下北沢通信

中西理の下北沢通信

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山下残「そこに書いてある」@スパイラルホール

構成・演出・振付 山下残
出演 ハン・サンリュル、ホ・ヒョソン、ユン・ボエ、山下残、ジェロク・パク、渡辺智江、李周伊、
日本ろう者劇団、大橋ひろえ、手話パフォーマーRIMI
会場 スパイラルホール

山下残が2002年に初演し2008年3月に再演*1した代表作「そこに書いてある」を今度は韓国のダンサーらをキャストに加えて、6年ぶりに上演した。
 来場者全員に100ページにおよぶ冊子が配布され、観客はそれを1枚1枚めくりながら作品が進行していく。2002年にアイホールで上演された「そこに書いてある」を新キャストによりリメイクしたのが、「It is written there」である。山下残は「言葉」で構成されるダンスのテクストを追求し、「言葉」と「ダンス」の新たな関係性を模索してきた。その実験の結果がいずれもアイホールの“Take a chance project”で上演された三部作(「そこに書いてある」「透明人間」「せき」)なのだが、なかでもそうした作風の原点とでもいえそうなのが「そこに書いてある」であった。この作品は冊子(書かれた言葉)から動き(=ダンス)が立ち上がっていく、それを過程も含めて見せてしまおうというもので、ダンサーは舞台上で冊子のなかに書かれていることを身体を使って表現していく。舞台上に登場した男(山下残)の指示で私たちは分厚い冊子の表紙をめくるが最初のページは右上の隅に小さく「99」の数字が記されただけの白紙だ。もう一枚めくると次は同様に「98」の数字だけが記されている。同じ作業を繰り返し、「95」まで来ると今度は大きな文字で「まもなく開演 We will start soon.」の文字が日本語・英語対訳の形で記されており、「94」は再び白紙。しばらく、白紙が続いた後に「90」で「準備OK We are ready.」となり「89」の「開演 START」で舞台は始まる。最初、しばらく「トンネル tunnel」「橋 bridge」「揺れる shake」「倒れる fall down」「船 ship」「大洪水 ship」など単語の羅列が続き、それぞれの場面について例えば「トンネル tunnel」では大きく足を左右に広げたパフォーマーが正面を向いて立って、2本の足の股間によってトンネル状の形を作る、というようにそれぞれの提示された言葉と対応する動きないしポーズを舞台上で見せていく。
以上(斜め書きの部分)は実は今回のものではなく、2008年版のレビュー*2をほぼ原文まま引用したものだ。だが、この部分の記述は今回の公演でもほぼそのまま該当する。この作品には実は今回の上演ではいくつか大きな変更がほどこされたが基本的なコンセプトの部分では変更はない。