今年初めての西天満ギャラリー巡り。上須元徳「monochronicale」(ギャラリーwks.)、「フジイ・フランソワ展」(Oギャラリーeyes)、「堀野利久展」「伊藤誠展」(ギャラリー白)、「写真主義宣言vol.2」(シティギャラリー)、「冨田並伽写真展」(アーリーギャラリー)などを見る。
西天満周辺には画廊やギャラリーがたくさんあって、たまに仕事が終わってから舞台がはじまるまでの時間を使ってギャラリー巡りをするのだが、年末は忙しかったこともあってずいぶんひさしぶりに出かけた。
よく出かけるとしだいにコースというか回る順番も決まってきて、その時にどのくらい時間があるかによって、何ヵ所を回るかも微妙に変わってくるのだが、こういう風に徒歩で回れる範囲内に現代美術のギャラリーがいくつもあるってのはたまに行くつもりではなくて、ついでに立ち寄ったギャラリーで思わぬ面白いものに出くわすこともあるし、貴重なことだと思う。
面白かったのは「フジイ・フランソワ展」(Oギャラリーeyes)。確か1昨年にアートカレイドスコープと同時期にギャラリー・フィニーチェで開催された作品展*1に出展していてそこで作品を見ているはず。名前が変わっていたのと作品が面白かったので記憶には残っていたのだが、個展を見たのはこれが初めて。ギャラリーで配布している資料から判断すると、普段は名古屋を拠点に活動していて、絵本*2作家としての活動もしているらしい。
水墨画・大和絵など伝統的な日本画の技法をなぞりながらも、その中に今風の素材や悪意のある笑いを潜ませているのが特徴。コンセプトだけを聞くと同時期に京都で展覧会をやっている「ニッポン画」の山本太郎*3を連想させるところもあるが作品の印象はかなり違う。
源氏物語絵巻を思わせるような王朝絵図に「桃太郎」を思わせる桃を登場させた連作では最初の絵で貴族たちが並んでいる場所が次の絵ではすべて桃に差し替わっていたり(マタンゴか?)、桃を切った裂け目からどろどろの内臓のようなものが飛び出していたり、葉鶏頭の頭の部分が本当の鶏の頭部だったりとかなりスプラッタ風。山水画風の画題のなかになぜかバンビやダンボといったディズニーキャラがいたりとちょっと見、可愛らしい部分もあるが、それでもどことなく不気味さが漂っているのだ。
もうひとつ面白かったのは上須元徳「monochronicale」*4(ギャラリーwks.)。こちらは写真をもとにしてアクリル絵の具で描いた具象画である。写真を元にハイパーリアルな絵を描くというのはある種はやりなのか、いろんなところで見かけるのだが、この人のはまるで写真のようにハイパーリアルというわけでもなくて、だけど、壁とかタイルの陰などが本物そっくりに描かれているという細部へのこだわりはものすごくあって、その写真みたいなのか、そうじゃないかというのが微妙なラインであるところが面白かった。後、すべての作品がそうだというわけではないのだけれど、地下鉄を待つ人が上と下がまるで鋭い刃物で切断したかのように腰の部分で切れていて、左右にずれている「Platform」とか、水に入っている2人の男のうち1人の首がないのとか、行軍中に休憩する兵士たちを描いた第2次世界対戦中の古い記録写真を写したような絵のなかにさりげなく、現代のカップルを入れ込んだような「だまし絵」的な作品がいくつかあって、これが意表を突いているところがあって面白かった。初めての個展らしいけど、ちょっと注目してもいい作家じゃないかと思った。