下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

日本の演劇人を育てるプロジェクト 文化庁海外研修の成果公演 『まじめが肝心』@恵比寿エコー劇場

オスカー・ワイルドの傑作喜劇   日本の演劇人を育てるプロジェクト 文化庁海外研修の成果公演 『まじめが肝心』@恵比寿エコー劇場

文化庁新進芸術家海外研修制度により英国留学をしていた演出家、大澤遊による英国の作家オスカー・ワイルドのコメディー作品の上演。実はこの 『まじめが肝心 The Importance of Being Earnest 』についてはそれこそ幾星霜も昔のことになるが、大学教養の英語の授業で原文全文を購読したことがある。そのため、翻訳も読んだことはあり、実際の舞台の観劇は今回が初めてではあったが期待度はかなり高く、舞台もそれを裏切らないものであった。 
 喜劇としては軽妙で気軽に楽しめた。特に物語の中心となる若い男を演じる釆澤靖起(文学座)=ジョン(ジャック)、池岡亮介=アルジャーノンが良い。 劇団協議会のプロデュース公演であるためキャストは新劇系の劇団はもちろん小劇場劇団などからも幅広く集められてはいるが、どこかで見たことがある顔だと思ったら南河内万歳一座の荒谷清水が参加。コミカルに執事役を好演していたのに少し驚かされた。
 オスカー・ワイルドの戯曲の上演といえば日本では「サロメ」が圧倒的にポピュラーだ。私自身もこれは何度も見てはいる*1が、「サロメ」以外の作品では昨年高校演劇の全国大会で埼玉県立新座柳瀬高等学校 「Ernest!?」 オスカー・ワイルド/原作 稲葉智己/翻案、岐⾩県立⻑良高等学校 「My Name! 〜The Importance of Being Earnest〜」オスカー・ワイルド/原作 ⻑良高校演劇部/翻案何と二校が決勝大会で今回上演された「The Importance of Being Earnest」を上演するという稀有な出来事があったが、過去の上演例を見ても宝塚歌劇団が音楽劇版を数度にわたって上演したのが目立つ程度でかなり珍しいことではないかと思う。
 それはひとつにはこれが19世紀末の貴族ないし紳史階級の世界を描いたいわゆるコスチュームドプレイであり、もともとそうした世界を得意とする宝塚歌劇団ならともかく、現代を生きる我々にとってはいささか縁遠い世界であるからだろう。
 とは言え、登場人物に携帯電話を持たせたり、テロの話を会話に付け加えて無理やり舞台を現代に変更したりする翻案はどうなのだろうと思った。そんな風に小手先では作品の世界観を変えることはできないし、そもそもオスカー・ワイルドの原作自体が当時のビビッドな現代劇としてこれを構想しているようには思えない。
 ただ、どこまで意図的なものかは分からないのだが、こういう若い世代の演出家がこうした昔の西洋世界を描写する際にアニメ・漫画的なリアリズムの筆致(2・5次元的と言ってもいい)が入ってくるのが興味深いと感じた。
 もともとオスカー・ワイルドが好きだということもあるが、そういう意味でも興味深い舞台であった。

文化庁新進芸術家海外研修制度により研修を行った若手芸術家に研修成果を発表する機会を提供するという事業です。



オスカー・ワイルド
翻案/大澤遊
出演
釆澤靖起(文学座
池岡亮介
那須 凜(青年座
大川 永(イッツフォーリーズ)
井上薫
館野元彦(銅鑼)
森下まひろ
荒谷清水(南河内万歳一座

演 出

大澤遊 おおさわ・ゆう
日本大学芸術学部演劇学科卒。
演劇ユニット「空っぽ人間〈EMPTY PERSONS〉を主宰、すべての作品で構成、演出を手掛けるほか、新国立劇場『スペインの戯曲』、日韓演劇交流センター『少年Bが住む家』、劇団銅鑼『ボクの穴、彼の穴。』、世田谷パブリックシアター『ザ・シェルター』、水戸芸術館『ライフ・イン・ザ・シアター』などを演出。また『セールスマンの死』『出口なし』『図書館的人生 vol.4』『The Beauty Queen of Leenane』など、さまざまな舞台に演出補、演出助手として参加。
 平成28年文化庁新進芸術家海外研修制度の研修員としてイギリスのDerby Theatreにて1年間研修。


スタッフ
美術・衣裳:池宮城直美<H28年度派遣>
照明:鷲崎淳一郎
音響:徳久礼子<H18年度派遣>
演出助手:菅井新菜
舞台監督:渡邊 歩
宣伝美術:中島康江
アシスタントプロデューサー:松本崚汰・岸ゆりえ
プロデューサー:夏川正一

サロメ・ウィンダミア卿夫人の扇 (新潮文庫)

サロメ・ウィンダミア卿夫人の扇 (新潮文庫)

サロメ (岩波文庫)

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*1:印象に残っているのは美加理がサロメを演じたク・ナウカによる上演