下北沢通信

中西理の下北沢通信

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完全版マハーバーラタ 愛の章@なかのスペースゼロ

完全版マハーバーラタ 愛の章@なかのスペースゼロ

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インド古代叙事詩マハーバーラタ*1の 全編舞台作品化計画。 小池博史ブリッジプロジェクトが2013年から2020年までの8カ年計画で臨む、 インド古代叙事詩マハーバーラタ」の全編舞台作品化計画。
 「マハーバーラタ」全編を3時間前後編の合計6時間の上演時間で完全上演しようという試みだが、アジアの複数の国からそれぞれの地域での民族舞踊の担い手を中心に多国籍でのキャスティング。国際共同制作がコロナ禍で次々と中止、あるいは日本国内のパフォーマーのみの上演に縮小していくところが、多い中で無事上演にこぎつけた関係者の努力は特筆すべきことであったと思う。
 多国籍キャストによる舞台ということもあって、舞台上では様々な言語が飛び交うが時おり舞台下手側の電光掲示モニターにそれぞれの場面の概要などが映されはするのだが、逐語訳的な翻訳はない。
 舞台が始まる前に「翻訳はないけれど、自由に受け取って楽しんでほしい」というような注釈がパフォーマーによってなされるのだが、「マハーバーラタ」にそれほど通じてない身の私としては物語の筋立てを汲み取るのはかなり困難であり、それに加えて意識的にそうしているのかもしれないが、日本語の発話をしているパフォーマーの語彙が非常に聞き取りにくいこともあって*2どうしてもフラストレーションがたまることになった。個々のパフォーマーによる身体表現のプレゼンス自体は汎アジア的な神話性を感じさせる「マハーバーラタ」の原テキストとも相まって、刺激的な舞台に仕上がっていただけにもう少し場となるようなとなるような場面解説がうまい具合に入ればと思った。それというのは実はこの前半の最後の部分はちょうどSPACが上演してアビニョンなどで好評を得た「マハーバーラタ」で取り上げた部分であり、ここだけは筋立てや人物関係が分かっていたので格段に分かりやすく感じ普通に楽しむことができたからだ*3。宮城聰は「マハーバーラタ戦記」と題し、この物語を歌舞伎にもしている。*4「嵐の章」も見てみないとはっきりしたことはいえないが、こちらの方が物語上の共通点は多かったかもしれない。

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スタッフ・出演者
出演:リー スイキョン(マレーシア/舞踏)、小谷野哲郎(バリ舞踊)、パムンカス ダナン(インドネシア/ジャワ舞踊)、カンパ ロンナロオン(タイ/タイ舞踊)、川満香多(琉球舞踊)、プルノモ スルヨ(インドネシア/ジャワ舞踊・エアリアル) 、土屋悠太郎(タイ舞踊)、シヌンヌグロホ ヘルマワン(インドネシア/ジャワ古典)、ムーンムーン シン(インド/俳優・インド舞踊)、福島梓(コンテンポラリーダンス・俳優)、ウェウダオ シリスーク(タイ/タイ舞踊)、今井尋也(能役者)、川野誠一(俳優、狂言師
演奏: 下町兄弟(パーカッション・ラップ)、今井尋也 (小鼓・掛声・能管・篠笛・鳴物)、Taku Hosokawa(唄三線・笛・胡弓)
美術:栗林隆、ティモテアス アンガワン クスノ(インドネシア)、フィロス カーン(インド)、ARS マネジメント(インドネシア
衣装: 浜井弘治、アティンナ リズキアナ (インドネシア
音楽:アリエンドラ イェヌ(インドネシア)、チャンドラン ベヤトゥンマル(インド)、藤井健介、下町兄弟
映像:飯名尚人
アニメーション:青山健一
仮面:イ ワヤン タングー(インドネシア)、イ マデ スティアルカ(インドネシア
小道具:森聖一郎、五十嵐彩乃
宣伝美術:葛西薫、安藤隆、伊比由理恵、安達祐貴

Director: Hiroshi Koike
Cast: Lee Swee Keong (Malaysia), Waewdao Sirisook (Thai), Ronnarong Khampha (Thai), Suryo Purnomo (Indonesia), Danang Pamungkas (Indonesia), Hermawan Sinung Nugroho (Indonesia) , Moon Moon Singh (India), Koyano Tetsuro (Japan), Kota Kawamitsu (Okinawa, Japan), Azusa Fukushima (Japan), Jinya Imai (Japan), Seiichi Kawano (Japan)
Musicians: Shitamachi Kyodai (Percussion, rap), Jinya Imai (Kozutsumi, noh singing, nohkan flute, shinobue flute, percussion), Taku Hosokawa (Uta sanshin, flute, kokyu)
Set Design: Takashi Kuribayashi, Timoteus Anggawan Kusno (Indonesia), Firos Khan (India), Agung Kurniawan (Indonesia)
Costume: Koji Hamai, Atinna Rizquiana (Indonesia), Mandakini Goswami (India)
Composers: Yennu Ariendra (Indonesia), Chandran Veyattummal (India), Kensuke Fujii, Shitamachi Kyodai
Videography: Naoto Iina
Animation: Kenichi Aoyama
Masks: I Wayan Tangguh (Indonesia), I Made Sutiarka (Indonesia)
Props: Seiichiro Mori, Ayano Igarashi, ARS Management(Indonesia)
Lighting Design: Mayumi Uekawa
Sound: Shuichi Fukazawa
Assistant Director: Ayako Araki, Yuka Koyama, Misa Baba

Introductory Video - What is The Mahabharata / 完全版マハーバーラタ とは?
Filmed and Edited by Kazuhiro Shirao / 撮影・編集 白尾一博

*1:kikh.com

*2:違うかもしれないが、琉球なまり?

*3:「愛の章」を見終わった時点ではこのように感じたのだが、実際には誤解があったようだ。というのはSPACが上演したのは「ナラ王の物語」という本編中に挿入された劇中劇的エピソードで、今回上演された本編とは呼応している場面はあるが、今回の舞台には含まれていないエピソードだったらしことが、後に分かったからだ。

*4:simokitazawa.hatenablog.com