下北沢通信

中西理の下北沢通信

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城戸みゆき*1個展「ひかりのさす箱」

 城戸みゆき個展「ひかりのさす箱」(ギャラリーはねうさぎ)*1を見る。

徳島県神山町でのアーティスト・イン・レジデンス(KAIR)*2によって製作された新作6点を展示。実はこの人とは作品を見る前に別のところですでに出会ったことがあって、つまり知り合いであったのだが、そういうことを抜きにしても面白い作品を作る人だと思っている。特に一昨年末にギャラリーバー「フィネガンズウェイク」のクロージング展覧会に持ってきていたのが、今回と同じシリーズの作品群で、一見したところ上のフライヤーの右の写真のようなちょっと可愛らしい家の形のオブジェなのだが、驚かされたのはこのオブジェにはところどころ穴が開いているうえに側面にレンズのついた覗き穴のようなものがついていて、ここから覗き込むと中には細密に作られた細工もののようなミニチュアの仕掛けが丁寧に作られていて、いわば「覗きからくり」の現代版といってもいいかもしれない。なかの仕掛けが動いたりするわけではないが、レンズの通してみた時に外側の穴による採光によって、内部のオブジェにあたる微妙な影のでき方とそれぞれの配置により、実際以上の遠近感(奥行き)が感じられて、まるで小宇宙を覗き込んでいるような面白さがあるのだ。
 以前に見たものでは森のなかにキノコがいっぱい生えていたりとちょっと不思議の国のアリスなどを連想さるようなメルヘンチックなものが多かったのだが、今回は外側の家も中身もアーティスト・イン・レジデンスした神山町からイメージした印象を生かしながら作られているせいか、日本の昔話にでてきそうな祠のような細工などちょっと和風のイメージがあったりして、それがまた面白かった。