下北沢通信

中西理の下北沢通信

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「第8回 AKB48紅白対抗歌合戦」ライブ・ビューイング@イオンシネマ多摩センター

「第8回 AKB48紅白対抗歌合戦」ライブ・ビューイングイオンシネマ多摩センター

 演出のきくちPとAKB48グループの運営側(特に秋元氏)にどのようなやり取りがあって今回のような着地点になったのか?それが知りたくなるような内容であった。それほど同じきくち演出ながら昨年のAKB紅白とは様変わりした内容であった。とはいえ、今年も全曲を生演奏、生歌唱で披露というのは譲ることなく堅持されており、ここがこの人の最終防衛線というか、1丁目1番地なんだというのがよく分かった。
今回披露された楽曲はほぼすべてAKB48グループの楽曲で前年のようなモーニング娘。やスタダ、Negiccoなどの他グループからのアイドルの参加や通常楽曲を歌うようなコラボ企画も一切なかった。ライバル関係にあるアイドルはともかく、ゲストがまったくなかったのは昨年激しい拒絶反応がAKBファンのみではなく、モー娘。やスタダのファンからもあったことを配慮した可能性もなくはないが、ここまで「何もない」というのはAKB(つまり秋元氏)から「AKBでやって欲しい」という意向があったのかもと推測せざるえない部分もある。もっとも昨年はきくちPとしても最近のAKBのことをあまり知らないという事情もあり、リサーチはしたもののGFやフォーク村の「いつもの」フォーマットを活用してああいう風に作らざるをえなかった部分もあった。今年はあえて運営側の要求に受けてたったうえで、唯々諾々と従うというよりは十分な準備のもとに「そういうことならこういう風にも作れますよ」というアピールだったのではないかと思う。
 秋元陣営がきくちPをももクロから奪っていこうとしているというようなうがった見方をする向きがモノノフの一部にあるようだが、おそらくきくちPは以前からAKBにもスタダにもハロプロにも全方位外交だし、やはりFNSでの口パク批判でぎぐしゃぐがあったとの噂もあるし、今年に関しては全曲を生演奏、生歌唱で披露という条件を相手がのめば譲れるところは譲るということだったのじゃないかと思う。
 むしろ、秋元氏側の側でもスタジアム級の会場でのライブでパフォーマンスのクオリティでももクロに完敗したことを認めざるをえなかったからではないか。メンバーの歌唱力の向上ということの重要性というのを感じざるえない局面が生まれてきていて、きくちPへの接近もそれを痛感せざるえないからではないかとも思っている。
 その意味ではフォーク村じゃなくて「ガチンコスターダストプラネット」のAKB版をどこかで始める可能性はあるだろうとも思っている。グループ内での歌うま決定戦のようなことを最近始めたが、これは「ガチンコ」のような育成企画と組み合わせてこそより効果が上がると思うからだ。
 全員グループ内とは言っていたものの実はガチンコ☆だけは出てくる可能性はあるんじゃないかと思って待っていたのだけれど、結局それもなかった。ところが、最後にじゃんけん選抜の上位3グループの楽曲披露のところで1位は優勝のごほうびのオリジナル楽曲を披露とのコメントの後、ほかの2グループのうちの1つは今回のライブでは唯一のカバー曲をやるといって歌われたのがなんとガチンコ☆の楽曲「もっと、きっと。」、しかもLVでは「作詞坂本愛玲菜 」のテロップが流れるなかでの坂本自身によるパフォーマンスだった。ここに私はきくちPの意地を見た。