下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ポツドール「夢の城」のレビューhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20060305を執筆。

 ポツドール「夢の城」をやっと執筆した。先月は舞台の当たり月でこのほかにも演劇だけでもシベリア少女鉄道五反田団(いずれも近く関西の公演がある)、2月にはなるが事実上の旗揚げ公演でもあった渡辺源四郎商店、ひさびさ再演の弘前劇場「職員室の午後」、公演自体がひさびさだったロマンチカとレビューを書かなくちゃいけないと考えている舞台が山積なのだが、なかなか思うにまかせない。もちろん、それ以外にダンスの公演もある。
 来週もけっこういろんな公演を見る予定なので、書かなきゃいけない公演はたまっていくばかりで思うにまかせないが、私の場合1本書くのにもけっこう時間がかかるということもあって、どしたらいいかなという感じなのである。それでも、昨日のチェルフィッチュに引き続き、ポツドールのレビューを仕上げたのでちょっと息はついているところだ。
 観劇の方では最近、関西の演劇の舞台をなかなか見にいけてないというジレンマもあって少し考えてしまっている。実は「あの人は関西の演劇には興味はないんだ。所詮、関西の人じゃないから」と言っている人がいるという話を人づてに最近聞いて、がっかりしたというか、ひどく落ち込んでしまったということがあったのだが、今年に入って観劇した舞台を見直して確認してみたら、ダンスはともかく演劇に関しては実際にすごく数が減っていることに気がついて愕然としてしまい、そんな風に思われても仕方ないかと思ってしまったのだ。
 そうこうしていたら、私が関西演劇に対する評価としては免罪符のようにここ数年、関西イチオシの劇団はここだといい続けてきたクロムモリブデンがサイトhttp://crome.jp/でオフィスを東京に移転すると発表しているしなあ。どちらかというと関西の演劇を見にいけてないのはその分、関西での観劇がダンスにシフトしてしまっているというのもあるのだけれど、そのなかには関西とか東京とかいう地域性と関係なく、現在の私にとってはつまらない(かもしれない)ダンスを見に行くリスクはおかせても、つまらない(かもしれない)演劇を見に行くのは苦痛であるということがある。
 そして、考えて気がついたのはダンスではつまらなかった(と思った)時にそれがなぜそうだったのかを話し合える知り合いが関西でもいるのだけれど、演劇には関西では完全な関係者以外の知人が少なくなってきていて、つまらないという苦痛をかかえたままとぼとぼと家路に急ぐことが多く、かといって本当につまらないと思った時にはその当該の舞台の関係者に声をかける気もしないので、全然知り合いが増えなくて、そのせいでまだ見たことがない劇団などでどこが面白いのかという情報もなかなか得られないという悪循環があるような気がしている。もう少し言えば以前には情報交換していた関西の知人も皆、寄る年波には勝てず、観劇量が減っているうえに見ているのは昔から付き合いのある古手の劇団ばかりでしだいにだれからも情報がえられなくなっているという問題もある(笑い)。
 もっともそれは一概に人のせいには出来ず、一番の問題は私の体力・気力が衰えて、つまらない芝居を見てしまった時の心身ともの消耗に耐えられなくなっていて、それでしだいに無難なものをまず選択するということになっていることがあるだろう。
 以前の経験則からしても、あまり評判になっていない知名度の低い集団のなかからこれはというものを見出すためにはその数倍、あるいはもっと極端に言えば十数倍いやもっと多い駄作の山と遭遇する勇気が必要なのである。
 ネットの情報というのももちろんあるのだけれど、最近は演劇としての新しさや確信犯としての悪意がないような普通に面白いという舞台を体質的に受け付けなくなっているからなあ。そうか、それって以前と比べて演劇自体が好きなわけじゃないってことかもしれない(
(笑い)。
 しかし、もとはといえばこのサイトの元になるサイト「下北沢通信」を始めた大きな動機のひとつにはそこにいて時間・空間を共有しないと分からないという演劇というメディアの特殊性をかんがみて、東京の人に知らない関西の舞台を、関西の人には知らない東京の舞台を紹介して、いつか旅公演などで見られる機会がえられたときにぜひ見にいってもらうためのきっかけを作りたい、ということがあったのだ。だから、東京にいた時は関西に、現在は東京に遠征して、舞台を見て、それぞれのレビューをサイトに書いてきた*1。だから、現在の時点で東京の舞台の紹介が多いのはたまたま私の感性に引っかかる集団が東京の方が多いというだけで、例えば「下北沢通信」をはじめたころ*2は完全に逆だったのである。
 その意味では今年のはじめに決意したのはこれまで見てない関西の若手劇団のなかから、ぜひとも私を震撼させるようなアンファンテリブルを見つけたいということだったのだが……。

*1:もちろん、一義的には自分が見たいからなのは言うまでもない

*2:遊気舎、惑星ピスタチオ、MONO、時空劇場、桃園会、上海太郎舞踏公司、犬の事ム所、クロムモリブデン、MOP、鈴江俊郎、劇団太陽族といった当時注目の集団を見るために関西へたびたび遠征を余儀なくされていた