下北沢通信

中西理の下北沢通信

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弘前劇場「休憩室」@シアターグリーン

弘前劇場「休憩室」シアターグリーン)を観る。

〜物語〜

地方(弘前)の公立高校の職員室とそれに隣接する休憩室。体育祭の2日目。どうということのない一日の高校の教師たちの日常をリアルタイムに描写していくことで、人間関係に潜むドラマとその背後にある現代的な逃避の構造を浮かび上がらせていく。教師という職業と個人の存在との軋轢から逃避する先生の中に、職人気質のパン屋、成長する高校生たち、中国人の妻が静かに語り始める。この日々をどのように生きて死んでゆくのかを。 (’97年初演)
出演 福士賢治 永井浩仁 山田百次 濱野有希 青海衣央里 工藤早希子 鳴海まりか 林久志 平塚麻似子 乗田夏子 小笠原真理子 木村元香 木村くに 田邊克彦 柴山大樹
作・演出 長谷川孝治*1
舞台監督 野村眞仁
照明 中村昭一郎
舞台美術 鈴木徳人
音響 林久志
装置 鈴木徳人
宣伝美術 デザイン工房エスパス
制作 弘前劇場

 97年の初演も見ている。この時は青年団からの山内健司、安部聡子(現在は地点所属)をはじめ、外部の俳優を客演に招いてのプロデュース公演での上演だったという記憶がある。それから11年の歳月をへてほぼ劇団員だけの手によってこの作品を再演したのには「弘前劇場、健在なり」を宣言したようにも思われた。もっとも、16人ものキャストのなかで、初演に出演していた俳優は福士賢治、永井浩仁、山田百次の3人だけ。再演とはいえ、永井、山田は初演とは配役が違うから、ほとんど新キャストに近い配役での再演となった。それ以上に驚かされたのは前回公演「檸檬/蜜柑」が体調不良で見られなかったせいもあり、劇団員の中にもつい最近に入団したと思われる新顔が半数近くいたのだが、それでもこの劇団特有のカラーがしっかりと出ていたのはプロデュース公演はやりの昨今において「劇団において引き継がれていくものとはなにか」ということを考えさせられた。
 ただ、そういう中で、旗揚げから30年にもなり、地方劇団としては相当な老舗の部類にも入るこの劇団がその伝統を次世代に受け継ぐことができていることには2年前の「職員室の午後」の再演の際のレビュー*2にも書いたのだけれど、今回の舞台ではただひとり初演と同じ配役を演じた福士賢治の抜群の存在感によるところが大きい。