下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ウンゲツィーファ「一角の角」@吉祥寺シアター(Youtubeアーカイブ)

ウンゲツィーファ「一角の角」@吉祥寺シアターYoutubeアーカイブ

吉祥寺シアターとの共催で行った無観客での演劇公演。7/15〜7/19毎晩20時から10〜15分程度の演劇のシーンをLIVE配信。リアルタイムでは結局一度も観ることはできなかったが、期限付きで配信映像のアーカイブが見られるということで、見てみることにした。
配信演劇としてはZOOM演劇的なものか、通常の演劇の無観客配信かどちらかに二分されるような傾向があるなかで、劇場からの配信ではあるが、劇場のロビーや通常は客席となっている空間に様々な舞台美術、小道具を持ち込んでの箱庭演劇のような趣向であった。
休業中で劇場としては開いていない吉祥寺シアターの空間を縦横無尽に活用し、映像作品ならではのカメラワークを活用したのが面白い。ただ、物語自体は登場するキャラのほとんどがこうもり、たぬき、猫、犬といった動物であり、表題の「一角の角」の一角(いっかく)とはイッカク科イッカク属に分類される鯨類であり、クジラなのかイルカなのかと思い調べたが、鯨類ではあるが普通のクジラとは異なる独立した種であるらしい。
 ここに出てくる動物たちはいかにも寓話的にも見えるが、メタファー的な寓意があるというわけでもないようだ。そのため、物語的には単純にストーリー的な意図を受け取りにくく、不思議なイメージの絵画を鑑賞した時のような観劇後の印象。10分強の連作として見ていればまだ見られたかもしれないが、1時間強の映像として見るには若干途中で集中力が切れかけるような瞬間も何度かあったといわざるをえない。コンセプトは面白かったが、作品として評価すると正直厳しい部分もあった。

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◯脚本・演出
本橋 龍

◯劇生(出演)
畦道きてれつ、石指拓朗、黒澤多生、近藤 強、豊島晴香、西留 翼、星 美里、松井 文 他


◯あらすじ

住宅街に住むヒトと住宅街に棲む動物たち。

ヒトは自分が生きていくこと、それによりテリトリーを広げていることに悩んだりする。動物たちはあっけらかんと、その隙間に棲みつく。

一匹のタヌキが、「遠くの遠くに海があって、そのまた果てしなく遠くの端っこにはイッカクっていう動物がいるんだって」と言った。ボクはそいつと会うことなんて、ないのだ。

一人のヒトが、「なんで僕らの御先祖さまは、種の繁栄を選んだのだろう」と言った。ボクは意味がわからなかったけど、彼の目の玉は潤っていて、キレイだなぁって思った。


◯スタッフ

舞台監督:黒澤多生
音:SKANK /スカンク
照明:小駒 豪
制作:阿部りん
映像:和久井幸一、他

協力:青年団、レトル、Nibroll
主催・企画制作:ウンゲツィーファ
共催:吉祥寺シアター(公益財団法人武蔵野文化事業団)

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[吉祥寺からっぽの劇場祭] ウンゲツィーファ『一角の角』アフタートーク