下北沢通信

中西理の下北沢通信

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「三つの個展 伊藤存×今村源×須田悦弘」@国立国際美術館

「三つの個展 伊藤存×今村源×須田悦弘国立国際美術館)を見る。
 最終日(18日)は東京に行って砂連尾理+寺田みさこのダンスを見る予定なんで、スケジュール的に最後のチャンスに追い込まれていた国立国際美術館の展覧会なんとか滑りこみでぎりぎり見ることができた。始まる前は関西ではひさびさの現代美術作家の大規模な個展だということですごく楽しみにしていたのにまだやってるからと手をこまぬいているうちに結局、こんなことに(笑い)。おかげでこの日、芝居の前に見る予定だったライブをはじめ、予定をすべてキャンセル。内容的には見逃していたら悔やまれたと思われるものだったので、まあ仕方ないか。
 いずれも美術館をはじめとする大規模な企画展ではその作品を見たことはある作家ばかりではあるが、こういう風に大空間を使った個展という形で見てみると少し印象は異なる。特に面白かったのは須田悦弘。この人の場合、大規模な企画展(例えば横浜トリエンナーレが好例)だとかならず小さな作品が非常に分かりにくいところに展示されているというのがあって、今回のように4点と作品数は少ないのだが、それぞれにホワイトボードで区切られた展示スペースで見ると印象がかなり違い、変な言い方になるがちゃんと美術作品っぽく見えるのが面白い。しかもそれぞれの作品が単に本物そっくりの植物をフェイクとして作ったということでなく、造形的にも考え抜かれたうえで作られたのがよく分かる*1
 そこが面白かったのではあるが、本来のコンセプト的に言えばいつものまるでそこに生えているようにあるというのとは明らかに違うホワイトキューブのなかに閉じ込められた人工物のような展示方法はどうなんだろうと思わせられたところもあり、美術館というものの制度性などということについて考えさせられた。
 伊藤存は評価の高い作家だが、刺繍で描かれた絵画(平面)作品のよさというのはこれまでもそう思っていたがどこがいいのかピンとこないとこるがある。そのなかでマジックミラーを使った映像インスタレーションがすごく面白かったのだけれど、時間があまりなくて、全部の作品が見られなかったのが残念だった。
 今回の展示に加え、Oギャラリーeyesでの二人展、さらには伊丹市立美術館でのこちらは正真正銘の個展と秋の関西美術界を席巻の感もある今村源。この人の作品は六本木クロッシング森美術館で見た時には思わず笑ってしまったほどミニマルで、どうなんだろうと思ったりもしたのだが、どことなくとぼけたところもあるそのテイストがけっこう好き。しかし、最近のように例えば森村泰昌や藤本由紀夫に続く、関西現代美術界の雄というような扱いになってくると*2、「本当にそうか」という疑問も感じないでもない。いずれにせよ、伊丹市立美術館での個展はますます見逃せないと思った。こちらの方は追い詰められることのないように早めにいくことにしたい*3

*1:いずれも美しいがとくに蓮の作品はさりげなくも凄いと思った

*2:それともこれは展覧会が偶然重なっただけで、そういう扱いというのは気のせいか(笑い)

*3:もう始まっているのであるが