下北沢通信

中西理の下北沢通信

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居城純子個展「入れ子の庭」

 居城純子個展「入れ子の庭」*1大阪府立現代美術センター)を見る。
昨年のVOCA展でVOCA奨励賞を受賞、今年の初めには大阪市の「咲くやこの花賞」*2も受賞した注目の現代美術作家、居城純子の個展である。以前ギャラリーでの個展を見た感想*3で、「この人は大きな作品の方が本来の持ち味がより発揮できるのじゃないだろうか。そういう意味で今度はもう少し大きな会場での展示を見てみたいと思った」と書いたのだが、今回はその通りの広い空間での展示。現代美術作家とは書いたがこの人は基本的には画家だと思うので、こういうホワイトキューブの無機的な大空間でどのような展示をするのかと思ったが、今回は単に絵画を展示するだけではなくて、映像作品やインスタレーションを組み合わせた複合的な展示となっており、そこが面白かった。
 今回の展示でのメーンとなったのはアメリカ、チャールストンでのレジデンスした経験から製作した「N45.35.54 W50.04.71」という作品である。画面の一部をテープなどを貼った上から描き、完成後に覆った部分を剥がすというマスキングを使っているのはこれまでの彼女の作品で多用された手法ではあるのだが、今回は3枚組のキャンバスに描かれた壁一面に近く描かれた巨大な絵画(194×584cm剥がした画面の一部を床に並べて、そこにミニチュアの人物や動物たちを配置することで、部屋全体をパノラマ的に使ったインスタレーション作品とした。
 これは今回初めての試みだったようなのだが、これまでの彼女の絵画作品と共通する絵画の一部を剥ぎ取ることでそこに生まれる余白の美学を生かすとともに、それを絵画の手前に配置されたミニチュアと対比させることで、極小の空間に宇宙(世界)を体現させるような日本の庭園(石庭)などを彷彿とさせるミクロコスモスとマクロコスモスの照応を感じさせるような東洋的な美学を感じさせるところがこのインスタレーションにはあった。
線香で穴をあけてそれで絵を描いたものをコマどりして、アニメにした映像作品も登場する動物キャラが可愛らしくてなかなかよかった。
 
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