下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ももクロ夏のバカ騒ぎ2020 配信先からこんにちは ペイパービュー@AbemaTV(アーカイブ)VSたこやきレインボー生配信ライブSHOW 「真夏のホームパーティー・ザ ・ワールド」@GYAO(アーカイブ)

ももクロ夏のバカ騒ぎ2020 配信先からこんにちは ペイパービュー@AbemaTV(アーカイブ)VSたこやきレインボー生配信ライブSHOW 「真夏のホームパーティー・ザ ・ワールド」@GYAOアーカイブ


 メットライフドーム西武ドーム)で開催するはずであったライブをコロナ禍で中止にしたももいろクローバーZが急遽代替え開催を決めた無観客ライブ配信が「ももクロ夏のバカ騒ぎ2020 配信先からこんにちは 」である。
 実はその後に佐々木彩夏の総合演出によるたこやきレインボー生配信ライブSHOW「真夏のホームパーティー・ザ・ワールド」が配信され、配信時期自体は約1カ月のタイムラグがあるもののアーカイブの公開がほぼ同時期になっていたこともあり、同じ配信でも雰囲気が大きく違うのが演出の違いによるものなのか、それとも二つのグループの資質の違いによるものなのかを考えながら二つのアーカイブを交互に見るというようなことになっていた。
 「ももクロ夏のバカ騒ぎ2020 配信先からこんにちは」の最大の特徴はそれまでの配信ライブでは見ることができなかったようなダイナミズムといってもいいかもしれない。最初の「stay gold」から「背番号」「仮想ディストピア」「GODSPEED」「『Z』の誓い -ZZver.-」「リバイバル」と海を背景として周囲を芝で囲まれた野外での場面が続くのだが、ここではライブ会場の規模の大きさを強調するようにドローンを駆使しての空撮が効果的に挟み込まれて、ももクロの曲の歌い方も野外やスタジアムでの巨大ライブでの歌唱に準じたように声を最大に張り上げるなど、観客こそいないけれどライブのスケール感を感じさせるような演出がベースとなっている。
 ただ、通常のライブのようにそうしたひとつのフェーズで全編を押し切っていくのではないのが、ももクロの配信ライブの特徴だ。生観戦とは違って集中力の持続が難しいであろう配信ライブの特徴を鑑みて(着替えや場所の移動ぼための時間かせぎの側面もある)、随所にテレビバラエティー的な場面や野外ライブと毛色の異なるあらかじめ収録した映像も含まれるライブ映像も挟み込まれている。
 「武陵桃源なかよし物語」のライブ場面などがそれで、ここでは生ライブの中継というよりはMVのように歌と演技を一体化したような映像が挟み込まれた。ここが面白いのは控室のように見える部屋での冷蔵庫のセットに仕掛けられた定点カメラの映像と後半の元いた野外ライブでの場所がシームレスにつながっているが、配信映像として面白いのはどの部分が生でどの部分が収録映像に切り替えられたのかが、区別がつかないことだ。生配信で最初に見た時には部屋の部分はあらかじめ収録されていて、スイッチングしてつないだんだと思い込んでいたのだが、曲終わりに「REC」というクレジットの入った部屋の映像が流れるという構成になっているので、この曲の最初の部屋の部分は生でのパフォーマンスなのかもしれない。それにしてもこういう凝った仕掛けを定点カメラ的なもので演じるももクロに全てまかせるような演出が成立するということに大規模ライブ演出のみならずテレビ番組の「ももクロChan」での10年以上の付き合いがある佐々木敦規のチームとの阿吽の呼吸が成立するような深い信頼関係があればこそだろう。
 一方、たこやきレインボーの生配信ライブSHOW 「真夏のホームパーティー・ザ ・ワールド」は総合演出の佐々木彩夏、映像の河谷英夫、コント台本のオークラといずれも現場では初めての顔合わせだったのにもかかわらず、幼少期から関西のバラエティー番組で鍛え抜かれてきた対応力の高さを見せつけた。
 こちらのテーマはたこ虹ハウス、もっと詳しくいうのならコロナ自粛期間中にたこ虹が毎日夕食時に配信していた「たこ虹の家にいるTV」だったのではないか。配信の日時が土曜日7時半(正確にはなにわをもじった7時28分)でライブとしては少し短めの1時間半で終わるのは「たこ虹の家にいるTV」がこうしたタイムスケジュールで配信されていたから、それを踏襲したものでもあろう。
 それゆえ、こちらは野外のももクロとは対照的に「家にいるTV」でおなじみの彼女らが共同生活をしているたこ虹ハウスのダイニングキッチンからスタートする。
 そういう違いもあって、ももクロのダイナミズムに対して、たこ虹の室内なだけの緻密さという映像面での差異もあるが、これは実はそれぞれのグループのよさを引き出すことにもつながっていると思う。
 たこ虹のアイドルグループとしての長所はメンバーそれぞれに分かりやすいストロングポイントがあって、野外ライブでもそのよさは発揮されるのだが、どちらかというと圧倒的なパワーで押し切るようなももクロの歌唱に対して、細かな技術の引き出しをそれぞれがたくさん持っていて、TPOに応じてそれを出していくことに長けていることかもしれない。
こちらも技術的には素人の自分にはどうやって撮っているのかよく分からないところも結構ある。不思議なのは冒頭の浴衣姿で「サンデーディスカバリー」を歌うところで、画面の中にマイクが見えないから、マンション室内で大きな音も出せないはずなので、ここは収録だし、音は別撮りでリップシンクでやっているのかなとも思ったのだが、その後のコントの部分にシームレスに切れ目なくつながっていくので、指向性のある集音マイクか何かで拾っているのかなとも思ったが、はっきりとしないのだ。
 興味深いのは曲中もその後のコントでも画角がいっさい変化しないので「家にいるTV」の配信の時同様の定点カメラの映像に見えるが、照明はいつもの照明とは明らかに違うので、この辺りをどのようにしていたのかも不思議だ。面白いのは曲中のたこ虹メンバーの動きで、今回映像を担当した河谷氏の映像には個々のメンバーの顔を次々と接写で大写しにしていくことに特徴があるのだが、ここではメンバー側が順番にカメラに近づいていって、後半の撮影と似たような印象になる演出がすでに仕掛けられているのだが、いつもは食事をしているダイニングの狭い空間でメンバーが完璧に監督側の演出に対応していることにアーカイブを見直すとあらためて感心させられたのである*1
日経エンタテインメントの連載インタビュー記事で玉井詩織が配信ライブについて「配信はいろんな人が見る、だからこそ歌と踊りのクオリティーを上げないと」などと話しているのだが、そういう意味では野外パフォーマンスにおけるダイナミズムを体現したももクロの配信に対して、たこ虹の生配信は歌とダンスのスキルの高さを改めて見せつけるものとなっていた。この配信で見せたような細かい部分での技術についてはたこ虹は先輩グループと比較してもスターダストではトップの位置に達しつつあると感じたのである。

ももいろクローバーZももクロ夏のバカ騒ぎ2020 配信先からこんにちは」
2020年8月2日 セットリスト

SE. overture ~ももいろクローバーZ参上!!~
01. stay gold
02. 背番号
03. 仮想ディストピア
04. GODSPEED
05. 『Z』の誓い -ZZver.-
06. リバイバル
07. 武陵桃源なかよし物語
08. ロードショー
09. 希望の向こうへ
10. ココ☆ナツ
11. ワニとシャンプー
12. 行くぜっ!怪盗少女 -ZZ ver.-
13. ツヨクツヨク
14. Re:Story
15. 上球物語 -Carpe diem-
16. MORE WE DO!
17. ももいろ太鼓どどんが節 feat. ヒダノ修一
18. 走れ! -ZZ ver.-
19. キミノアト
20. レディ・メイ
<アンコール>
21. Nightmare Before Catharsis
22. Hanabi
23. コノウタ

たこやきレインボー生配信ライブSHOW 「真夏のホームパーティー・ザ ・ワールド」セットリスト
M-1 サンデーディスカバリー(short ver)(たこ虹ハウス)
M-2 サマーゴーランド(short ver)(アフリカ篇)
M-3 なにわのはにわ(アフリカ篇)
M-4 踊れ!青春カルナバル(アフリカ篇)
M-5 プレイバックス(ヨーロッパ篇)
M-6 Boules de poulpes S'il vous plait(ヨーロッパ篇)
M-7どっとjpジャパーン!(米国篇)
M-8 ウエッサイ・ストーリー(米国篇)
M-9 Whoop It Up!(米国篇)
M-10 恋のダンジョン(米国篇)
M-11 もっともっともっと話そうよ-Digital Native Generation-(たこ虹ハウス)
M-12 Pa Pa Pa Party(ハワイ篇)
M-13 ナナイロダンス(ハワイ篇)
M-14 RAINBOW~私は私やねんから~(ハワイ篇)
M-15 Super Spark(メイキング)
M-16 ほなまたね サマー(ギターver)(アンコール、ハワイ篇)

abema.tv

gyao.yahoo.co.jp

*1:この空間でこのぐらいのことが可能ならば、今回ほど大仕掛けをしなくても、たこ虹ハウスでの「お家ライブ」ができるのではないかと思ってしまった。