちらにせよ、チェーホフが〈四大戯曲〉を書いたのはこの旅から帰った後のことでした。
戯曲『三人姉妹』には「モスクワへ!モスクワへ!モスクワへ!」という大都会モスクワへ憧れる有名な台詞がありますが、チェーホフは東の果てを目指しました。作家の心中に燃え上がったシベリアへの思いへ寄り添いながら、中心ではなく周縁へ、曠野を抜けていく旅をしたいと思います。ぜひご同行ください!

 地点はチェーホフの4大戯曲は何度も上演してきたが今回はチェーホフの「シベリアへの旅」の舞台化。戯曲として書かれたものではないが、一人称の書簡あるいは日記のように書かれた文体はチェーホフの戯曲よりも地点の「語りの演劇」のスタイルによく合致しているかもしれない。 
 舞台は主人公(話者)であるチェーホフが馬車により移動していく場面から始まるのだが、6人の俳優が、コミカルに馬を演じながらロシアの荒野を延々と移動していくさまが語られていく。
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この舞台を見ながら思い出していたのはちょうど1月ほど前に観劇した歌舞伎座公演「三谷歌舞伎・風雲児たち」のことだ。こちらはチェーホフがシベリアに旅した1890年からさらに100年前の1791年に大黒屋光太夫がイルークーツクからペテルスブルグに向けて旅をすることが描かれていた。
チェーホフとはちょうど逆方向に旅したわけだが、こちらは舞台の前半部分のよりアラスカに近いような場所からイルクーツクに到着するまでの移動手段としては犬ぞりが使われていたのだが、移動手段としての犬ぞりと馬車はどの辺りで入れ替わるのだろうか。それとも単純に季節の違いなのだろうか。

チェーホフ全集〈12〉シベリアの旅 サハリン島 (ちくま文庫)

チェーホフ全集〈12〉シベリアの旅 サハリン島 (ちくま文庫)