下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

犬飼勝哉 短編演劇『アイランド 序』@SCOOL Live Streaming Series

犬飼勝哉 短編演劇『アイランド 序』@SCOOL Live Streaming Series

www.youtube.com
紹介ページには「架空の島国を舞台に、特殊な能力者たちがバトルを繰り広げる話を書こうとしていたので、そういう話になると思います」とあるが、短編演劇とは銘打っているけれど今回上演されたのは全編を通すとかなり長いものになりそうな話の本当に冒頭部分のいわば設定説明のような部分だけの抜粋であった。遠隔で人を殺すような特殊能力を持つ女性主人公(高澤聡美)が政府のエージェント(石渡愛)のいわば強要によって、同じく能力を持つ不穏分子の抹殺にかりだされるというのが冒頭部分の筋立てだが、ほとんどのシーンが会社の中で交わされる日常会話の短いスケッチのような場面を連ねる形で構成されている。このように短い会話場面を積み重ねて、作品をいわばブロックを組み合わせて作った構造物のように構築しているのが、犬飼勝哉の作劇の特徴でそれは今回も変わらないが、今回の作品がいつもと違うのは超能力戦争という壮大なSF的な主題を取り扱うことになることだ。果たして、こうした日常を積み木のように重ねるという手法でどこまで日常からは飛躍したような出来事を描くことができるのか。今回の冒頭部分だけではまだ計りかねる部分が多いが、全体が完成した時にどのようなものになるのかが楽しみだ。

作・演出 犬飼勝哉
出演 石渡愛、高澤聡美、矢野昌幸

日時
2月23日(火・祝)
15:00 / 19:00
ビジュアル:嵯峨ふみか
映像:日景明夫
映像スタッフ:逵真平、須賀康平
音響・制作:土屋光
企画:犬飼勝哉、土屋光(SCOOL / HEADZ)、日景明夫
協力:青年団、チーム夜営、トリコロールケーキ、(有)レトル

映画「あの頃。」@吉祥寺オデヲン

笑の内閣「高間響戯曲集刊行記念特別企画」

笑の内閣「高間響戯曲集刊行記念特別企画」

私も脚本を書き始めて15年以上経ちましたが、この度文化庁助成金が降りたので、私の戯曲集を刊行することになりました。
 
 刊行を記念した収録作品を、今週末来週末にネット上と三条木屋町のスポーツバー で一挙公開する上映会をすることになりました。各作品、出演していた人でコメンタリーをしながらみるという形をします。また、豪華ゲストを呼んだアフタートークもします(特に、女性差別する女性が主役のコメディ「名誉男性鈴子」のトークゲストに稲田朋美防衛大臣が来るのはサプライズです)。そして、助成金問題を扱った新作「助成の大学」は生上演をします。

 このご時世ですが、直接来れる方はぜひ直接来ていただきたいですし、感染が心配な方や遠方の方、当日に見るのが難しい方(それぞれ2週間後まで録画が残ります)ぜひオンライン配信で見ていただければ嬉しいです。何より、ぜひ戯曲集を購入していただけたらとても嬉しいです。戯曲集購入に関しては私に返信いただけたらお送りいたします。

 もうすでにDVDを販売していない、今回しか見れない過去の作品もありますんでぜひよろしくお願いします。会場で、配信で待ってまーす

 販売 ネット上で販売(ゆいキャスで販売 2週間アーカイブ試聴可能) 各作品1000円
 生会場 The Higubury  (京都市中京区三条木屋町下がる石屋町119)
 入場料 2000円 +1ドリンク(12時半開場ー20時まで出入り自由)

   生会場予約  https://warainonaikaku.wixsite.com/index/gikyokujoeikai

 助成の大学

 作・演出 高間響
 出演 山岡美穂 アマリリスオーヤマ
 演出補佐 夏目れみ 映像管理 竹崎博人 制作 秋津ねを 制作補佐 葛川友理 髭だるマン 由良真介 
  トークゲスト  調整中

 スケジュール
20日(土)
1.怪獣対策芝居「朝まで生ゴヅラ」上映 13時開演 コメンタリー 鍋田幸治   トーク 西マサト氏 (B級演劇王国ボンク☆ランド:国王/努力クラブ)
2.漫画アニメ規制反対芝居「非実在少女のるて ちゃん」上映 15時半開演 コメンタリー (未定)  青識亜論氏(ネット論客)
3.「助成の大学・女性版」プレ上演18時開演  トーク(出演者)
21日(日)
1.ネトウヨブコメ「ツレがウヨになりまして」上映 13時開演  コメンタリー 髭だるマン 池川タカキヨ 松田裕一郎  トーク 赤澤竜也氏(フリーライター
2.ダンス規制反対芝居「65歳からの風営法」上映 15時半開演 コメンタリー 髭だるマン   トーク 金光正年氏(元NOON経営者)
3.ジェンダー芝居「名誉男性鈴子」上映 13時開演 コメンタリー 髭だるマン 中谷和代 松田裕一郎  トーク 稲田朋美氏(衆議院議員
27日 (土)
1.原発問題芝居「超天晴!福島旅行」上映 13時開演  コメンタリー 横山清正 トーク  開沼博氏(社会学者)
2.ヤクザ に人権はあるのか?を問う芝居「ただし、ヤクザを除く」上映 15時半開演 コメンタリー横山清正  トーク 鈴木智彦氏(ライター)
3.「助成の大学・女性版」本上演 18時開演  トーク(交渉中)
28日
1.フランスの劇作家モリエール の生涯「そこまで言わんでモリエール」上映 13時開演 コメンタリー 髭だるマン  (フランス人作家と交渉中)
2.オリンピック問題芝居「東京ご臨終~インパール2020」上映 15時半開演 コメンタリー 髭だるマン 和泉聡一郎  トーク(交渉中)
3.「助成の大学・女性版」本上演 18時開演 トーク(交渉中)

 交渉中ゲストは、ツイッターHPで発表  ツイッターアカウントhttps://twitter.com/warainonaikaku HP   
https://warainonaikaku.wixsite.com/index

 また、17日22:30から事前宣伝YouTubehttp://youtu.be/Q9op8O75atE

 配信の場合の購入の仕方

  疲れた。 全部作った。 ゲストの関係で、鈴子と福島 逆にします

ゴヅラ https://twitcasting.tv/hibiki_takama/shopcart/55104
のるて https://twitcasting.tv/hibiki_takama/shopcart/55110
ツレウヨ https://twitcasting.tv/hibiki_takama/shopcart/55111
風営法 https://twitcasting.tv/hibiki_takama/shopcart/55112
鈴子 https://twitcasting.tv/hibiki_takama/shopcart/55113
福島 https://twitcasting.tv/hibiki_takama/shopcart/55116
ヤクザ https://twitcasting.tv/hibiki_takama/shopcart/55117
モリエール https://twitcasting.tv/hibiki_takama/shopcart/55119
ご臨終 https://twitcasting.tv/hibiki_takama/shopcart/55121
助成 https://twitcasting.tv/hibiki_takama/shopcart/55123
 
 ツイキャスの購入の仕方は難しいので、こちらにわかりやすく解説しています  https://warainonaikaku.wixsite.com/index/twicaspremiumhelp 。それでもわからなければ、私に問い合わせください。コンビニ決済は前日までなので、クレカがない方はすぎると見れないので

TEAM SHACHI「SHACHI Navigates Spotlight」二部@東京・豊洲PIT

TEAM SHACHI「SHACHI Navigates Spotlight」二部@東京・豊洲PIT

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昨年12月30日に開催予定であったのが、メンバー秋元帆華のコロナ感染により延期となっていた振替公演である。今回はコロナ対策もあり、ブラス隊(ブラス民)の帯同はなかったが、バンド編成のライブパフォーマンスとしてMIYA(ベース)、芳賀義彦(ギター)、Tatsuya(ドラム/Crossfaith)が迫力ある生演奏を披露した。ライブ感のあるバンド編成*1と4人の女性ボーカルからなるロックバンドのような荒々しい質感がTEAM SHACHIにはある。同じスターダストプラネットのグループでも、ももクロともエビ中ともたこ虹とも異なっている。
 さらにいえばこのグループはチームしゃちほこ時代からメンバーのパフォーマンスと一体となったフリコピをファンが全員でやるという特徴がある。モノノフ仕込みのコールが封じられたコロナ禍でもファン(タフ民)はフリコピによるダンスやクラッピングで大いに盛り上がったが、多くのアイドルグループの客席がコールを禁じられたことで、静かになってしまい、客席の熱量がステージに伝わらないところが、圧倒的な客席の熱量が発揮出来ていたのはTEAM SHACHIならではの強みだ。
 セットリストは『抱きしめてアンセム』などチームしゃちほこ時代からのキラーチューンを交えながらも『MAMA』*2『SURVIVOR SURVIVOR』、さらにはこれが客前での初披露となった新曲の『JIBUN GOTO』などTEAM SHACHIになってからの最近の楽曲を中心に展開した。
 TEAM SHACHIはチームしゃちほこ時代には黄色担当の伊藤千由李が推しであったこともあり、ももクロの次に(あるいはももクロのチケット倍率が高くはずれ続けていた時にはももクロ以上に)現場に参戦していたグループだった。2013年の大阪遠征からはじまり、幕張メッセ、2度の武道館、目標としていた名古屋・日本ガイシホール公演「TEAM SYACHIHOKO THE LIVE ROAD to 笠寺 おわりとはじまり at 日本ガイシホール」(2017年)*3には現地参加していたが、翌18年に伊藤千由李が卒業を発表したことなどをきっかけに特にTEAM SHACHIに体制変更して以降は距離を置くように*4なってしまっていた。
 そういうわけでTEAM SHACHIのパフォーマンスを生観戦したのはかなり久しぶりなことだったように思うのだが、ライブ自体は素晴らしかった。自分自身も一時期はそう思っていたし、モノノフや後輩グループのファンの一部には「全盛期の勢いはない」と思われている節もあるのだが、今回ライブを見た印象でいえば現在でもライブアイドルとしての実力はスターダストプラネットの中でも指折りの存在であることは再確認できた。
 とはいえ、この動員に関していえば飛ぶ鳥を落とす勢いだった時期と比べれば多くのファンが離れてしまったのも確かだ。そして、そういう中であえて再び武道館を目指すと話し、その第一歩としてパシフィコ横浜でのライブとTEAM SHACHI体制での初のフルアルバムを秋に発売することを発表、私たちはこれに賭けている宣言したのはムネ熱なことであった。
 個人的に涙腺崩壊しそうになったのは安藤ゆずが脱退しての再スタートで5人で歌った「START」*5を二部アンコール曲の最初の歌として歌ったことだった。さらにTEAM SHACHI曲の「Today」を歌うことで来る設立10周年の2022年に向けて新たなる決意を示したのだと思う。


TEAM SHACHI「SHACHI Navigates Spotlight」第2部 2021年2月20日 豊洲PIT セットリスト
00. Tik Tik Boom
01. MAMA
02. 雨天決行
03. AWAKE
04. 抱きしめてアンセム
05. こだま
06. BURNING FESTIVAL
07. Dreamer
08. かなた(アコースティックVer.)
09. Sweet Memories
10. JUMP MAN
11. It's New 世界
12. ピザです!
13. わたしフィーバー
14. You!
15. 眠れないナイNIGHT!
16. SURVIVOR SURVIVOR
17. Rocket Queen
18. JIBUN GOTO
<アンコール>
19. START
20. Today

【日程】

2021年2月20日(土)<振替公演>

【時間】

<1部>open 14:00 / start 14:45

<2部>open 17:15 / start 18:00

※開場・開演時間変更となっております。ご注意ください。



【会場】

東京・豊洲PIT

note.com

*1:特にドラムがパワー系のドラム演奏だったこともそうした感を強くさせた。

*2:www.youtube.com

*3:www.youtube.com

*4:ROCK IN JAPANなどのフェスでは見ていた、

*5:www.youtube.com

アメフラっシ 熱い魂の公開げいこ(Re) vsものまね 講師:みかん先生

アメフラっシ 熱い魂の公開げいこ(Re) vsものまね 講師:みかん先生

このところ「あめしゃべ」を含むアメフラっ配信系の番組で愛来の欠席が多い気がする。先日来立て続けに行っていたSHOWROOMの配信も愛来だけがやっていないし、今回の「熱い魂の公開げいこ(Re)」も愛来は欠席で、年頭の浪江女子発組合の配信では食中毒のため欠席となっていたが、ツインテールフェスも欠場。台湾向けの配信ライブには参加していたが、
「仕事のせいで欠場」もこうも続くと勘繰りたくなってしまう。もし、外部の仕事が本当ならばまだ外に出せない大きな仕事(例えば映画かドラマの収録)かもとも期待してしまうが、かなり欠席が多いこともあり少し心配になってきたのだ。ひょっとしたら私が見落としているだけで、個別の配信やブログなどは普通にやっているのだろうか。さらにこの日は小島はなちゃんがものもらいでということで眼帯をつけていたが、何か哀れをさそう風情で思わずかわいそうになってしまった。とはいえ、そのままものまねをやるとあまりにおかしいので結局笑ってしまったのだが。
live2.nicovideo.jp

しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のお台場フォーク村!第117夜「Dearest BEATLES 無観客生配信」@フジテレビNEXT

しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のお台場フォーク村!第117夜「Dearest BEATLES 無観客生配信」@フジテレビNEXT

私は若いころからのビートルズファンだ。さらに斎藤由貴の大ファンでもあり、ももクロまでは数少ない実際にライブにも行ったことがある女性アイドルでもあった。そしてSpotifyの昨年のアクセスランキングでは堂々1位だったアメフラっシから今回は鈴木萌花も出演ということになれば見る前から本当に楽しみでならない今月のフォーク村なのであった。
まず最初に残念だったのは斉藤由貴が声のコンディションが万全ではなかったことだ。もともとウィスパーボイスなどと言われるような少しハスキーなささやくような歌い方*1が彼女の特徴ではあるのだが、歌い声の語尾の部分がいつもほんの少しかすれているんじゃないかという違和感を感じたのだった。「さよなら」と「白い炎」をいずれも武部聡志のピアノによるアコースティックバージョンの新アレンジで歌った。特に「さよなら」は普段よりもテンポも落としたアレンジであったので、歌っている時はそのせいだろうかとも迷うほどの僅かな違和感ではあっのだが、歌い終わった後に話す声は風邪引きのようなかすれた声だったので、やはり万全ではなかったんだなというのが初めて確認できた。ただ、考えてみるともし他の人だったらこのぐらいコンディションが悪いと歌えないだろうと思うところを技術でこなしていたのは凄いと思った。しかし、それでも歌を聴くチャンス自体が少ない人なのでやはり万全の声で聴きたかったと思ってしまった*2
 番組の最初の3曲はこのところ、坂崎幸之助によるももクロ曲、玉井詩織によるTHE ALFEE曲、しおこうじ(坂崎幸之助玉井詩織)による外国曲というラインナップが定着した感がある。
 特に楽しみなのが外国曲。この日はサイモンとガーファンクルもカバーしたEverly Brothersの「Bye Bye Love」*3だったが、かなり、いい出来だと思う。ももクロメンバーのソロでの歌唱はほかの3人が非常に特徴的な声質、歌い方であるため、それと比べてしまうと玉井詩織は少し線が細く感じ、もの足りないと思ってしまうことが多い。ところが不思議なことにその声は誰かの声と重なると俄然魅力的に感じる。さらに加えて、相手の声をより魅力的に感じさせるという特性があり、ももクロの歌唱でもそうした特性が生かされている。だが、この日の「Bye Bye Love」は坂崎幸之助のメインボーカル、玉井詩織のバッキングボーカルなのだが、こういう組み合わせの時に魅力はむしろ生き、しおこうじはそういう意味では玉井詩織の魅力を十全に引き出すための発明だと思った*4
この日はビートルズの特集がメインディッシュで、それもあって杉真理が大人ゲストとなったが、その特集を挟み込むように杉真理の楽曲提供による2曲の新曲がいずれも初披露された。その1曲目がアメフラっシの鈴木萌花の「I'm your SINGER 」であった。鈴木萌花愛来と一緒にギターデュオ、あいらもえかとしての活動を続けてきたのだが、コロナ禍の中ではあるけれど主軸のアメフラっシの活動が軌道に乗ってきたこともあり、あいらもえかとしての活動は少なめになっていた。今は両者の活動は完全に分離されていて、アメフラっシの活動の中であいらもえか系の楽曲が披露されることはないのだが、アメフラっシはせっかく「変幻自在」と銘打っているのだから、個人的には数多くの化身の中のひとつとしてあいらもえかの楽曲も活用していくべきではないかと思っている。萌花の新曲自体はこの日はビートルズ曲への対応もあってフルバンドでの披露だったこともあろうが、「グループサウンズか?」という昭和感を感じさせるもの*5で思わず笑ってしまった。最近の最先端にアップデイトされたアメフラっシ楽曲と比べると対極的な曲想にも感じたが、アメフラっシもあいらもえかも様々なアーティストの楽曲提供を受けてており、楽曲の傾向にも幅があるのが特徴だから、こういう曲が入っているのもいいかもれない。歌詞も先輩であるももクロへの憧れをストレートに歌ったもので、正確なところはうろ覚えではあるが「あんな風にできるのはどれほどの努力をしたんだろう」などの意味合いの歌詞が入り、努力の人である萌花らしさを感じさせる*6ものだった。
 「Dearest BEATLES 無観客生配信」はアルバム1枚を収録順に歌っていくというライブ「Dear BEATLES」のコンセプトにはおよばないが、ビートルズのベスト盤である通称「赤盤」*7から坂崎幸之助が自らセレクトした10曲を続けて演奏するというものだった「All My Loving 」「A Hard Day's Night 」「I Feel Fine」 「Yesterday」 「HELP! 」「Nowhere Man」「IN My LIFE 」「Girl 」「Eleanor Rigby 」「Yellow Submarine」の10曲で、「A Hard Day's Night 」「Yesterday」 「HELP! 」のような初期の代表曲や個人的にも大好きな「Eleanor Rigby 」も含んではいるから、初めてのビートルズ特集としては悪くはないのだが、「赤盤」は「1962~1966」の副題にあるように初期楽曲から選んだものだった。
 演奏は格段に難しくなるという問題はあるけれど、私は後期の楽曲の方が好みということもあって、ないものねだりはあるけれど後期の楽曲を聴きたかった*8。さらにないものねだりをすれば今回はほとんどの曲を坂崎幸之助杉真理大野真澄が3声のコーラスで歌っていて、違ったのは玉井詩織の「All My Loving」と加藤いづみ鈴木萌花の「Girl 」、そしてドラムの清水淳がボーカルをとったリンゴ・スター曲「イエロー・サブマリン」だけだったが、せめて半分は女性メンバーもボーカルをとってほしかった*9
 とはいえ、この日のクライマックスはしおこうじ初のオリジナル曲「歌はどこへ行ったの?」の初披露であった。これはコロナ禍での思いを仮託したストレートにいい曲でもあった。終盤詩織が珍しく「この歌を引っ提げて武道館に行きましょう」と珍しく宣言した。台本にそう書いてあったかもしれないが、100%その気がなければ台本通りに読まない人なので(笑い)、この調子でオリジナル曲とレパートリーの英語曲を増やしてぜひ武道館公演を実現してほしいと思う。

セットリスト
M01:吼えろ (坂崎幸之助ももクロ)
M02:あなたの声が聞こえる 玉井詩織THE ALFEE)
M03:Bye Bye Love (坂崎幸之助玉井詩織/Everly Brothers)
M04:「さよなら」(斉藤由貴斉藤由貴)
M05:白い炎 (斉藤由貴斉藤由貴)
M06:Dont Stop the music (杉真理杉真理)

M07:最高の法則 (杉真理杉真理)
M08:I'm your SINGER (鈴木萌花鈴木萌花)
M09:All My Loving (玉井詩織Beatles)
M10:A Hard Day's Night (しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M11:I Feel Fine (しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M12:Yesterday (しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M13:HELP! (しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M14:Nowhere Man (しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M15:IN My LIFE (しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M16:Girl (加藤いづみ鈴木萌花Beatles)
M17:Eleanor Rigby (しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M18:Yellow Submarine (清水淳&しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M19:歌はどこへ行ったの? (しおこうじ&杉真理/しおこうじ)

ゲスト
杉真理
斉藤由貴
鈴木萌花

大野真澄
武部聡志

しおこうじ(玉井詩織×坂崎幸之助)

生演奏
ダウンタウンしおこうじバンド
音楽監督 宗本康兵
加藤いづみ/佐藤大剛/竹上良成/やまもとひかる//清水淳

*1:こちらはアルバム収録曲のうちこの日は歌わなかった「卒業」。
斉藤由貴「卒業 (from水響曲)」スタジオライブ(feat.武部聡志)

*2:彼女にとって大恩人である武部聡志の誕生日回であり、昨年は出られなくて手紙だけに無理を押して歌ったのではないかと推測する。

*3:
Simon & Garfunkel - Bye Bye Love

*4:この後の「All My Loving 」のように詩織がメインボーカルの時も坂崎が一緒にはもることで線の細さはかなりカバーされる。いずれにせよ一緒に歌う相手の声をつぶさないのが玉井詩織の一番の武器なのだと思う。

*5:番組中ではフィル・スペクターサウンドと表現されていた。

*6:アメフラっシでの推しは愛来なのだが、不器用だけれど努力の人である萌花のあり方はかつての「努力の天才」のことを思い出さざるをえなくなる。

*7:

*8:ただ、最後の「Yellow Submarine」へのコメントで練習を重ねなくともできるものと、詩織や萌花も参加しやすいものなどの条件を挙げていたから、それ以外の楽曲の選択にもそうしたことは考慮されていたのだろうとも思う。後期の楽曲はDMBの実力をもってすれば生演奏が可能だとは思うが、当時は再現不能と思われていた楽曲も多かった。

*9:ただ、この日はベースのやまもとひかりが風邪をこじらせて、体調不良で欠席となり、本来彼女がベースボーカルを担当するはずだった楽曲もあったはずだ。「Dear BEATLES」にはシンガーソングライター系の女性アーティストが毎年参加しており、いつか玉井詩織にも出てほしいが、実力からいって即戦力の候補者はやまもとひかりだと思う。

「踊ってみた」の始祖にして元DANCEROIDの愛川こずえがでんぱ組.incの新メンバーに

「踊ってみた」の始祖にして元DANCEROIDの愛川こずえでんぱ組.incの新メンバーに


【こずえ】ルカルカ★ナイトフィーバーを踊ってみた
 元DANCEROIDの愛川こずえでんぱ組.incの新メンバーに入るという発表があった。愛川こずえというと「踊ってみた」の始祖といってもいい伝説の人物だったのだが、その彼女がそれから10年以上もいろんな活動を続けてきて、ついにメジャーグループのメンバーになったというのは感慨深いものがあった。
 コロナ禍の自粛期間に現役アイドルをはじめいろんな人が「踊ってみた」をネットに上げていたが、実はその最初と言っていいのが愛川こずえが自宅で撮ったこの動画なのだ。私は演劇舞踊評論家として主としてコンテンポラリーダンスを対象としていたのだが、当時ヒップホップなどと並んで注目したのが「踊ってみた」と題して既存曲に自分の振付を付けて、自分で踊ったもの上げたネット動画であった。今でこそ
ももいろクローバーZをきっかけにアイドルファンにもなっているのだが、ももクロに傾倒するのが2011年以降であるから、愛川こずえの「踊ってみた」を見たのはそれより前のこと。
彼女が中心になって歌わないで踊るだけのアイドルグループ「DANCEROID」が完全にセルフプロデュースで誕生するのだが、ちょうど初音ミクによるボーカロイド(ボカロ)のブームも先んじて起こっていたことから、ボカロとDANCEROIDの映像を交互に見あさっていた記憶がある。

【DANCEROID】メグメグ☆ファイアーエンドレスナイト【踊ってみた】

DANCEROID表演 in ニコニコ大会議ツアーファイナル2Days in東京・2nd day!
 アイドルに口パクは珍しくないけれど、DANCEROIDは「歌わないで踊るだけのアイドルグループ」というのが新しくて、米国のアニメイベントに参加した初音ミクの前座として米国でも踊ったりして、ブレイク寸前までいっていたのにそこからプロデューサーのような人がついてデビューした時には普通のアイドル曲のような曲を歌っていて「これじゃただのアイドルじゃない」とがっかりした記憶があり、そこから自分の中ではフェード・アウトしていってしまったままになっていた。でんぱ組でどんなパフォーマンスをするか楽しみだし、いつかでんぱ組で「ルカルカ★ナイトフィーバー」をカバーしたのが見たい。
 昨年アップしたセルフカバー「踊ってみた」*1を発見。実家と思われる11年前と同じ部屋で踊っているのがなんか胸アツである。

悪い芝居 vol.27「今日もしんでるあいしてる」@本多劇場

悪い芝居 vol.27「今日もしんでるあいしてる」@本多劇場

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今日もしんでるあいしてる

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悪い芝居 vol.27「今日もしんでるあいしてる」本多劇場で観劇した。悪い芝居初めての本多劇場での公演。悪い芝居はこのところ池袋の東京芸術劇場を主戦場としてきたので、本多劇場での舞台はキャパ的には何の不思議もないが、それでも以前、ナイロン100℃大人計画を見てきたこの劇場で悪い芝居を見たことには若干の感慨がないわけでもなかった。
ナイロン100℃大人計画の名前を出したのは若い劇団としては珍しく、悪い芝居の作風にオリジナルの劇中音楽の多用や娯楽性の重視などこうした90年代に活動した先行劇団に似た空気感を感じるからだ。とはいえ、例えば同じようにある種の微生物により死者が復活するという物語であっても大人計画の「愛の罰」*1に出てくるのがゾンビ的な怪物なのに対して、この「今日もしんでるあいしてる」に登場するのはより不老不死に近いような存在。「ポーの一族」のバンパネラを想起させるが、吸血鬼が自律的に生存し続ける存在なのに対し、この「死者」は寄り添う生者が庇護し続けることでかろうじて存在し続ける存在であるという違いがある。とはいえ、「死者」は歳をとらないけれど、寄り添う生者は歳を経て老化しついには死に至る存在という点では吸血鬼と人間の関係に似ていなくもない。
 物語は近未来のいつか、謎のはやり病が流行している世界のことを描いている。その感染症はコロナではないが、コロナ同様に人と人の接触によって感染し、そのために今回同様にライブなどの客前での表現行為は次々と中止となり、できなくなってしまう。コロナと違うのはこのウイルスに感染した人間はそれにより死んでしまうが、ウイルスの作用により死んだままでもまるで生きているように振る舞い続けるようになる。とはいえ、しんでいるからその人は生きた人のように成長も老化もしないし、時間の経過とともに過去に経験した出来事の記憶も少しづつ失っていくのだ。
 この物語で妻(文目ゆかり)の九木儚(ココノキハカナ)がこの病で「死者」となった後も愛する妻に寄り添い守り続ける男(牧田哲也)。彼氏(内田健司)への自殺幇助の罪で女(潮みか)は刑務所に入ったが、出所したら彼は「死者」としてまだそこにいた。冒頭では「ポーの一族」のことを引き合いに出したが、より近いかもしれない設定として思い出したのはタルコフスキーの映画「惑星ソラリス」であろうか。いずれにせよ2組のカップルを中心として人間の生と死と愛することの意味を正面から問いかけるような内容となっており、主題自体は重いものであり、山崎彬がこのコロナ禍の中で人間の生死について改めて考えを巡らせた中で生まれた作品には違いないだろうと思う。
 一方では今風にいえばYoutuber集団のように集まって互いに刺激を与えあい表現活動をしていた集団が感染症の前にその活動が雲散霧消していく姿も描かれる。
 舞台中央に据えられた円柱形の枠組みに白い幕がかけられた舞台美術に映像がスクリーンのように映されたり、幕が開け閉めされることで舞台上の転換がスピーディーになされていく、演出の仕掛けが巧みだった。 今回は生出演はしていないが、すべての楽曲を提供している岡田太郎の劇中音楽も悪い芝居ならではの魅力だ。
 キャストでは悪い芝居は外部から客演で招く女優の選択が絶妙なのだが、今回はヒロインである九木儚役の文目ゆかりのキャスティングが素晴らしかった。この人を見たのはおそらく初めてで、どんな役でもこなせるような器用なタイプには到底思えないが文字通り役名の儚に似合うような儚さを体現していて忘れがたい印象を残した。全然タイプは違うのだがちょうど大人計画の「愛の罰」のことを思い起こしていたこともあり、ワンアンドオンリーの存在としては大人計画のかつてのヒロインであった新井亜樹のことを思い起こさせた。
 劇団☆新感線粟根まことの出演もこの本多劇場が初めてだった悪い芝居にとっては大きな意味があったのではないかと思った。

作・演出:山崎彬
出演:植田順平、潮みか、東直輝、香月ハル、関口きらら、南岡萌愛、山崎彬 / 牧田哲也、文目ゆかり、内田健司、キムアス、井上メテオ / 粟根まこと
2021年2月14日(日)~21日(日)
東京都 本多劇場

映画「ガメラ対バルゴン」@Youtube

映画「ガメラ対バルゴン」@Youtube

おそらく生まれて初めて映画館で見た怪獣映画。1966年公開だからおそらく現代の若者に取っては太古の昔のようなものだ。平成ガメラ三部作を見るまではこの映画が私にとってはかなり長い間最高傑作と思っていたが幼少期に見たものにゆえに記憶補正があるんじゃないかと恐れて長い間ビデオなども見てなかったのはがっかりしたくないとの無意識の敬遠もあったかもしれない。今回見ることにしたのはひさびさに映画館で「ガメラ2 レギオン襲来」を見て刺激を受けたせいがあるが、見直してみて特撮の古さなどはもちろん歴然としているものの予想以上に良く出来ているし、バルゴンが神戸と大阪で大暴れした後で、ガメラとバルゴンが戦うがバルゴンの冷凍放射の前にガメラがコチコチに冷凍されて何もできずに完敗。ガメラ不在の間に水に弱いというバルゴンを琵琶湖に沈めてしまおうと自衛隊と民間人が頑張るが結局バルゴンの前に作戦は失敗、そこに冬眠から覚めたガメラが復活。琵琶湖湖畔で再びバルゴンへの戦いを挑む。自衛隊ガメラの連携の仕方などはある意味「ガメラ2 レギオン襲来」とそっくり。というよりは「ガメラ2 レギオン襲来」の方が「ガメラ対バルゴン」を踏襲しているのではないかとも思った。
その一方で時代の違いを大きく感じたのが戦争中にニューギニアの山中に隠したオパールを探しにいって遭遇する原住民の描き方。そもそも原住民自体を全員黒塗りメイクした日本人が演じているうえに「土人」という今だったら差別用語で即アウトなパワーワードを連発しているので、「あー」と思ってしまうのだが、現地人で主人公と一緒にバルゴンの卵を追って日本にやってくる女性が若くて美人なのだが、ラストのクレジットでキャストを確認したら、江波杏子とあって驚いた。そういえば若干面影もあるような気がするがまるで別人じゃないか。かわいい……。
www.youtube.com