下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

ぺぺぺの会「みたかの「ぺ」公演 『9.807』」@三鷹SCOOL

ぺぺぺの会「みたかの「ぺ」公演『9.807』」@三鷹SCOOL

f:id:simokitazawa:20191006195848j:plain
 若手劇団としては珍しい「語りの演劇」をはっきりと志向した劇団といえるだろう。そうした挑戦を敢えてするということ自体に興味を引かれるし、テキストが古典戯曲とかではなくて、会話劇でもなく、演出家である宮澤大和オリジナルの詩的な散文であるというのも独自性(オリジナリティー)の高さを感じさせた。
 ただ、実際の上演を見る限りはまだまだ道半ばといわざるをえない。この種の「語りの演劇」SCOTにせよ、SPACにせよ、地点にせよ、どのように朗唱やフレージングの技術を活用するのかが決定的に重要なのだが、残念ながら現在のこの集団には今のところそれが欠落している。一般向けでもないし、正直言うといま薦めると「なんでこんなものを」などと怒り出す人が出てもおかしくないのかもしれない。
 SCOT、SPAC、地点と3つの劇団の実例を出したが、共通する技術もあるとしてもそれぞれが異なるセリフ回しのスタイルを確立しており、かなり長い時間をかけたうえでの継続的な鍛錬によってのみ、その独自性は確立されるものだ。作・演出の宮澤大和に聞いてみたところ、ぺぺぺの会は設立されてまだ1年足らずということで、今の段階でこうした技術的な側面を指摘して、あげつらうということはあまり意味がないと思われる。
 ただ、端的な印象から感じたことを述べる限りは今回の舞台におけるぺぺぺの会の俳優らの発声は強く聞こえる声を出そうとするあまり、言葉の細部やニュアンスが潰されてしまって、聞き取れないし、それを無理に聞き取ろうと努力することで見る側は疲弊してしまう。そもそもセリフ術がまったくこのSCOOLの空間に合致していないし、詩的な散文であるテキストの魅力を具現することにもなっていないのが現状だ。
 そういうことをまったく感じてないということであればそれまでのことだが、これも聞いてみたところ分かっているが技術的に対応できなかったということのようだった。そういうことであれば今後も集団としての地道な努力を継続していくことでそれを克服していくことが必要だろう。さすがにSCOTの最初期は知らないが地点もク・ナウカ(現SPACの前に宮城聰が率いていた劇団)も現在のようなスタイルが最初から確立されていたわけではない。特にク・ナウカなどは最初から突出していた美加理らを除けばかなりひどいと思ったことも再三あった。さらにいえば集団は継続が重要で、持ちこたえることが出来ず、志半ばにして消滅してしまった劇団も数多く見てはいるが、この劇団には今後どうなるのかを見届けたいと思わせるものがあったことも確かなのである。

作・演出
宮澤大和
出演
石塚晴日、佐藤鈴奈(以上、ぺぺぺの会
大木菜摘、小澤南穂子、金澤卓哉、小杉天俊、後藤佑里乃、竹内蓮(劇団スポーツ)
日時
2019年10/4(金)-7(月), 10/11(金)-13(月)

10/4(金)16:00(無料公開ゲネ) / 20:00
10/5(土)12:00 / 20:00
10/6(日)16:00 / 20:00
10/7(月)12:00 / 16:00
10/11(金)16:00 / 20:00
10/12(土)12:00 / 20:00
10/13(日)12:00 / 16:00
チケット
<前売>
一般3000円 学生2500円
高校生以下1000円
<当日>
一般3500円 学生3000円
高校生以下1500円


―わたしは不可抗力によってエリザベス・タワーから落ちたのです
2018年2月28日。ロンドンがシベリアからの大寒波におそわれた日
エリザベス・タワーの修復工事にたずさわっていた日本人が転落した
彼は奇跡的に一命をとりとめたうえにかすり傷ひとつなかったという
しかし彼には滑落で負ってしまった一生癒えることのない傷があった
療養中に起こる不可解な出来事。隣人のタバコの煙にのって現れる女
日ごと決まった時刻に叩かれる玄関。恋人は今日も約束に30分遅刻
誰もあらがうことのできない力にあらがうための考察をはじめようか
不可抗力が働いてからというもの、こわいくらい脳が冴えているんだ
【ご予約】
ご予約URL:https://ticket.corich.jp/apply/102703/
【スタッフ】
舞台美術:宮澤大和、コトデラシオン(十六夜基地)
演出助手:熊野美幸
制作:鈴木南音、後藤佑里乃
運営:木村吏那、新海有己
宣伝美術:羽田朱音
_
【協力】
劇団木霊、劇団個人主義十六夜基地、劇団ひととせ、劇団スポーツ
【主催・お問い合わせ】
ぺぺぺの会
メール pepepeclub@gmail.com