下北沢通信

中西理の下北沢通信

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円盤に乗る派かっこいいバージョン『おはようクラブ』@吉祥寺シアター

円盤に乗る派かっこいいバージョン『おはようクラブ』@吉祥寺シアター


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2020年1月11日(土)~1月13日(月・祝)

人間のかたちをして生きていくとき大事なのは、
いつでも円盤に乗れるようにしておくことだ。

AAF戯曲賞受賞・カゲヤマ気象台の率いるプロジェクト「円盤に乗る派」
演劇に留まらない活動を見せる彼らによる「かっこいいバージョン」、劇場公演です。
今回は気鋭の若手演出家、蜂巣ももを迎え、カゲヤマ気象台との共同演出で制作を行います。

ゆるやかに連なるイメージと身体による、唯一無二の世界観。ここから先、演劇は、言葉は、私たちはどこへ向かうのか。必見の最新作です!

 現時点における最善の消極的なユートピア、これならなんとか成立できるかもしれない良いコミュニティは、どんな形をしているだろうか。

 コミュニティを作るお膳立ては、この世のあらゆるところに存在している。参入するのはとても簡単だ。インフルエンサーを5人ばかりフォローすればもうじゅうぶんだろう。あとは蟻の巣のように広がっていく。ほんの少しの積極性さえ持っていれば、どこまでも奥に入っていくことができる。そうして奥に行くほど帰って来るのはむずかしくなり、身動きはできなくなる。

 誰もが客観性を保ったままそこにいることができる、と考えられるほど楽観的になることは難しい。実感を、感情を吐露するのは簡単だ。それが苛立ちや怒りならば、はるかにかなり簡単だ。悪い言葉は圧倒的な存在感で、竜巻のように立ち上る。その存在から目を背けるということはとても難しい。

 本当なら、楽しければ客観性などいらない。いつも楽しく、いい感じで踊っていたい。ゆらゆらと、何かに固執することなく、自らを客観視せず、あらゆるものと相対化せず、空気中の微生物のように存在していたい。なぜそれができないのだろう?

 きっと最低限必要なのは消極性だと思う。消極的であることによってユートピアが見いだせるような、そんなあり方ができたらよいのだと思う。その中でもさらに良いものが目指せたらいい。消極的に目指すというのは矛盾なのだけど。しかし矛盾は引き受けなくてはいけないだろう。そしてもしそういったユートピア的なコミュニティが存在できたとしても、それはすぐ崩壊してしまうだろう。

 崩壊してしまうのはさみしい、しかしその危うさがなければ、そもそもそのようなコミュニティは存在できない。信頼がおけない楽しいコミュニティ、それに「おはようクラブ」というふざけた名前をつけながら、最大限、できるだけ長い間、楽しめていたらよいと思うのだけど。

カゲヤマ気象台



【演出】カゲヤマ気象台*⇔蜂巣もも(グループ・野原/青年団演出部)
【脚本】カゲヤマ気象台*


【出演】日和下駄*
畠山峻(PEOPLE太)
上蓑佳代(モメラス)
横田僚平(オフィスマウンテン)

【舞台監督】河村竜也
【舞台美術】渡邊織音(グループ・野原)
【舞台美術アドバイザー】鈴木健介(青年団
【照明】伊藤泰行【音響】カゲヤマ気象台*
【記録】黒木洋平(亜人間都市)
【制作】冨田粥【制作補佐】林揚羽(しあわせ学級崩壊)
【デザイン】大田拓未

=円盤に乗る派プロジェクトチーム

主催:円盤に乗る派
提携:公益財団法人武蔵野文化事業団

 カゲヤマ気象台による演劇プロデュースユニットが「円盤に乗る派」である。現在の構成員はカゲヤマ気象台と俳優の日和下駄の二人。「おはようクラブ」は「外部から共同演出者を迎えてするもうひとつのレーベル」(カゲヤマ気象台)のような公演であり、今回は蜂巣ももを外部から共同演出に迎えた。
 共同演出とはいえ、二人の間には明確に役割分担があり、俳優の発話と演技と音楽についてはカゲヤマ気象台が担当。舞台中央に空いている巨大な穴(というか地下空間への通路)と舞台奥にある巨大なオブジェなどの空間の構成と舞台美術は美術家の渡邊織音(グループ・野原)と一緒に蜂巣ももが担当した。


蜂巣ももの演出ノート
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