下北沢通信

中西理の下北沢通信

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スー・ヒーリー 『ON VIEW:Panorama』(世界初演)オープニング・プログラム@横浜赤レンガ倉庫

スー・ヒーリー 『ON VIEW:Panorama』(世界初演)オープニング・プログラム@横浜赤レンガ倉庫

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作品が始まってしばらくしても入り口のところに長い列が出来ていて、入場するのにしばらく時間がかかったが、中に入ってみると舞台空間に通路が設けられ、大小さまざまなスクリーンが設置されていて、そこにはダンサーもいるがメインはそこここに置かれたスクリーンに映写されるダンサーの姿と実際のダンサーが組み合わせられた映像インスタレーションのように感じた。
 しばらく、そこを回遊した後で客席部分に移動して、そこからは映像と実物のダンサーを組み合わせたパフォーマンス作品が始まった。この種の映像と実物のパフォーマーを併置したパフォーマンスはダムタイプが欧州を席巻して以降、発条ト、ニブロール、最近でPerfumeとライゾマのパフォーマンスに至るまで日本の得意芸といってもいい領域だったのだが、映像に電子的な加工をほどこすというのではなく、ほぼアナログ的に使用していることで、ドキュメンタリー風な風味を持たせていることが面白い。
 クオリティーも高いが、ダンスの振付そのものにあまり新味を感じないのが物足りないところである。この作品からも欧米の作品の保守化傾向を感じたのであった。

振付・演出・映像:スー・ヒーリー
出演:浅井信好、湯浅永麻(日本)、ジョゼフ・リー、ムイ・チャック-イン(香港)、ナリーナ・ウェイト、ベンジャミン・ハンコック(オーストラリア)
委嘱製作:愛知県芸術劇場、Freespace West Kowloon Cultural District(香港)
共同製作:横浜赤レンガ倉庫1号館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
Performance Space in association with Sue Healey(オーストラリア)
協力:城崎国際アートセンター、名古屋学芸大学映像メディア学科
協賛:一般財団法人セガサミー文化芸術財団
助成:在日オーストラリア大使館、NSW GOVERNMENT、豪日交流基金、Australia Council for the Arts
振付・映像:スー・ヒーリー
撮影監督:ジャッド・オヴェルトン
作曲:ダレン・ヴェルハゲン、ジャスティン・アシュワース
ドラマトゥルグ:ショナ・アースキン
映像監督:伏木啓
プロデューサー:唐津絵理(愛知県芸術劇場シニアプロデューサー)
映像出演:白河直子、小㞍健太、湯浅永麻、浅井信好、ハラサオリ
主催・企画:ON VIEW: Japan 実行委員会
共催:愛知県芸術劇場横浜赤レンガ倉庫1号館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
企画協力:愛知県芸術劇場
協力:名古屋学芸大学映像メディア学科 協賛:2020 文化芸術イニシアティヴ

『ON VIEW』シリーズは、振付家・映像作家のスー・ヒーリーと日本、香港、オーストラリアのダンサーとクリエイティブ・スタッフたちによる国際共同制作プロジェクトであり、ライブ・パフォーマンスと映像インスタレーションによるジャンルや文化の垣根を超えたマルチ・メディア作品です。
ダンサー自身と映像の中のダンサーとが交錯するこの作品により、「見ること」と「見られること」のダイナミクスについて、また取り巻く文化によってカラダはどんな影響を受けるのかという問いに取り組んできました。
そして今回の『ON VIEW:Panorama』では、ダンサーのポートレートと個人のアイデンティティーとの関係性のあくなき追求から、ダンスと映像をシームレスにつなぎ合わせました。それによりパフォーマンスするカラダが消えない痕跡をどう残すのかを明らかにしていきます。(スー・ヒーリー)